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第三話〈規格外にも程がある〉

腕の見せどころと言ったレミィさんは彼女の背丈ほどもある白く太い木の枝のような大きな杖を取り出す。

杖の先端は枝が絡み合って器のような形をしていて、そこに桃色の花を閉じ込めた水晶玉がはめ込まれていた。


……今、この人手元に杖をテレボートさせた?めっちゃ優しい笑顔してるけど、もしかしてこの世界の人なら皆出来……いや、違うわ。お弟子さん達がマジかって顔してるから絶対これレミィさんしか出来ないやつじゃんか。王宮筆頭って言ってた意味が分かった気がする……。


レミィさんが大きな杖の下側で床をココンと二度軽く叩くとレミィさんの足元に白色の魔法陣が現れて、部屋の壁や天井が音もなく引き延ばされあっという間に真っ白な空間に変わる。



「凄い!空間魔法だ!」


「こんな大規模なものを……」


「……因みにこれって魔法のランク?とかで言うとどのくらいですか?」


「そもそも空間魔法を扱えるだけでも破格の実力があるという証明なんです」


「僕らも部屋丸ごと異空間にするなんて見たことないですよ」



……もしかしなくても私、とんでもない人に講師担当してもらってない?大丈夫?激ヤバ人間判定受けない?



「さて、空間はこれくらいでいいでしょう。できる限り大きくしましたから安心して魔法を使って大丈夫ですよ」


「は、はい」


「まずはこの杖を使って水を出す魔法で試してみましょう」



レミィさんがそう言うと、またどこからともなく取り出した小ぶりな杖を取り出して私に差し出してくる。



「これはこの世界で魔法使いを目指す人が練習用に使う杖です。誰にでも合いますから安心して使ってくださいね」


「誰にでも合う?合わないものもあるんですか?」



レミィさんの言葉に引っかかって聞くと、一瞬キョトンとした顔をしてまた優しい微笑みで答えてくれる。



「魔法使いが使う杖や魔導書は所有者の魂と最も相性の良いものを使うんです。なので基本的にはその所有者以外には使えないんです」


「ということはこの杖が例外ってことですか?」


「その通り。この杖は特定の所有者を持たないように調整されているので初めて魔法を使う方や、まだ自分の杖を持っていない方が魔法の訓練用によく使う杖なんです」



なるほど、と受け取った杖をまじまじと見る。何の装飾品もないシンプルな見た目の杖は先が丸く整えられ持ち手のつけられた焦げ茶色の木の杖はザ・魔法の杖といった感じだ。まぁ、練習用なんだから別に装飾品はいらないか。



「水魔法の詠唱は〈水よ、来たれ〉。杖の先に水を集めるイメージでやってみましょう」


「水を集めるイメージ……」



水魔法と聞いて真っ先に連想したのはアニメとかでよくある手のひらサイズの水の玉だった。触れるとパシャンと割れるような脆い水風船のようなそんなイメージ。



「イメージが掴めたら杖の先に意識を集中させて、魔法を使ってみましょう」



レミィさんの言う通りに目を閉じて杖の先に水の玉を出現させるイメージで詠唱した瞬間、全身が激流に包まれたかのような感覚がして驚いて目を開けると、


――杖の先にはイメージしていたものとは明らかに異なる、巨大な水の塊が浮かんでいた。


待って、私もっと小さいのをイメージしてた!こんな馬鹿みたいな量、想定してないって!






レミィは思わず息を飲んだ。

杖の先に浮かぶ水は、微塵も揺らがない。有り得ないほどの質量が完璧に制御されていた。



(まさか、ここまでだったなんて……)



レミィがナギに教えたのは最も初歩的な小さな水を作り出す魔法だった。しかし、詠唱した途端に感じた魔力の流れは、もはや畏怖すら覚えるほどだった。そして、明らかに動揺しているのに微塵も乱れない魔力制御。

何よりも――かつてこの世界で膨大な魔力を誇っていた魔法使いですら、はるかに凌駕する魔力量。



(上級……いいえ、これは正しく「至高級」の魔法ね。道理で水晶が割れるはずだわ、初めから測れるような量じゃなかったんだもの)



強ばった体を落ち着かせるために一度深呼吸をして、視線を水の塊からナギに移す。水は完璧に制御できている。ならば――レミィは、ナギを落ち着かせることが最優先だと判断した。

第三話、ようやく書けました。

書きたい欲とゲームしたい欲のせめぎ合いが続く今日この頃。

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