80 異世界へ
「ここ何処~?」
向こうには馬に乗ったカウボーイ(仮)こっちには馬車に乗った金持ち(仮)が居る。ずっと向こうの方には教会(仮)もあった。
「どれにしようかな、天の神様のー……で決めた、異世界。旅行したいとか言ってたろ?」
なんつーアバウトな決め方。
「じゃあ次、私やりた~い!」
『どちらにしようかな』ってバリエーション色々あるよな。アブラムシとか、柿の種とか、鉄砲撃って――とか。
まぁそれはともかく。
「ここ、何処だよ?」
「聞いてもわかんねぇんだから聞くな」
「名前くらいいいじゃん」
シルが助け船を出してくれた。
「マググラ共和国、ウェスラ州」
……わかんねぇ。
タラッド‐タドだ。
昨日帰って来たジンに連れられて、異世界へ。
今いっしょに居るのはジンとシル、ヒル。ミリアンとラディルは別コースだとか。
ジン曰く、『沢山いるのは鬱陶しい』と。……鬱陶しいっつったよ、コイツ。
「どんな所~?」
「治安はあんまりよくない所。という訳で」
ヒアに聞かれたジンが渡してきたのは、銃とガンベルト。
「……えぇと? 何コレ」
「はじきとか」
「なんで隠語!?」「チャカとか」
『はじき』を知ってるシルもどうかと思うけど。
「万が一のため。遊び半分で打つなよ?」
『撃たねぇよ』
「貰い物だから、少し、けっこう、危ない」
言い直すなよ。
『んじゃ持たせんな』
「こんなのは、持っとくだけで威嚇になるんだよ」
「私のは~?」
「生憎三丁しか無い」
そもそも、ヒアに持たせたら危ねぇだろ。直感的にそんな気がする。
「もし撃つことがあったとしても、片手では撃つな。それやって、肩脱臼した奴いるからな」
マジか……。片手で撃ってる奴の方がよく見るけどな。……漫画ばっかりだけど。
「取り敢えず、まずは泊めてくれそうなトコを当たってみるか」
ん。ちょっと陽も傾いて来てるしな。
「出来るだけ安くて、質も悪くない所」
……贅沢だな。
「どれくらいあるの? そんなとこ」
「二つ三つ。一番近くて、99%泊めてくれそうなのがあそこ」
後の1%は。突っ込むべきとこじゃねぇか。
ジンが指したのは、離れたところにある教会(仮)
「立場上、止めない方が白い目で見られるだろうしな」
「ジンらしー」
シルの棒読み。全然褒めてねぇな。むしろけなしてるな。
「ちゃんとそれ、付けとけよ」
それ? あぁ、ガンベルト……。ちょっと待て。銃は使い方すら聞いてねぇぞ。弾もねぇし。
「ジン、使い方は?」
「構える」
「……はぁ」
「相手と睨み合ってる時に、地面を蹴って懐に飛び込む」
「は?」
「殴り倒せ」
「拳銃意味ねぇ!」
「馬鹿。向こうの動きを少しでも止めただろうが」
……本来の使い方とは大きく外れてるけどな。
そう言っているうちに、教会(仮)の前に。
玄関前にぶら下がってる紐を、ジンが引いた。面白がってヒアも引いた。
「ベルは一度で結構です」
「すみません。妹がふざけたもので」
中からの女の人の声に、ジンがヒアを軽く一睨み。これ位じゃ怯まない。
「どちら様ですか?」
「ジャイズン・ラオマネット。貴女はグレースですか?」
ラオマネットって誰だ? ……あぁ、そう名乗れってか。視線で行ってきた。
「…………ジャイズン!?」
おぉ、びっくりした。
急に大きな音立てて教会(仮)の扉が開くんだから……。出てきたグレースとかいう女の人はシスターさんって奴かな? それがこんなことしていいのか。
「まぁ……。この角、本当にジャイズンなのね」
「角だけで判断するのはどうかと」
「角生えた人間なんて、貴方と貴方のご家族くらいでしょう」
人間じゃねぇけどな。
「こんな小さかった子が……」
グレースさんが手で示した高さは、ジンの膝あたり。流石にもうちょっとあるんじゃね?
「あの、この子達は、もしかして」
「妹のシヴィルにヒルデガート。それと弟のタラッド」
「まぁ! 素敵。立ち話もなんだから、どうぞ中へ」
グレースさんが奥に引っ込んで、ジンは遠慮なくその中に入る。当然俺達も続く。
「ご両親は?」
「二人で別のところに」
「そう」
「ところで、グレース。今日、ここに泊めてもらう事は無理ですか?」
「大丈夫よ。どうぞ、何日でも止まってちょうだい」
……そんな簡単でいいのか?




