第1話 魔王のステータス
はい、説明回になるのかな?
まだあと何個かできる予定なので、話の進行はもう少々お待ちください。
とりあえず、ここは年相応のことをしておかなければ。怪しまれたくないし。
「えっと、ここは……?」
「はい、おぼっちゃま」
…まあ、そういう呼び方になるわな。
最低でも少年ぐらいの子供が応じてくれると思ってだろう。だけど来たのは、容姿だけ見れば幼い少年。中身は勇者だけど。
「どうだ、あの方の魔力値は」
「す、凄いです。すでに8000を超えて……ま、まだあがってますっ」
「なんだと!? それじゃあルシファー様とほぼ同じじゃないか!」
そりゃ勇者ですもん、元だけど。あと小声で言ってるんだろうけど聴力倍加舐めんなよ。
「あはは、これはこれは……」
何かを吟味するように、正面の魔族はこちらを見る。
「こんなのはどうでしょう」
するのと、彼の掌から出てきたのは、……チョコレート!?
それを俺の手にポンと渡された。
「おぼっちゃまの記憶をちょっとだけ、見させていただきました」
そういいながら執事のようにお辞儀をする。つかおぼっちゃまって。
痕跡『記憶』か。
「ルフォート様、おやめください! 貴方様は先代魔王の息子なのですよ!!」
この男……ルシフェルが嬉しそうに見せてきた少年にそっくりだと思ったら、あいつの子供だったのか。いやぁ大きくなったねー。金色の髪とか、優しげな瞳とか。てか背高いなぁ、何歳なんだ?
「おにいちゃん、なんさい?」
……我ながらフリとはいえ恥ずかしいなこれ。
「ん? ひゃくななじゅ……18だよ」
……今170は言ってたよね。でも僕は子供。子供はたまに聞こえないときがあるんだ。
「おにいちゃん、えらいひと?」
「ん? んー……どうなんだろうな」
困った顔で隣にいる小さな男の子を見るルフォート。
「ルフォート様は、今日からあなた様のお兄さんになられるお方ですよ」
……へ?
流石に虚を突かれたかのようにキョトンとしてしまった。え、なに? お兄さん?? ん???
「よせよヴァリー。そんなこと言っても分かんないだろ? 正直、こんな幼い子がくるとは思わなかったけども…」
だろうね。俺もあんたがお兄さんになるとは思わなかったし召喚されるとか思わなかったよ。
「……おにいちゃん、よろしくねー」
そういいながらぎゅーしてやる。
「あ、あぁ、よろしくな」
そういってすこし破顔するルフォート。
どうよ。どんな人もイチコロの天使の笑顔じゃ。これで強面の兄さんたちもニヤニヤして……あれは気持ち悪かったな。いかにもやっさんな人がデレデレした顔で手振って来た時とか鳥肌たったし。
「……こんなとこにいるのもなんだし、お部屋までご案内せねば。おい、侍女を呼んでくれ」
「はい、お連れしました」
俺の後ろにはいつのまにか10歳ぐらいの小さな女の子が立っていた。はやいなおい。
緑色の髪に紫色の瞳。その目の下に先を槍のような形にした十字のタトゥーをいれている。服装はゴスロリに近いメイド服…なのかこれは——黒を中心としたものであった。
「では、参りましょう。……ええっと」
……あぁ、そういえば名乗ってなかったな。
「ぼく、コタロウ! よろしく、お姉ちゃん」
「っ! は、はい!!」
ふっ、ちょろいな?
