こばなし
一話分にも満たないキャラ同士の会話劇です。
※挿絵もどきは消しました。お目汚し失礼しました!
《ミファレンの猫かぶり》
「ミファレン様、いつも穏やかで素敵ねえ……」
「そうねえ、あの柔らかな笑顔を見たら、結婚に前向きでなかった殿下が心開かれるのも納得だわ。さぞ癒されていることでしょうね」
「どんなにその身分を悪し様に言われても、落ち着いてゆったりと受け取られるのよ。相手の毒気も抜けるというものだわ」
「そうそう、最近では国王陛下もあの厳めしい顔を崩して本当の娘のように可愛がっていらっしゃるそうじゃない。王妃様や他のご兄妹たちとも仲が良さそうだし、これはもうご結婚も近いわねえ」
「……て、言われているみたいだよミファ」
「ふふ……くふへへへへみす様の匂いいぃ……」
「うーん、聞こえてないね」
―――
《へミスのお仕事(をするお付きのもの)》
「…………」
「………………」
「……ああもう!その値踏みするような視線を辞めて頂けませんか!?どうせ私には貴方のように上手くはやれませんよ。失敗です、失敗しました申し訳ございません!」
「……そう、自分の無能さを反省もせず僕に当たるんだ?なるほどねえ」
「怒り方がねちっこいんですよ殿下は……いっそすっぱりばっさり一思いに斬ってくださいよ、その寒気のするような微笑を向けないでください!
……というか、そもそも本来貴方の仕事ですよねこれ、貴方が『放蕩王子ごっこ』を辞めさえすれば私がこんなことをする必要ありませんよね!」
「寒気がする?おかしいな、この表情、ミファレンならうっとりしてくれるんだけど……」
「惚気ながら誤魔化さないでください!」
―――
《内心を口に出せば解決する二人》
「上目遣い……してるわよ?これでどう?」
「おお、いいじゃん」
「反応が薄い!この私がここまでしてあげてるのよ?もっとこう、萌えなさいよ!」
「いや、萌えてるって。萌えがよく分かんないけど」
「……あんたが言ったんじゃない、上目遣いするのが可愛いって……言ってること毎回違うし、あんたの好みって結局なんなのよ」
「(ここで『お前が好みだよ』とか言えたら格好良いんだろうけど……いや、チャラいのか?浮気な上にチャラいクズ男扱いされたら立ち直れない)
……ええと、黒髪で」
「(黒髪……あの子は綺麗な黒髪だわ)
そんなの日本人のほとんどがそうじゃない」
「……頑張り屋で」
「(あの子は努力家よね……)
ありがちね」
「……一途で」
「(あの子は恋人に一途だわ……)
そうでない人が好きだと言われたら趣味を疑うわ」
「……凄く、可愛い」
「(完全にあの子だわ……!)
……ふうん」
「(………………お前だよ!!!!!!)」
平太の心の叫びは、肝心なところだけ察しの悪い美麗には届かなかった。