第8話 買っちゃった
やらかしました。7000もあったのですがうっかり保存せずに切ってしまうという。バカすぎるミスを……チクショウ。
ということで、少なくなりましたが、最新話です。
さてと、フローを取り戻すこともできたし、とっとと帰るか。
俺は行きと同じく屋根の上を伝っていくと、途中人の気配がない場所があったため、そこに降りた。
そろそろ夜明けだ。微妙な時に来たものだな。魔国であるファンムーゲンはまだ深夜のはずだ。
この世界は技術の発展したあの世界とは違い、時差などといった考えが全くなく、魔族のいる大陸は夜が早くくるのは瘴気などがあるためだとか。我らのいる国では均等に闇も光も訪れるから平等な存在なんだとか。頭の中をカチ割って見たい気がしなくもない。
「『隠れ蓑』発動」
俺がそのまま帰らなかった理由は、俺の別荘を管理してもらえるものを買うためだ。
今の俺は、隠れ蓑のスキルによって姿が変わっている。
高級な服を着たイケメン、それでいて高身長の貴族をイメージする。
よし、ここれでいいかな? 水と土の二重魔法で水鏡を作り全体をみてみる。
そこに映ったのは、俺、コタロウ——ではなく、白髪の少年だった。
この世界では高級品であるメガネではなく、価値が3分の2のモノクルを左につけており、まだ幼さが残る……中学生を大きくした感じ。
うん、まあこんな感じでいいかな。
俺は朝日が昇り始めるまで待ち続けた。途中ゴロツキが絡んできたが隠れ蓑の能力でそこにいるかのように思わせてスルーする。
日が昇り始めるときが、ちょうど人が起床する時間だ。
まずは寝汗などを拭いたり顔を洗ったりと身支度をして、子供達は将来したいことのために訓練するものもいれば、親の手伝いをするものもいる。この国ではそれが常識だ。
そして、その日の出の時間と共に、市場に品を並び始め、人によって活気づく。漁業を営んでる人がよくする朝市というやつだ。夜のうちに、海に面している隣国から新鮮な魚が輸入されてくるため朝の商品が並んだ瞬間じゃないと朝食の献立が一品減ることになる。
俺が言いたいのは……お、あの木ではなく石で作られた店が開くようだな。
「『ただいまより、開店いたします。皆様お一人一尾ずつ……ぎゃっ』」
「一匹なんていやよ! 私は6尾!六尾いないとだめなの!!」
「私の家は4尾! 絶対にとってやるんだから!」
「なによ、せめて二尾は残してよ!? ここの魚子供達が好きなのよ!」
「ヒラキ! ヒラキは在庫あるよね!?」
「ア、アタイは12尾なんだな」
「「「「お前(アナタ)にはやらんっ!!」」」」
「そ、そんなぁ」
僅か5人の女性によって占領される店舗が一つ、また一つと増えていく。
……どの世界でも、オンナという生き物は争うものだということだな。
あれは怖かったなぁ、大阪に行った時に見かけたおばちゃん集団とバーゲン戦争。レジに通してない商品を引っ張り合い、台無しにすれば今度は口論を飛び越して殴り合いになったり。勇者もビビったよ。あの時はちょっとチビッたし。
というか店員どこ行った。さっき女の波に吹き飛ばされたみたいだけど……あ。大丈夫そうだな。壁にめり込んだ気がしたけど、スライム系の素材でも。使ってるのか? 繁盛してるんだねぇ。いつかハゲになる前に死ぬだろうけど。ご愁傷様です。
そんな激戦区を抜けた後、俺は路地裏へと入る。場所はうろ覚えだが、気配が地下にもあるってことはここであってるはずだ。
ノックを6回すると、扉に突然耳と口が現れる。
「堕ちた天使は死すべし」
奪還のため屋根を跳んで行ったとき、偶然耳に入ったこの合言葉は正解なようで、ひとりでに扉が開く。その時の場所とは違うようだが、どうやらこの国の裏のものたちの共通する合言葉なようだな。
俺は中に入ると、下へと続く階段が目に入った。石ではない素材を使ってるそれを、松明が照らすその様は、どこかダンジョンの最深部を思わせる。
そのまま降りていくと、徐々に松明の光ではなくなり、紫色の光を放つ何かへと変わっていった。闇魔法である催眠術だろう。ここを出るときも同じようにこの道を通る。そして出口へと着いた時には中の構造を忘れてしまっていた。なんてことにして漏れることを未然に防いでるのだろう。中々に用心深いな。国から許可を貰って所に来てしまったか……?