そのまま俺はメイドさんと一緒に部屋を出た。
後ろでルフォート達が顎を外れそうな程開けてるのを知らずに。
さて、やって来ました新しい部屋。今日からここに済むわけなんだけど……。
「殺風景すぎないか、これ」
そう。新しい魔王の部屋にしては、何もなさすぎるのだ。必要最低限の机や椅子。ベッドがあるくらいで、何もない。いや、まぁ突っ込むところはあるんだけどね。
例えば壁がどう考えてもドラゴスキン——龍の皮を丁寧に舐めして作られた超高級品を、壁全体につかっているところとか。ドラゴスキンは、現代でいえば上手く一匹分を綺麗に処理できれば、皮丸々一つで原油と同じように国が動くレベルに希少なのだ。いや、膨張無しで。それで戦争になったことなんていくつもあったし。
その皮によって作られた防具は、溶岩に突っ込まない限り、暑さにも耐え、吹雪の舞う極寒地の寒さにも耐え。同じ種族の龍なら、絶対爪も牙も通さない。中に幾つもの魔法陣を書くことができる優れもの。
武器のグリップなら扱うものにとって最高のフィット感を与え、蛇腹などのギミックに使えば。伸縮も自在。50年は耐えれると言われるほどだ。
ちなみにこの部屋に使われているのは、恐らくファフニールのものだろう。あいつは紫色のなのが特徴的だからな。わかりやすい。
天井は白く。一見普通にみえるのだが、これはカナデグモからとれる糸を使っている。
カナデグモとは、周りの風景に同化し尻からその糸をだし、獲物が来るまで待ち、その糸に気付けなかったモノは、ピアノ線の如く、スパッと切れてしまう。おまけに痛みを感じない。糸に引っかかった時に『ピィーン』となるのが由来で、その音がした時は既に遅しという、まさに暗殺者である。
とても頑丈でしなやか。しかし扱う際は頑丈な手袋をしなければ、一瞬で指が切れてしまうほどだが、それに気をつければノコなどに加工され便利グッズへと早変わりするようなものだ。
生息地も不明のため、これまた希少。
存在に気づけばlucky。気づけなければdead。それがカナデグモた。
そんな豪華な造りなのだが、やはりモノがないのは寂しい。両親に言われて入った寮なんか、ベッドにかけらた布団とか、可愛らしいキャラクターものだったりしたんだけどな。
真っ白の布団、多分、希少なトレントを使った黒い机が、今日から俺の相棒だ。
紙は羊皮紙しかないし、本も作成が難しいとのことで値段は日本の10倍はしたはずだ。
遊ぶものがほとんどない。それがこの世界、ファイスだある。
今は外が明るいため、水晶製の窓から部屋の中が照らされているが、夜はどうするだろうか。
「あ、そうだステータス見ないと」
対象は……そうだな、この机でいいか。
「————品位開示」
手を机に当て詠唱を行う。無事、発動して表面がガラスのようになり上から下へ流れるように、文字が落ちてくる。
よし、イメージなども大丈夫だし、転生した副作用で使えなくなっていたのかと思ったが、どうやら前と同じように…いや、魔力の通りがいいな。召喚による補正がかかってるのか? 先程ひらいたステータスをみる。
コタロウ・ヤマオカ
種族:人間→体質:異世界人
称号:勇者・選ばれた者・記憶転生者・不幸少年・魔王《見習い》
ふむ、やっぱり魔王って出たか。そして、記憶転生……称号として扱われるのか。
というかなんだよ不幸少年て。確かにここに召喚されたのは不幸なんだろうけどさ。
そんなことは置いといて、右へとスクロールさせて、自身の力を確認する。
パーソナリティー
総合:Lv.802 魔力:19000
スキル:英雄・デウスマジシャン・剣帝・クリエイター・ヴェアリアスマスター・隠れ蓑《ドッペルゲンガー》
ここだけ、あんまり変わってないな。いや、魔力が4500ほど増えた?
総合というのは、攻撃、防御、素早さ、抵抗、身体、記憶、魔法、才能。この八つのレベルを合わせた合計数のことを指す。平均にすると、約100。まぁようするにゲームとかでよくある最高レベルに到達しているわけだ。まだ上があるんだけどな
パーソナリティーも問題ないようだ。
よし、じゃあ早速隠れ蓑を使うか。
この隠れ蓑は、隠密行動をしたりすればいずれ手に入るスキルで、最大が《神隠し》なんだが、おれはその一歩手前、ドッペルゲンガーまでしか行けなかった。
これを使えば、基本的にステータスを隠蔽することが可能だが、魔王クラスになると、そうもいかなくなる。
この世界には、沢山の種族がいる。
俺のような人族。海に住む海族。山に住む山族。空をかける空族。そしてあと二つ。天族と魔族だ。
他にもその2種族の間から生まれし子供——亜人や精霊などかいるのだが、それは置いておこう。
それぞれの種族に、最強とよばれるものがいる。
人族は、俺。そう、勇者が頂点となっている。
海族は、龍魚。別名バハムート。現代では龍の神とされてるが、実際は海の王だ。
山族にはベヘモス。空族はドラゴン。
そして、天使は聖女。魔族は魔王というわけだ。
これらがこの世界を統率してたんだが……まぁ、色々あったと言っておくよ。
ん? 話がごっちゃになってるって言われても知らないよ。口下手だもん、うん。
…と、誰か来たようだ。
「コタロウ様、お食事がご用意出来ました」
…ウゲッ、それってまさか。