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第17話

「トラちゃーん!」


「わっぷっ!」


茶の間に入るなり、ピンクの髪をなびかせた花魁姿の多門がトラストラムに飛びついた。

「トラたん!」「トラちゃん!」と他の面々も勢揃いで歓迎ムード満点だ。


「よかった、問題なかったみたいね、多門さんも」


「聞いてよ、トラちゃんー。アバターには異常なかったけど、鼈甲櫛のアイテム壊れちゃったー!」


「鼈甲……ああ、頭に挿してたやつね。即死を防ぐアイテムでしょ?」


「そうそう! あのバグ撒いていった奴、知らないうちに即死属性の攻撃仕掛けてきやがったんだよ、まったくもー!」


トラストラムに抱きつき、頬をすりすりとこすりつける多門に、他のメンバーも苦笑気味だ。


「多門は検査終わってからずーっとその愚痴ばっかりだよ」


「トラたん、即死防ぐ指輪、確か持ってたよな。あれを多門にくれてやれよ。俺らじゃ手に負えねえ」


「まぁガチャの景品だけど、トラちゃんがくれるんなら多門も納得するだろうし」


「トラちゃんがくれるなら、もらっちゃうー!」


東雲とみみみ★みーみみがにこやかに言うのを聞き、トラストラムが思い当たる指輪を探そうとしたところで、


「トラストラムちゃん、既成事実ができちゃうッスよー」


「へ?」


「トラちゃん、多門に指輪なんてやったら!」


茶豆の小声に、トラストラムは多門から引き離され、背後からマノタカにがっしり抱きしめられた。


「俺とフォーリンラブしたこと、忘れたのかよー!?  子供までできたのにー!」


「で、できてませんから! 中には誰もいませんよー!」


局長(ギルド長)、それってみんなで父親に名乗り出ただけでしょ! それにトラちゃんのお腹の子は私との子なんだから!」


「張り合うなよ、多門さん! そして中には誰もいませんってばー!」


二人に挟まれて必死に抗議するも、身長180〜190センチ越えの鬼人族には敵わず。

周囲からすれば恒例のほのぼの風景だが、トラストラム本人は恥ずかしさに必死だった。


「……人が苦行を強いられているときに、何をしているんだ、妹よ」


「姉貴お疲れー! そして俺は弟だからね!」


「トラっち、それは女子より女子力高い君じゃ説得力ないから」


這うようにして茶の間に現れた橘花と、にこやかに笑うしらす御飯。

折檻が終わったらしいが、その件には誰も触れようとしない。賢明な判断だ。


丸く収まりかけたその時。


「ちわーっ、久しぶり。ワイがいない間に騒ぎがあったって聞いたでー」


「今頃出てきたな、(ハク)


事態が落ち着いた頃に現れた真っ白な鬼人族。通称・白。

彼は七番隊担当で、アバターのモチーフは葛飾北斎の白拍子・静御前だという。

ただし、全身白一色で染め上げられた姿と、黒い瞳孔に金色の虹彩、白目部分が黒という見た目が少し怖い。


「しゃーないやん、リアルの方が忙しいんやもん」


「そういや、六番隊の茶々も最近来てないしな」


「茶々のとこの会社、ブラックだからなー」


マノタカに向けてアハハと笑う白だが、彼の会社もブラックまではいかないもののグレーな勤務環境らしい。どっこいどっこいだ。


「ん? なんや、元気になってるやん橘花。副長(サブ)にしばかれたんか? 新しい扉でも開くことされたんか?」


相手の顔色がわかるわけでもないのに、白は何故か聡い。

だが、触れてはいけない話題に触れた瞬間だった。


「どおおおしてお前はそういう触れてほしくないことをおおおおお!」


「なんや、もう副官(サブ)の手でニューワールドに突入してたんか。橘花も物好きやな」


「誰が好き好んであんな目に遭うかぁあああっ!」


「ええツッコミや。ほんまは関西人ちゃうか橘花」


「こちとら生粋の東北人だこらぁあああっ!」


喧嘩しているように見えて、聞くと息の合った漫才コンビ。

昔の地域対立はないが、温度差は変わらないらしい。


「ワイ、トラストラムに義兄(おにい)ちゃんって呼ばれたいんよ。橘花、真剣に考えてくれへん?」


「おいトラ、今呼んでやれよ。それでコイツが満足するなら」


「ヤだよ。俺を巻き込まないでください、白さん」


「白は変わってるなー。トラちゃんに旦那さんとか呼ばれたいと思わないのか?」


「そりゃ中身男ってわかってるし、マノタカは中身女だからわからんかもしれんけどな」


「あー俺も【ミブロ】で唯一白さんだけは安心してられる(身の危険を感じない方で)」


「トラストラムちゃんが、白に落ちた!?」


「うわ白テメー、それ狙って橘花を構ってるんだろ。けしからん、もっとやれ!」


「そうだ、けしからん、もっとやれ!」


「ちょっと東雲、みみみ、どっちだよ!?」


「「もち、推してる! 今年の夏の陣で白×橘花出すから買ってね!」」


「よし、買ったる!」


「なんでだぁー!」


「よかったな、姉貴。それと白さん」


「ああ、安心してトラちゃん。ちゃんと多門()×トラストラムも出すから」


「ええっ!?」


「待て、その話はマノタカ()×トラストラムも入れる予定だろ!」


「許可してませんー! 俺のキャラをネタに何描いてんだよ!」


なんだかんだ集まって、一部ヒートアップする話題だった。

「売り子でしらす御飯さんも来てくれるから、トラストラムちゃんも来てくれると嬉しいッス」と茶豆が後ろでつぶやいているが、トラストラムには届いていなかった。

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