歩くこと数分。俺はコロシアムの縮小版のような所に着いた。地下にこんなものがあるとは、もしや中々にやばい所だったりするか? 近くにあった椅子に座りながら考える。
腰をかけるところ以外はワイトの魔力が染み込んだ骨を使って作られている。強度もよいようだ。
「お客様」
誰かに声をかけられ振り向くと、一体の骨——スケルトンが黒いタキシードに身を包んで立っていた。
「本日はご来店いただき、誠にありがとうございます。お客様はこちらのようなものをお持ちではないですか?」
どうやらここの店員のようだ。彼が手に持ってるのは顔を上半分を隠す眼鏡のようなものだった。
なるほど、身分を隠してってことか。
「いえ、持っていません。なんせ始めてのものですから」
「そうですか。でしたらあちらの奥に売られておりますので、どうぞ」
そういいながら指差す先には、確かにこじんまりとした屋台みたいなものがあった。
「ここは私が既に指定された席だとマークさせていただきますので、盗られることはないですよ————盗難防止」
そう言うと彼は俺の肩椅子にそれぞれ手を置くと、魔法の詠唱を行った。するとどうだろうか、素材として使われている骨が紫色に変わったではないか。
「すみません、ありがとうございます」
「いえいえ、ご不快に思われないようにと思ってのことですので」
そういうと、スケルトンはどこかへと行ってしまった。
……盗難防止って、えげつないもの使ったなあいつ。
盗難防止って別名、拷問なんだよね。うん。
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しばらくすると、風魔法を使ったアナウンスのようなものが聞こえ、一人の白髪の男が現れた。
「ようこそ皆様、おいでになりましたね。私が司会を務めさせていただきます、ナインでごさいます。本日は中々にいい商品が入りましたので、どうぞ、よろしくお願い申し上げます。それではまず最初に、ナンバー1!」
そういうと彼は左端により、番号を告げる。
出てきたのは、一人の少年だった。
スラムなどで目にする子供達のような汚れた格好をした少年の首には、奴隷の証である首輪がされていた。
朝の市場と共にここ、奴隷市場も開かれる。
しかしそれはここだけであり、他国では真夜中にひっそりと開かれるのが普通である。
ではなぜこんな早くに? それは、地上でのあの大阪のおばちゃん状態によって警備の意識がそちらに向いてしまうためだ。
こんな朝早くに、交代してさー寝ようとしたものまで起こされるようなので、上もお手上げ状態。そこを狙ったようだ。
そうして何人もの子供、大人の女性が出品されてく中、俺は二人の子供を買い、その市場を離れた。
「改めまして、タイアード・プロフィッツ・レイロストと申します。こう見えて、昔は有名人の一人だったのですが?あぁ、前世での話しですよ」
カラカラと笑う、金髪の髪を長く伸ばした彼は、先ほど奴隷市場で話しかけてきたスケルトンだという。
どう見てそう思えというぐらい、その本体である骨に覆い被された皮は血色がよく、生きた人間にしか見えない。しかし、彼の青い瞳わ覗き込めば、その青は青い鬼火だと分かるものは分かるだろう。
今現在、俺は余り人気のない……というか、先ほどの奴隷市場があった場所の真上に建てられたカフェにて、スケルトンのタイアードと対面していた。
「凄いですね、深海種の皮を使ったものですか?」
「よくお分かりで! これはちょっとした伝で手に入ったものでしてね、私の正体がアレなもので。スキルだけではどうにも隠し切ることができなくて……貴方も、ちょっと注意した方がいいですよ、レイブンさん」
レイブンとは、俺が奴隷市場を使う際に必要ということで考えた名前である。咄嗟に考えた割にはまぁ、センスはいいかなとは思った。この世界では厨二が全てだし。
「あら、バレてましたか。まぁ、こんな容姿なので追い出されるかと」
「なるほど。それなら納得です。そして貴方は恐らく私と同じ……いや、もっと希少な人間に転生できた存在ですね。いやぁ、これはこれは——」
ちっ、そこまで分かるのかよ。中々に鋭い。流石、無くなりしレイロスト家の最後の一人。
レイロスト家とは、かつて昔——俺が産まれてすらいない時代に起こった戦争で単騎で将の首をとったとされる、伝説の傭兵が王に貴族の位を授かったことから生まれた、平民でも貴族になれるという希望を与えた一族のことである。
子供も孫も、何かしらの絶大な才を、持っていたそうだが、ある日突然消えたのだそうだ。
レイロストか。言い得て妙だな。
あ、違う?
