003「太陽をなくした月」
「太陽をなくした月」
父子家庭で育った俺の・・・
初めての安息の地、最初の恋人の存在が失われてから
どれくらい経っただろうか?
最初の恋人の代用品は、今もまだ・・・見付かりやしない
しかも・・・自ら、代用品に立候補してきた女達は
本当にしつこいだけで、悉く・・・本当に、使えなかった。
自分から言い寄って来て、最初・・・
俺の言葉を勝手に自分の良い様に解釈して、俺の傍に勝手に居座り
自分を俺に捧げ恋人気取りで、俺の世話を勝手に焼く
俺が欲しい物をちょっと口にしただけで
頼んでもいないのに、自分から貢いでくる女もいた
暫くして・・・
自分に対する思いやりを、俺が持っていない事に気付き、
俺が、自分の思い通りにならないと知ると・・・
女は一人で勝手に怒りだし、駄々を捏ね始める。
さて、ここで問題です・・・・
最初に俺が「ごめん」と、付き合いを断った
俺からの告白の返答は、何処へ行ってしまったのでしょうか?
女の・・・
『恋人がいるの?それとも私の事、嫌いなの?』
に、対する返答に・・・
『別にそう言う訳じゃないけど』と答えたら
何故に、そいつと「恋人として付き合う事」を
俺が「了承した事」になってしまうのか?
今も昔も、俺には理解できない・・・
正直言って、そんな女は自分の恋人だとは思えないし
「そんな非認定彼女に、彼女面されたくない」と、思うのは
間違った考え方なのだろうか?
それ以前に「しつこい女」しか、俺に言い寄って来ない現状
俺が好きになる女性に限って
何故か、俺の告白に「NO」を突き付ける現実
一番最初の恋人だって・・・
高校に入学してから、夏休み潰してまで追掛けて
俺自信が「しつこい」と言われてしまう程にも追掛けて
やっと、振り向いて貰った女性だ
俺は、もしかしたら・・・
好みの女性に、嫌われる傾向にあるのだろうか?
産まれもって「女難の相」でも、所持しているのだろうか?
最初の恋人を亡くしてから俺は、その事について時々考える。
そう、いつも・・・考えは、したのだが・・・・
考えていると、全てが面倒になってしまう
面倒になってしまうので・・・
適当に女で遊んでは、最初の問題を女に投げつけ
自分の意思を伝えて、反応を見てみていた
最終、俺の手元に残ったのは・・・
最初の恋人の「小さな願いが書き残された日記」だっけだった。
俺は何時も、遊び疲れて家に帰ると恋人が残した日記を開く
恋人の事を優先しなかった・・・
優先できなかった幼い自分に会いに行く
友達の事を優先するつもりで
自分のやりたい事だけを優先していた、俺の事を心配する
いつも、心配してくれていた恋人に会いに行く
恋人の願いは、自分の事を優先してくれなくても・・・
少しでも、一緒に連れて行って貰う事
何回かに一度は、俺の遊びに一緒に参加させて貰う事
女達の様に、俺を無理矢理に縛り付けようとしない願い
鍵付きの日記帳に秘めた内緒の願いなのに
誰にも見せないつもりで、本人が書いていた物の筈なのに
俺の最初の恋人は、見えない所までもが健気でいじらしい
とても、愛おしい・・・恋しい本物の恋人
いつまでたっても、何をしていても・・・
そんな恋人を失った喪失感は、消える事が無い
気付けば・・・
葬式の時、恋人の父親に叩きつけられた恋人の日記を
俺は紙が傷んでボロボロになる程、何度も読み返していた。
恋人を亡くしてから・・・
俺にとって、何もかもが楽しくなくなった
何一つとして、面白いと思えなくなった
楽しいと思っていた筈の事が・・・ツマラナイ
一緒に居て、楽しかった筈の相手と居て・・・
一緒に居るだけで、「疲れる」と感じる
特に、自分に擦寄って来る女に嫌気がさした。
たわいの無い会話に見え隠れする
女達の姑息な一時凌ぎ相槌や、同意に吐き気がした
俺の最初の恋人は・・・
そんな話で、楽しそうな笑顔なんて見せなかったから
群れになって、他者を嘲笑う
女同士で、自分より劣る部分を見付けては
本人に内緒で、誇張して話す女達が気持ち悪かった
俺の最初の恋人は・・・
そんな事に、参加なんてしやしなかったから
苦しくて悲しくて・・・変わりになる者を求めても
俺に寄って来る女は、ろくでもない生き物で
最初の恋人の変わりができる相手は、存在しなかった。
まともな女性の中にも、最初の恋人の様に・・・
俺のやりたい事を優先してくれる女性は、いなかった
俺がやりたい事を終えるまで、待っていてくれる女性もいなかった
俺がしたい事をして、泣かせる様な事をしてしまっても
俺の目的の為に、蔑ろにしても
俺の事を理解してくれた、最初の恋人の様に・・・
謝れば何度でも俺を許し、甘えさせてくれる女性は存在しなかった
俺の事を愛して、支え続けてくれる女性も存在しやしなかった。
いつの間にか、俺から去って行った友人達の言葉を思い出す
『お前は、理想を求め過ぎだよ』
社会人になってからできた、同僚の言葉を思い出す
『そんな女が存在する筈が無い』
『求めた理想を完全に実現した存在を・・・俺は知っている
ちゃんと、この世に存在していたんだ』
俺は、恋人が書き残した日記を抱締め・・・
今日も人知れず自室で一人、いつの間にか涙を零していた
最初の恋人の名を呼んで
俺は、繰返し『会いたい』と、呟く・・・
そうしていれば、愛しい恋人に再び会えるかの様に
何度も呟いて、眠りについた。
「ろくでなしだなぁ・・・」って、思える人の周りの人間も
全て、大概にロクデナシだったりしませんか?
あれはきっと・・・
集まって互いに、自らのロクデナシ加減を悪化させてるんだと
私は思うんです。




