プロローグ
もしかしたら、プロローグですらない、第0話を投稿するかもしれません。
音も無く、青年の持つ聖剣が男の胸を貫いた。
そこから落ちてくるのは赤——ではなく、青い血。それが男の種族が魔族だという証拠である。
「ぐぅう……見事だ、勇者」
胸に走る痛みに苦痛の声を上げながらも、賞賛の声を上げる魔王。
「……ふん、驚いたか? そうだ、もうこれで、お前の旅は終わりだ。これでお前はいつもの平凡な——」
そこで青年は、違うと呟く。
「何が違う? お前は、自分のするべきことをしたではないか、やり遂げたではないか。自分を誇れ勇者よ」
「違うっ!」
彼の青い瞳からは涙が止まることを知らず、溢れ頬を伝っていく。
「俺は——俺はっ」
「……くくく。もっと御伽噺のような魔王を倒したかった……か?」
言葉が詰まる。
魔王と勇者は、正体を隠してはいたものの知り合いではあった。
喧嘩をし、バカをやって、そして笑いあう程、仲の良かった二人。勇者である青年は、突如手紙をおいて何処かへと消えた彼に怒っていた。手紙を読み、正体を知ってもなお、魔王だと分かっても。分かり合えると信じていた。
だけど、現実は勇者にとって最高の友の命を奪おうとしていた。
「……これを引き抜けば、私は直ぐにマナの粒子となり、消滅するだろう。だが、その前に……」
そういいながら、魔王は青年を抱きしめる。必然として、聖剣がさらに身体を蹂躙すべく浸入していくのだが、もう感覚はないのか、苦悶の声を出していない。
「この世界の真実に近づいていたお前に、これを授けよう————授与魔法・『能力』。追加、『記憶』」
青白い光が、魔王の体から溢れ、接触している場所から少しずつ、勇者の体へと流れていく。
「……なにを?」
「さあな。死ぬ前の最後の——かもな」
カカカと笑う彼の目は、既に何も映していない。
「私が使用したのは、とある魔法の詠唱だ。勇者……お前にあるものを託す。だから。俺の持つ力と、一部記憶を埋め込ませて貰った……さあ、抜け。そして、称号と共に。母国へと帰還しろ。我が友よ」
「——今までありがとう、な」
一気に、引き抜く。そしてそれが合図というように、光の粒が魔王の体から水のように溢れだす。上へ上へと登っていき途中で消えていくその様は、彼がこの世界に現存できる時間が残り少ないことを表しているようだ。
「さらばだ、勇者【デューク】よ」
「あぁ、楽しかったぜ。魔王【ルシファー】」
こうして黄金の髪をもつ歴史上最強の魔王と、歴史上初めて異世界からの召喚もなしに、単騎で魔王討伐を、成し遂げた黒髪の勇者の物語は、幕を閉じた。
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おぉ……! と、どよめきの入った声が混じりながらも、彼らは成功を祝う。
石造りの建物の中にある、とある一室にて。彼らはとある儀式を行っていた。そしてそれは成功。代償として、最初は30名もいた魔術師達のうち数名が役割を果たした後、血を全て使い切り失血死、もしくは脳が壊れ廃人と化した。
だが、彼らは今目の前にいる存在から漂うとてつも無い魔力に、その小さな体では許容できない筈の大量のマギを制御仕切っている少年なら、救ってくださるだろうと、信じきっている。
「やっと、成功したぞっ」
「これで、我らは救われるぞ」
「…友の犠牲は無駄ではなかったか」
そこにいたもの達はあまりの嬉しさを口に出していく。横にいる者同士で抱きしめ合うものもいた。
彼らは普通の人間ではない。
角のあるものや額に目がもう一つあるもの、体の裸が青紫のものやそもそも人ではない存在もいた。
そう、彼らは魔族。この世界では最強と呼ばれている種族である。
その種族が行っていたのは、とある召喚術。
異世界と呼ばれるところから、自分たちの王——つまり、“魔王”を召喚するための儀式である。
彼らには代わりが必要だった。亡き魔王に変わる魔王が。もうお終いだと叫び狂う者が現れ、心の病に倒れた者もいる。そんな彼らに一つの吉報が届いた。
それが、今行われていた魔王召喚の儀式である。
それが行われていた場所の中央、魔法陣の中には一人の小さな少年が立っていた。
幼いながらに鍛えている身体。この世界にはほとんど存在しない黒髪。それと黒縁メガネの奥にあるのは琥珀色の瞳。
その少年は、彼らからすれば見たこともない——学生服を着ていた。
彼は、僅か7歳でこの世界へと召喚されたのだ。
なんと悲しきことか。
しかし、彼こそが後の世に大魔王として名を連ねるだろうと、信じてやまない。
これは、魔王としての運命を辿ることになった、ある少年の物語である。
——筈だった。
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おいおい、なんだよこれ。なんでみんな俺を讃えるような格好してるんだ?
俺は今現在、困惑をしている。何故かって?そりゃバスの中で寝て起きたらあら不思議、訳の分からん集団に囲まれていたんだから。
誰だってびっくりするだろ? いつも一緒のお友達が風邪で休みになって暇だなぁと思ってたらうとうとして—――もう訳が分からない。
え? お前の言ってる事の方が分からんって? だまらっしゃい。火だるまにするぞ。いやマジで。
……俺、なんかあの世界色に染まってるな。現代っ子ってこんな感じ…だったよな。
まあいいや。それより状況確認をするために辺りも見渡す。
壁も天井も全て石で出来てるようで、しかし粗くなく、滑らかに仕上げられているのがわかる。これだけでもその職人の腕がどれだけなのか分かる。アノイトシュ城よりも綺麗になってるんじゃないの? 凹ました壁に置かれた松明も、多分燃え盛る人馬の皮の可燃性と持続性を利用した高級なものが使われてるようだ。
あの半人馬、尻尾とか炎で出来てるし皮は尾によって燃えてもダメージにならないしむしろそれを利用して突進とかしてくるんだよな。ケンタウロス系はおとなしく弓矢使うか木々を育てるだけにしてろよって思っちゃうんだよな。
後は、俺を召喚したのだろうこいつらが魔族ってことが分かる…くらいか。
ん? なんでそんなに詳しいんだって?
あぁ、ご挨拶忘れてました。俺の名前は山岡鼓太郎。
この世界ではラークシ・F・デュークと名乗っていた男だ。
正確に言えばその……なんだ。
自分、元勇者っす。はい。
彼らは知る由もないだろう、自分たちの召喚したこの少年こそが、数年前に自分たちの王を殺した張本人にであると。
————あぁ。つまりお前は、こうなることを予期していたっていうことかよルシフェル!!
更新はいつになるのやら(遠い目




