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010「朱に交わり紅く染める」

しゅまじわりあかめる」


人はあやまちを繰り返す・・・

安心しきった生活にれてしまうと、おのずと・・・

過去の後悔こうかいを忘れてしまうのだろうか?


うしなった理由が事故で、恋人に対する不誠実ふせいじつが理由ではないから

同じ事を繰り返せるのだろうか?


必死にアプローチして、体をこわほどに求めた恋人

会えない事で、食事も食べれなくなってしまう程に恋した恋人

人の手まで借りて、手に入れた恋人


彼女を恋人にした後・・・

奴は次第に、友達を優先する男に戻って行った。


がったきずなほどけ始める


奴にとっての、帰る場所があれば・・・

奴は、安心して遊び回れるのだろう

放置したままでも、帰る場所は・・・

何時いつまでも、そこに存在し続けてくれると勘違かんちがいしているのだろう


油断ゆだんしている奴のかたわらで・・・

俺は奴の恋人のそばで、奴をなが微笑ほほえんでいた。


俺は最初、彼女の事を・・・

奴が言う程、奴の昔の恋人に「似てない」と思っていたのだ

だから俺は、俺のプライベートを浸食しんしょくする奴を追い払うため

彼女を奴の生贄いけにえにした


俺が思った通り、毎日の様に俺の元へ来ていた奴が・・・

それほど頻繁ひんぱんに、俺の所に来なくなった。


それからしばらって、気付く


奴の今の恋人が・・・

奴の昔の恋人、俺も恋していた奴の恋人に

次第に、少しづつ似て行くのを


奴を笑顔で見送り・・・

うれいをびた目で、奴の背中を見詰める彼女の姿


俺はそこでやっと、理解する事ができた・・・

俺が知っている「俺が好きだった人の姿」は、ソレなのだ・・・

俺は、彼女が奴にないがしろにされている姿からしか知らない


俺は、今の奴の恋人の姿を見て・・・

今の彼女の状態を見て「その表情が、好きだな」と、思った。


『恋人でなく、自分の事を都合つごうのいい女・・・

私は、私の事を「彼の愛人」だと思えば、楽になれるのかな?』

彼女から出る、悲しい言葉と愁いを秘めた表情・・・


高校の時、何度か奴の恋人が見せた

俺が恋した人が、俺に見せたのと同じ言葉と同じ表情

『馬鹿だな、すでに「都合のいい女」だろ?』

彼女に聞こえない様に、俺はそっとつぶや


『楽になりたいだけなら、終りにすればいい

でもお前は、奴の恋人でいたいんだろ?辛くても悲しくても』

彼女が欲しがる言葉「自分の位置を示す言葉」と

傍に「誰か」がいて「一人ではない」と、言う「安心感」を

俺は、彼女が欲しがるままに彼女に与えていた。


弱い彼女は、奴の浮気を悲しみ・・・

奴のうそを知っていながら、知らない振りをする

誰よりも気丈きじょうで、何処どこまでもおろかな女


奴の「嘘と不誠実さ」をにくみ、奴をそれでも愛する

一途いちず純粋じゅんすいな「愛憎あいぞう」を抱えた女


今年も、俺が恋した人の死んだ日が近付いてきた・・・

彼女との「あの約束」から、そろそろ10年が経過けいかする

俺はそろそろ、約束に対し時効と考えても良いころであろうと思った。


そう、自分が三十路みそじ近くなると、社員の女性陣は入れ替わり

彼女も「御局様おつぼねさま」と呼ばれる様な古株ふるかぶになっていた

奴は「子供染みた大人の遊び」で、若い女子社員にかま

彼女を更に、放置する様になる


普段の生活で、奴との事に置いて虚勢きょせいを張り続ける彼女は疲れ

年齢的なあせりで、彼女に余裕よゆうが失われていく

酒の席で、彼女が羽目はめを外す事も多くなっていく


次第に、彼女が黒い影に飲み込まれていく

黒い影をまとう彼女は・・・

