第四章 「10の約束と1つの誓い」 4
「それで、息子さんは今、どこに?」
「おそらく所長の所かと」
犬山博士が事もなげに答える。
「所長の所?」
「はい。この島に連れて来られて、僕たちは所長の元に連れていかれました。それで、ビルの最上階にある検査室で、まずはデータ収集を行おうとしました。しかし、僕のデータはすでに元いた研究所の方ですでに保存されていたので、息子のケンジとは引き離されそうになった所を20号さんが僕を助手として使いたいと保護してくれたのです」
それで、犬山博士はここにいるのか。
「ケンジは今もデータ収集をされているはずです」
「今も……?」
腕時計を確認すると、そろそろ日付が変わろうとしている時間だった。
「と言っても、大型機械を使っての基礎データ収集は初日に終えているはずなので、今は腕時計型の計測器での平常時の身体データを収集している頃でしょう。制限は付きですが、ケンジ君は自由に行動出来ていると思います。今頃はきっと夢の中にいるはずですよ」
首をかしげる俺に20号はそう説明してくれた。
「場所が分かっているなら、早速助けに行きましょう。今なら見張りも少ないんじゃないですか?」
そう提案する俺に、20号はわずかにかぶりを振った。
「ええ。しかし、みなさんには少し休息が必要だと思いますよ」
20号の言う通り、みんなには疲労の色が見える。
「ここに来るまでにだいぶ体力を消耗しているでしょう。少しでも体を休めた方がいい。この奪還作戦の成否はあなたたちの力にかかっているのですから」
「何か悪い未来がみえたのですか?」
20号の意味深な言葉に俺はつい反応する。
「いえ、はっきりとは……。それに、先ほども言ったように、私が感じられるのはあくまで予感程度のものなので、結果がどう転ぶかまでははっきりとはしていません。ですので、目的達成のため、準備は万全にしておいた方がいいでしょう」
理解出来る話しだが、当の両親はどう思うだろうかと心配していると、
「ワシは構わんよ」
イネコに同調するように犬山博士もうなずく。
「ここまで色々と無理をしてきたせいで、少し休みたいと思っていた所じゃ。それにそんなに急ぐ必要もなかろう。20号さんが言った通り、あの子は無事じゃ」
「そんなことが分かるんですか?」
「もちろんじゃ。ここまで来れば、その存在を確かに感じられる。そんな特別な繋がりがある。それが、親子じゃ」
「おや……こ……」
声にならない呟き声が、口から吐き出される。両親を知らない俺には到底分からない感覚だ。
「どうだ? 武蔵もむな志のこと、感じるか? 目を閉じてみろよ」
思考を停止しかけた俺を、ナナコが目隠しをする。
暗闇の中、俺は深呼吸して平静を取り戻す。
「オヤジは感じるまでもなく無事だよ」
ゆっくりと目を開けると、
「そうか……。そうだな」
ナナコが優しく微笑んでいた。
こいつなりに、しんみりしかけた俺を気遣ってくれたのかな?
「そういえば、何だかお腹が空きましたね。バナナとかありますか?」
そんなナナコへのお返しにと、俺はナナコの好物を探す。
20号はニヤリと笑った後、「ありますよ。遺伝子組み換えではない。無農薬天然ものの、とっておきのやつがね」と続けた。




