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国王の悪事

 国王アルベール・ザーイド・グリマルディはある書類を見てその目を疑った。

 その書類は経済部門の最高責任者から送られてきた報告書。

 そこにはこう書かれてあった。

  

 先日いくつかの魔道具に関する特許が申請された。

 1、『マジックログ改』→映像の作成を行うことができるもの。 

 2、『変幻自在ルーム』→建物内部の空間を拡張することができるもの。

 3、『マジックバッグ』→その魔道具に物を無制限に収納できる。なお、内部での時間は流れない。

 いずれも性能については確認済みであり、間違いないものと思われる。これらの他にもいくつかの魔道具が発明されている模様。

 作成者はアイク。身分は平民。孤児院で育ち、史上最年少で宮廷魔道具師となったものの、グリース・ヴァルツの判断により解雇。その正当性については現在調査中である。また、現在は魔道具店を個人で営んでおり、そこでは属性が二つ付与された『魔法剣』が売られていたという証言もある。その他にも…

 

 ここまで読んでアルベールは天を仰いだ。 

 内容があまりにふざけすぎている。

 映像の作成に空間の拡張、それに無限収納。いずれも過去に作成を試みたものは多くいたが叶わなかったという話はアルベールも知っていた。 

 それなのにたった一人の魔道具師がこれらを全て作りましたと言われて信じられるわけがない。

 しかも属性が二つ付与された『魔法剣』もこいつは作成可能だと言う。

 現在、我が国で属性を二つ以上付与できる者は恐らくこいつ以外にいないだろう。 

 それに空間の拡張を行う魔道具に関しては、以前魔道具部門のグリースに依頼をしたところ快諾されたので任せたが、結局完成は叶わなかった。

 我が国トップレベルの魔道具師が数十人で取りかかっても無理だったのだ。

 やはり納得できない。

 だが経済部門の最高責任者はとても優秀であり、こんなところで嘘をつくような者ではない。

 性能を確認したとあるので勘違いということもないだろう。

 今回報告書に詳しく記載されていたもの以外にもいくつか発明されている魔道具もあるという。

 その発明品が他のものと同様に素晴らしい性能を持つものであるならばこいつが優秀であることに疑いようはないだろう。

 もしそうならぜひ直属の部下にしたい。

 それが無理ならせめて魔道具部門に戻ってきてもらいたい。

 過去にあのバカ──── グリースが解雇したらしいが恐らく不当なものだったのだろう。

 アルベールは思う。

 もし国であの魔道具師が作った魔道具を生産できるようになったらどれほどの効果が生まれるだろうか。

 我が国は当然潤い、諸外国に対しても魔道具の売買をちらつかせて他の交渉を有利に進めることもできる。

 今確定している三つの魔道具の他に『魔法剣』の大量生産も可能だとしたらそれはもう武力で全て解決できるのではないか。

 全世界を平定し、トップに立つ自分を想像し、アルベールは自然と広角をあげる。

 そうなるためにはなんとしてでもあの魔道具師──── アイクを手に入れなければならない。

 まあだがなんとかなるだろうとアルベールは思う。

 なんと言ったってアルベールは国王なのだ。金でもちらつかせればすぐに従うだろう。それでも無理なら武力で脅しをかければいい。それを今までにアルベールは幾度となく行ってきた。

 行動に移すのは早い方がいいだろう。

 早速アルベールはある部下を呼びつけた。

 「魔道具師のアイクをここに呼べ。こいつを私の部下に勧誘する必要があるのでな」

 その部下は怪訝そうな顔をしていたが、アイクの住所等の個人情報が書かれた書類を渡すといつものように納得した顔で答えた。

 「承知しました。ところで国王様のお誘いを断った場合の対象者への脅迫は今回も行いますか? 」

 「おいおい、脅迫とは人聞きの悪い。私はただ普通に頼んでいるだけだぞ? 」

 「おっとこれはこれは。確かにその通りでございますね。申し訳ございません。では私はこれで失礼します」

 部下からの承諾の返事を聞き、アルベールは満足げな気持ちだった。 

 その部下には何度かこういったことを頼んだことがあり、手慣れているため、仮にアイクが勧誘を断ったとしてもすぐに部下になってくれるだろう。

 何度かといってももう数えきれないほどだ。間違いなくあいつはうまくやってくれるだろう。

 もちろん、最初から快諾してくれた方がこちらとしても楽なのだが。

 その後アルベールは世界の頂点に立った自分を再び想像し、傍からみれば気色の悪いと思われそうな笑みを浮かべた。

 

 

 

 

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