26 私がクリスティーヌですよ
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今回は長めですが、一気にいきます。
街の広場ではクリスティーヌがポウマの実を使い、ラネックと何やら調合をしている。
皆気になるがいつ何が起きるかわからなく持ち場を離れる事ができない。
「出来た!」
クリスティーヌが嬉しそうに叫び何やら怪しげな液体の入った瓶を空にかかげた。
「お嬢、とりあえず試してみよう」
スペンサー特製対モルテリリー薬を1滴垂らし、クリスティーヌとラネックが調合した物をかける。すると、モルテリリーの周りのモルテリリーも萎れ、枯れ果てた。
「おし!即席だが成功だな!これで何とか足りるだろう」
クリスティーヌとラネックが一安心し、新しく調合した薬を小分けにしてる時、城から爆発音が聞こえた。煙が空に登っていく。城の裏手から黒い物とその後に続くように数体の何かが空を飛んでいる。
「な…何だ?何があったんだ?」
ローウェンや騎士達は剣を握りしめすぐに攻撃できるように臨戦体制に入る。クリスティーヌも手を止め空を見る。黒い物体は徐々にこちらに近づいてくる。近づいてくるにつれ、黒い物体が何かが見えてきた。
「羽を持つ蛇だわ」
「間違いないな。厄介な奴らが出てきたな。穏便に通り過ごしてくれればいいが…思い通りには行かねぇよな」
「そうね。ルアトルを使役する位だから魔力は相当あると言う事だけはわかるわね」
クリスティーヌとラネックは緊張した面持ちで空を見上げ通り過ぎてくれる事を願った。だが、ラネックの願いは虚しく早々に打ち破られた。ルアトルに乗ったハミルは遠目でもわかる、広場の不思議な緑の魔石とムスビツルに興味を持ちクリスティーヌ達のいる広場へと向かった。ハミルは絨毯の近くに綺麗な魔力のオーラを纏った者に目を止める。近づいて見るとまだ幼い少女だった。
「ご機嫌よう。お嬢さん」
緑の絨毯の上空でルアトルに乗った男がにこやかに挨拶をし、顎の下で切り揃えられた白い髪をなびかせる。緑の絨毯を上から見下ろし何か頷いてまた口を開く。
「これを作ったのはお嬢さんかな?」
きっと普通の令嬢や女性であれば男の素敵な笑顔に呆けてたに違いないだろう。だが、クリスティーヌはそんな物には全く興味がない。男の笑顔よりルアトルの方に興味があるのだ。
「えぇ。そうよ。貴方はどなた?魔力漏れにしてルアトルに乗るなんて何か裏があるのかしら?」
「おぉ。これはこれは失礼致しました。私はハミルと申します。以後お見知りおきを」
ハミルは大袈裟に慌て恭しく一礼をする。
「お嬢さん残念ですが、この絨毯は私の計画に邪魔になるので蹴散らさせて頂きますね」
ハミルはクリスティーヌにウインクをし、すぐに手に魔力を込めると魔法陣を展開した。緑の絨毯目掛けて攻撃を繰り出したのだが、クリスティーヌが咄嗟に作った大きな防御壁に阻まれてしまった。
「ほぉ……中々やりますね。ちょっと油断していましたよ。ならこれならどうです?」
ニヤニヤと気味の悪い笑みを浮かべ、ルアトルの口に何か溜まる。
クリスティーヌはフェンリルを呼び何やら耳打ちをし、じっと何かを待ち始めた。するとフェンリルは電気を帯び始めルアトルの攻撃に備える。
ルアトルの口から火焔が吹き出されクリスティーヌの周りは一瞬にして炭火と化する。
だが、クリスティーヌも負けてはいられない。フェンリルは狙いを定めルアトル目掛けて咆哮をする。一気に分厚い黒い曇が現れ、空から轟音と共に落雷がルアトルに直撃する。勿論お互い防御魔法をかけているので挨拶代わりみたいなものなのだ。
辺りは焦げの臭いと煙が漂っている。
「あっぶないですわね。絨毯が少し焦げてしまいましたわ。何て事をしてくれるんでしょう」
クリスティーヌはプリプリと怒る。
ハミルは驚きを隠せない。この国の五本の指に入る程の魔力を持っている自分が、この幼い少女と互角など思ってもみなかった。挨拶代わりに遊んだのだが、自分が遊ばれてしまったようだ。
「お嬢さん、お名前を聞かせて頂いても?」
「私はクリスティーヌよ!」
「クリスティーヌ……もしや、エルノーワ家の?」
「それが何か?」
「近々、クリスティーヌ嬢にご挨拶に伺う所でしたので手間が省けました。今日はこの辺で失礼致しますよ。また日を改めてお会い致しましょう」
「貴方は一体何をする気?」
「秘密ですよ」
ハミルは笑いながらそう言い残し、黒のローブの者達と上空まで飛び上がりそのまま西の方角へと向かって飛び去った。
何なのあいつ。
私の精一杯でも何ともない感じだったわ。
前回の私と違う路へ進み始めてる。
あんなのに目をつけられちゃ私の幸せな計画が崩れちゃう。何とかしなくっちゃ。
悶々とする気持ちを抑え、防御結界を解く。
緑の絨毯の端が少し焦げてしまった。この位ならまだ大丈夫と考えるクリスティーヌである。
ラネックは目の前の壮絶な挨拶の応酬に頭を悩ませた。
お嬢……また変なのに目をつけられたな。
こりゃまた大変な事になる。
ガウスさんに話をしとかなきゃなんねーな。
皆、目の前で起きた出来事から切り替え、辺りが焦げ臭いまま時がくるのを待つのである。
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ガウス達は隠し部屋へ入り灯りを点して、周りを確認する。奥に薄っすらと人影が見えた。
「陛下!!!」
デニスが駆け寄る。虚ろな目をし辛うじて意識はあるようだ。何か気配を感じ正面を見ると赤ん坊大のモルテリリーが咲いていた。
「ガウス殿!こっちにモルテリリーがある!」
ガウスとスペンサーは騎士達に防御魔法をかけるように伝え、魔法陣展開と調合薬投入を同時にする。魔力を親花のモルテリリーに込め続ける。暫くすると、グラデーションの花が萎れ花弁の端から茶色く枯れてきた。
「スペンサーあと少しだ」
ガウスとスペンサーは大粒の汗を額につけ、ありったけの魔力を注ぎ込む。茎まで萎れ枯れて火をつけ燃やす。親花の花の部分のモルテリリーは始末したが、根はまだだ。
「あとはクリスティーヌ達に任せるしかないな」
スペンサーはその場に座り込み、クリスティーヌ達に望みを托した。
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クリスティーヌは先程の戦闘により消費した魔力を補う為に本日2度目のスペンサー特製ドリンクを飲み干していた。空の瓶をマリエルに渡した時、モルテリリーに動きがあった。
「くる!!皆魔力を網に注ぎ続けて!!」
クリスティーヌの大声で皆一斉に魔力を注ぎ込む。モルテリリーの子供達は一斉に根を動かす。緑の絨毯が激しく波打つ。
クリスティーヌがブツブツと詠唱をする。
緑の絨毯いっぱいの魔法陣が現れた。魔法陣が赤く光るとモルテリリーが一斉に萎れ、枯れ果て緑の絨毯が一気に燃え上がった。
残ったのはまるこげになった土と石の残骸だ。
クリスティーヌ達はモルテリリーを殲滅したのだ。




