25 家に住む子供達
「岳、もうオカルト部と会った?」
「うん。姉ちゃんが言ってた意味がすっげぇよく分かった」
「でしょー?」
昨日のアレ、しっつこかった……。猛ダッシュで逃げたけど。
岳だ。
朝飯食いながら、姉ちゃんと話してた。でも、もう食い終わったから顔を洗いに洗面所へ。
『お早よー』
「お早よ」
あれ? 俺誰と話してるんだ? 鏡の中の俺とか? ……いやいやいやいや。それはねぇな、うん。
『…………久しぶりー!』
うん!?
鏡の中から声が……? なんでだ? おかしいだろ! 俺鏡とは毎日会ってんぞ!? ……そこじゃねぇってか? 現実逃避だ。現実逃避になってんのかコレ。
『久しぶりに返事してくれたぁー。 実に三年ぶりー!』
いや、俺は一回たりとも返事したことねぇ。筈。
『出してー、出してよー。純くん、純さん、純様ー?』
……鏡の中の俺が、んな事言いながらドンドンって鏡叩いて来るけど、どうなってんだ。……鏡の裏か? 鏡の裏ってどーなってんだ。外してやろうか。
現実逃避終了。
「えぇー。どちら様だ。兄ちゃんがどうした?」
『あれぇ? 純じゃないの? 弟? じゃあ岳? 初めましてー』
「いや、俺はお前が誰なのか聞いてるんだけど」
自分と同じ顔の奴が、全然違う口調と表情で話してるとすげぇ変な気分だな。しかも鏡のくせして、俺と違う行動とってるし。
『鏡だよー。名前はキョウって言うんだー。鏡って書いてキョウね。純が付けてくれたー』
……兄ちゃんが、ねぇ。
「ひょっとして最初、名前は鏡と書いてカガミだって言わなかったか」
『ぴんぽーん。流石弟ー。ところで、早くここから出してくれないかなぁ』
「どうやんだよ」
『出してくれるのー? ほんとにー?』
「止めた」
『あぁー! 待って待ってー!』
……冗談で必死になるなよ。
『これ、三面鏡でしょ。端の二つを、真中の面に対して垂直に……そうそう、向い合せる。で、呪文を唱えるー。呪文は『シェン・アピュー・現れろ』だよ。いいねー?』
……待てよ? ひょっとして、このままやったら俺が出て来るんじゃねぇのか?
『あぁー! ちょっと、どこ行くんだよー! 嘘吐き! 裏切り者! ばーかばーか!』
うん、俺の顔してあんな口調されるのはな……。壁の陰まで行って、呪文だ?
「シェン・アピュー・現れろ」
「出たー!」
……って、誰も映ってねぇのに出て来れるモンだったのか? どんな格好してるんだ。
「岳、ありがとー」
鏡が歩いてきた。怖っ!?
とりあえずひっつかんで、鏡の方へぽいっと投げてみた。……割れたらどうしよう。投げた後で考えても仕方ねぇか。
『うわぁん! 元通りだぁー! なんてことするんだよーお』
「なんか不気味だったから」
『家族皆で同じ行動を同じ理由でする必要はないだろー。凛しかり、君等のお父さんしかり、純しかり、忍しかり、岳まで! あぁ、光もこうなのかなぁ……』
何なんだコイツ。ひょっとして中学生になると声が聞こえるようになるのか?
「あ、鏡のお化けだ、鏡のお化けだ!」
「シマ。そういや久しぶりだな」
「そーだっけ?」
……一か月ぶりくらいか。いや、結構久しぶりじゃん。家に住みつく座敷童子の一人。縞模様の着物だからシマ。
後黒い着物の男の子でクロと、静御前とか言う柄の着物の女の子でシズ、紺色の振袖の女の子のコンが居る。要するに着物の色や柄の名前。
「クロとシズとコンは?」
「かくれんぼしてんだ! シマが鬼!」
『無視するなぁー』
……キョウが拗ねてる。
『おーい、シマー。こっち来てさ『シェン・アピュー・現れろ』って言ってー?』
「シェン、アピュー、現れろ!」
素直だなコイツ!
「出たー!」
「わぁ! シマが居る!」
「違うよー。僕はキョウだよー。鏡って書いてキョウ」
「キョウも一緒にかくれんぼしよ! クロとシズとコンを探すんだ!」
「行くー。やるー」
…………えぇと、なんか行っちまったけど、いいのかな。




