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「岳くん、あの……。これ、教えてくれない?」
「あ?」
「あ、いや、いいや。あはは……」
…………自分から話しかけといて、それはねぇだろ。断られるとかなんとか思ってんのか?
「あーあ。なんで岳くんってああなんだろ」
「ねぇー。冷たいよねー」
おいこら、本人とまともに話してねぇにも関わらず、勝手に冷たいヤツにすんじゃねぇ。
「明るかったら絶対モテてるよねー」
明るくねぇってか。
タドだ。
それなりに離れたところとは言え、本人にしっかりと聞こえてくるくらいの声量で話すなそこの女子二人。
「俊、俺って冷たい?」
「…………冷たいな」
誰が体温の事を聞いた。なんで手ぇ触って冷たいか冷たくねぇか確かめるんだよ! そうじゃねぇ!
「もう制服行こう! 期間だってのに、なんで手が冷たくなるんだよ?」
「制服行こう! 期間ってなんだよ。制服どこに行くんだよ。もしくは制服のどこに行くんだよ」
「は? 違うのか?」
「なんで分かんねぇんだ!?」
こないだ配られたプリントにしっかり書いてあっただろ、制服移行期間うんたらかんたらって。
「よし、これで俺は一つ賢くなったな」
「あーそうだな。何だそのポジティブシンキング」
「ネガティブシンキングじゃ、何にも伸びないぜ!」
「さよけ」
「冷てーなぁ」
あ、やっぱり俺冷てぇのか。ふて寝しよう。ふて腐れてねぇけどふて寝しよう。あれ、意味わかんねぇ。
「もうちょっとさー、明るくってさ、目立つような」
「何て少女漫画のヒーロー?」
「うーん。じゃあ、もっと優しくてー、言い方とか柔らかくてー」
「何て少女漫画のヒーロー?」
「もう、何ならいいの!?」
お前等は俺にどうしろって言うんだ? 言われてもどうもしねぇけど。
「今のままでもさー、ちらっと優しいトコ見せてくれるとキュンと来るじゃん」
「あぁー! 消しゴム拾ってくれたり!」
理絵や捺希の落とした消しゴムならよく拾うけど。アイツ等しょっちゅう落とすから。たまに筆箱も落ちてくる。
「ちょっぴり笑顔とか見せてくれたらそれだけでもさー」
「でも氷の微笑みじゃなーい?」
「何て漫画の悪役?」
あれ、そんだけで悪役になんの? 兄ちゃん完全なる悪役じゃん。……あれ、そういや俺も『氷の微笑み止めろ!』って言われたような記憶が。忘れとけ忘れとけ。
「ね、岳……ちょっと教えてくれないかな」
「あぁ? ん、数学な。何処?」
分数だらけのこれか。二乗だとか色々付いてる問題。
「……あたしも頼みに行ったのにー」
お前俺が反応しただけで逃げ去っただろうが。……いや、逃げ去ったって表現は俺があんまり気分良くねぇな。やっぱいいって言っただろうが。これでいいか。
「リベンジしたら?」
「えぇー。いいよ。馬鹿にされんの嫌だしー」
俺、ホントどういうイメージなんだ?