俺のひじ辺りに、自分の腕を恋人の様にしてからませるようになった

黒い影は彼女の顔と同じ顔をして、俺の耳元でさえずる様に話す。


彼女の一時的な、自暴自棄じぼうじきな言葉

彼女の救いを求める、一時的な言葉

繰返し裏切られ、自分も裏切りたいと思う刹那的願望せつなてきがんぼう


影ののぞみは、奴に精神的ダメージを与える事

恋人だと思っていた相手に、裏切られる思いを思い知らせる事

それは、俺がかなえてやらない事も無い


傷付きながらも純粋に愛し続ける事ができなくなったのなら

身を落とし、心を罪悪感に染めて行くのも一興いっきょうだろう。


ただし・・・

彼女が俺を利用するなら、俺も彼女を利用しよう

一時的な快楽かいらくを味わう道具として


大人になって俗世ぞくせに染り

今・・・更に深く「俗世」に染まって行く自分が、彼女にれる

子供染みた一方的な恋から・・・

彼女を身も心もかる泥沼の恋へと、さそい落とす


「自分の不貞ふてい」を「不貞と認めない」奴は・・・

「彼女の不貞」をどう思うだろうか?

彼女の願望を叶えた俺を、奴はどう思うだろうか?


俺は、奴が「子供の様にいかくるう姿」を想像そうぞうして

少し笑ってしまった。


『どうしたの?』

夢現ゆめうつつで、彼女が俺に問い掛ける

『数こなしてても、実力がともなわない奴の事を・・・

君を通して、考えていただけだよ』


彼女は、意味が理解できなかったらしく一瞬いっしゅん戸惑とまどい・・・

気付いて、ほほを赤く染める


俺は・・・

まだ、純粋さを残す彼女と

これからどう付き合っていくか、少しだけ考えた。


彼女は・・・

直ぐに恋人を乗りえられるタイプの、切り替えが早い

軽さが売りの女ではないだろう


多分、彼女は奴をずるずる引きって・・・

彼女が二股ふたまた掛けた状態を維持いじし、彼女一人の中で思い悩み

奴に求められたら、俺を切って奴の所に帰って行くだろう


『もうしばらく、この茶番劇ちゃばんげきに付き合ってから

適当てきとうに「新しい女」でも探すか・・・』

俺の中に、奴と同じ負のループを繰返す感情が芽生めばえた。


奴は、彼女の自分への気持ちを過信かしんして

大っぴらに付き合っていても

本当に、俺と彼女の関係に気付きもしなかった


親密しんみつになっていく、俺と彼女


デートの帰り、一緒に居る時間を長くしたくて

俺が彼女の自転車を押し、彼女の家まで2人で歩く事にした

はずむ会話、楽しい甘い時間・・・

こわしたのは、コンビニから出てきた奴だった


やっと、彼女の不貞に気付いた奴は

自分の不貞をたなに上げ、俺が想像した通りに怒り狂う

彼女は、一方的にめる奴の言葉にえ切れなくなり

その場に居たたまれず、走り出した。


信号は青、走り出した先には・・・

スピードを出し直進する大型のトラック、繋がる車の列


次の瞬間、彼女は視界から消え・・・

鈍い音とひびくブレーキ音、そして後続車こうぞくしゃ追突ついとつする音

奴の悲鳴ひめい木霊こだました


呆然ぼうぜんとする俺は、交差点の角にあるコンビニの駐車場で

もう、この世に存在するはずの無い

高校の時に俺が恋した少女が、楽しそうに笑っているのを見た


『思い知ればいい・・・』

こわれた様に泣きさけぶ奴に向かって、黒い影を身に纏う彼女は

そう優しく微笑みながらささやいた。

「朱に交われば、赤くなる」って言葉がある様に

大人の遊び(18禁)に興じる輩と仲良くなれば・・・

その遊びができる相手の色に染まっちゃいますよね?


でも、そっちに転がったら・・・怖い事になるかもしれませんよ?

生き霊とか、魑魅魍魎の類に呪われちゃうかもw

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