「さて、話が長くなりすぎて聞いてないようですので本題に入らせていただきます」
悪かったな。そんな器用に頬を膨らまさないでくれ。正体知ってる人からすれば怖いんだよ。
彼は店員に何か伝えるが、ライズしても聞こえなかった。
魔法が効かないのか、さすが今は無き英雄の一族。
「さて、ご注文されたものが来る前に一つお聞きしたいことがあります」
「なんでしょうか……あ、どうも」
いつのまにか横にいた女の店員から紅茶を渡された。戸惑ってしまったが、レイロストが奢りというので頂くことにした。
「貴方は、何故あの市場を利用されたのでしょうか? 他にも沢山あるはずなのですが」
「いえ、ここしか知りませんし。時間的に最も適していたので。ここのちかくに別荘がありましてね、そこを長年放置してたもので、掃除はしましたがまたすぐに行かないといけない用事があるので」
現在の時刻は朝はすぎて昼になるかならないかぐらい。あの市場の活気も安定し始めた時である。
明日の朝になるまでが限界な俺はが一刻も早く奴隷をてにいれためには必要だった。それだけだ。
そうですかと小さく呟くレイロスト。何かこちらを探ってるようにも思えるが……何が狙いだ?
「いえ、失礼しました。身なりがいいので金はあるが故の娯楽かと。正直な話、遊ぶためだけでしたら、この手でと思いまして」
あぁ、なるほど。こいつただの保護者的な存在か。自分は妻も子供もいないため、せめて誰かを——今の彼なら、奴隷になってしまったかれらを大切に思ってるわけか。
「あはは、そんなことのために買うお金があるなら、もっと良いものを買うためだけにつかいますよ」
子供らしく笑うと、無表情だが、彼の瞳が揺れたのが見えた。
「でしたら、安心しました。あ、来たようですね。ではまた移動になりますがこちらへ」
そう言って彼は席を立った。続いて俺も。
そうして入っていった場所は、店員達が休憩する場所のようだが……酒臭いのはなぜ?
そんな部屋にぽつんと、三人。俺が買ったもの達が椅子に座っていた。
「それでは、最終確認です。この三品でよろしかったでしょうか」
「あぁ、もちろんだ」
「確認しました。それではちょっと失礼して」
そういうと彼は俺に近づいて、肩から何かを摘んだ。
「お前……!」
「ふふっ、それでは確認が終わりましたので、こちらの三人の手枷を外させていただきます」
懐から鍵束を取り出し、レイロストは座ってる三人の奴隷の鉄球と繋がった手枷を順番に外す。
「お前ら、今日からよろしくな」
「大丈夫ですよ。スミレ、シエラ、ウーバ。彼は貴方たちを幸せにしてくれるはずだ。安心してお行きなさい」
こうして、俺は三人の奴隷を買った。
残念ながら今回はお家までいけませんでしたので、次回、早くて5日の3時頃に投稿されるかもなので。ぜひお読みいただけますと嬉しいです。




