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我、元競走馬だが異世界転生したらなんか天馬になってるんだが!  作者: 堀込ケーシ
旅立ち~上都編

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旅立ち~上都編・14

 ラナ隊長の振るう大剣が盗賊たちを薙ぎ払っていく。それはまさに暴風。盗賊たちが気づいたころには、彼らは倒れ伏していた。


「相手は一人だぞ! こちらは距離を開けて、奴を狙え! 撃て! 撃て!」


 部隊のリーダーらしき人物は大声で指示を出す。しかし、弓矢隊は距離を開けようとした途端、ドュケレーに乗った彼女から逃れる間もなく倒れ伏す。


 そして、彼女をめがけて撃たれる矢は、どこからともなく放たれる風により狙いをそらされる。


(ほう、このように使えばよいのか)


 と、ライにしがみつかれているステファンは感想を漏らす。


 ラナ隊長は人馬一体となり、リーダーをめがけて突進していく。しかし、どこからともなく盗賊リーダーの周りに近接戦に特化した盗賊どもが現れ、周囲を取り囲む。


「今だ! 騎馬隊突撃! 隊長をお助けしろ!!」


 バムの掛け声とともに、後方から遅れて参じた騎馬隊が突入する。


「ナイス! バム! いいタイミングだわ!」


「隊長も、何も言わずにライさんを連れて駆けないでください! ドュケレーが速くて、追いつくのに時間がかかったのですから!」


 ラナ隊長は駆けつけた部下たちと足並みを揃え、突撃に加わる。


「それはごめん! でも、駆けつけて来るって信じてたわ!」


 彼女たちの機動力をもって、盗賊リーダーの周りを囲む防御陣形を蹴散らしていく。


 頭上から見守る一頭と一人。


「あれが、本物の戦いなのですわね……」


(……)


 まざまざと見せつけられ、ライは息をのむ。これが稽古や訓練とは違う、本物の命のやり取り。これからライは、その場所に身を投じることになるのだ。


(……どうした、娘よ。あれが怖くなったか)


「え、ええ。私は覚悟しておりましたけれど、やはり本当の闘いというものを見ますと……」


 ステファンは、彼女がぶるぶるとかすかに震えているのがわかる。


(……逃げたくなったか? 今なら、どこか遠くへ逃げるのなら今のうちだぞ。今の我なら遠くへ行ける)


 ライは首を横に振り、恐怖を振り払う。


 そして、震えながらも虚勢を張るように言葉を紡ぐ。


「いえ、逃げるなんてことをしましたら、それこそ騎士としての恥! ステファンこそ、恐怖で逃げたくなったのではなくて?」


(娘、震えているぞ……本当のことを言えば、我も怖い……しかし、娘を置いて逃げるというのは、どうも寝覚めが悪い)


「ステファン……!」


(ま、まあ、娘についていけばうまいものが食えるとわかったからだからな……)


「ふふふ。そういうことにしておきますわ。そして最後まで、見届けましょう。戦いというものを」


 ラナ隊長を含む騎馬隊は、盗賊の守備陣形を崩し、盗賊のリーダーを叩き伏せていた。


 こちら側の勝ちだ。


 ラナ隊長は周囲を確認後、ライとステファンに向けて大きく手を振った。


 地上に降り立つと、ライは驚く。命をやり取りしていると思っていた盗賊たちは、まだ息があったのだ。彼女たちは手際よく手当をし、縄で体を縛り、動けないようにしている。


「いやぁ、団長の指令でできるだけ盗賊どもを生け捕りにしろと言われたのよ。手加減するのも本当、骨が折れるわ」


 縛り上げられた盗賊どもの中には、ステファンを連れ去った二人の男女の姿もあった。


    ***


「報告って……?」


「何かしら……?」


 場所は変わり、どこかの館。筋骨隆々の二人の禿頭の男が、どっかりときらびやかなソファーに座り、ひざまずく手下を問い詰めている。


 二人は派手な装備で着飾り、特徴的なのは濃い化粧をしていることだった。


 周囲の取り巻きも、化粧こそしていないが荒くれ者のように見える。


 二人は酒を飲んでいた。


「お頭、その……」


「お頭じゃなくて」


「姐さんとお呼び」


「は、はい……! 姐さん方、天馬の取引に応じた第一部隊が、しくじって軍の騎馬隊に捕まったようです」


 二人の化粧した男は、ぴきりと手を止める。


「あら、どうしましょうね。ルル」


「ええ、どうしましょう。ルゥ」


 その雰囲気に、手下は恐れおののく。


「これって、罠だったのかしら?」


「いえ? 裏付けは取れていて、軍とのつながりは全くなかったわ」


「でも、これって我々のメンツの丸つぶれじゃない?」


「そうね。丸つぶれね。それに、物資を運んでいるのでしょう?」


「でも天馬騎士団が守っているのよ」


「とはいえ、全体の一部だけでしょう?」


「そう、それに武器を持たない者もいる」


「なら、襲っちゃいましょう。ルル」


「ええ、皆殺しにしちゃいましょう。ルゥ」


「「そうしましょう」」


 彼らの手には、狼の紋章の指輪がきらりと光っていた。

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