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25 王子の帰城

いつも閲覧ありがとうございます。

ブックマークPVとても励みになっております。


アレクシスとガウスの一行は馬を王宮の近くに停め、あまり使われていない裏の入り口へ向かった。


奇妙な事に、警備兵が全く見当たらない。詰め所からいつも聞こえる笑い声や怒鳴り声すら聞こえない。物音1つなく不気味な感じがした。キースが周りを確認しつつ、裏の入り口の門を開いた。中に入ると、皆言葉を失った。


そこには身体じゅうにモルテリリーの根が巻きつき、口に根を入れられ紫に光っている人間が幾つも立っていた。足元には、全て吸い取られた後なのか干からびた人間が数体転がっている。



「この量を始末するのは時間がかかりすぎる。先に親花を見つけて打破するのが得策だな。急ごう」



ガウスが言うとアレクシスとキースは先頭に立ち、周りを警戒しつつ城の中に入る。


城内は薄暗く灯りが処々に点されており物音一つなくとても静かだった。ひんやりとした空気が頬を撫で、アレクシス達の足音が場内に響く。


「俺達が城を離れている数日の間に何が起きたんだ?」


「わかりません。メイドも兵士も城の中に誰も居ていません。応接の間に行けば何かわかるのでしょうか……」


皆アレクシスとキースの言葉に静かに耳を傾け、この異様な状態に眉をしかめる。


「何か物音が聞こえませんか?」


騎士団員の1人が口を開く。

耳を澄ませると応接の間の隣の部屋から何かが床を叩く鈍い音が聞こえてきた。


アレクシスとキースは音がする部屋へ行き、静かにドアを開けそっと中の様子を探る。


部屋の中には、大きなマスクをつけられ手足は縄で縛られた騎士団員数名と城の侍女や従者が数名床に座らされていた。見張りの者や結界はないようだ。


キースが人差し指1本を唇に当て静かに部屋に入る。1人の騎士のマスクの下に手を入れ、口の中に詰められた布を器用に抜き取る。


「ハ、ハミル魔法師が……!」


「もう大丈夫だ。落ち着いて聞いてくれ。何があったんだ?ゆっくりで良いから話をきかせてくれないか?他の皆も静かに落ち着いてくれ。敵に見つかれば元の子もない。縄を解いてもマスクだけは必ずしてくれ。花粉を吸えば死に関わるぞ」


キースは皆に忠告をしわ他の縛られていた者はアレクシスやガウス達の手によって開放されていく。


騎士は、ポツリポツリとこの城に何が起きたか、自分の知っている限りの事を細かく話した。


「では、昨晩ハミル魔法師と黒のローブを被った者数名がこの城を襲い、君達は襲われた後にここに連れ込まれ縛られたと。他の近衛騎士や陛下は何処にいているんだ?」


ガウスが静かに騎士達に聞く。


「近衛騎士団の隊長などは別の部屋に居ると思います。殿下はわかりません。最近お姿をお見かけ致しませんでしたので……」


「では、母上は何処なんだ?」


アレクシスは早る気持ちを押さえ、騎士と侍女達に聞いた。


「エスペラント様は体調を崩されて以来、離宮にて静養されているはずですが、エスペラント様付きの侍女が数人お暇を出されているのです。ですから、詳しい事はわからないのです」


「それはいつ頃のことだ?」


「2週間程まえだったと思います、丁度ハミル魔法師が隣国から帰還されたので間違いないです」


アレクシスはキースと目を合わせ、これだけでは済まないような予感を感じ取っていた。


「母上の事は気になるが、先に親花の殲滅が優先だな。君達は静かに城を出てくれ。裏の門から出て街の広場に向かってくれ。べニック殿とローウェン、他の騎士団が居ているから合流して指示を仰いでくれ。くれぐれも気を付けて行くんだぞ」


アレクシスは皆にそう伝えた。

騎士団員達は王子が応接の間に行くなら、自分達も行くと始めは聞かなかったが、侍女達の護衛も兼ねているから宜しく、と言うと渋々ながらも納得した。


「アレクシス様、キース様。皆様どうか気をつけください」


騎士や侍女達の背中を静かに見送り、隣の応接の間の扉の前に立った。


重厚な扉を開き中へ入ると同時に声がした。


「遅かったですね。アレクシス王子」


応接の間の奥に、白い艶のある髪をしたハミル魔法師と数人の黒いローブを被った者達がいた。黒いローブの者達は白い仮面をつけており、顔がわからない。


「貴様!!一体何をした!」


アレクシスが今にも剣を抜いて飛びかからん勢いで怒鳴った。


「あぁ、()()の事ですか?余興ですよ。余・興。まだ何も始まってませんよ?」


ニタニタ気味の悪い笑みを浮かべ、顎の下で切り揃えられた自身の髪を掻き上げるハミル。


「さて、私の仕事は終わりましたので、ここでお暇させて頂きますよ。殿下は中々良い玩具でしたね。あぁ!忘れてました。王妃は感が鋭くて驚きましたよ。少し邪魔でしたので黙って頂く事にしました。そろそろ、危ない頃かもしれませんね。私の部下は加減を知らないものでね。クックックッ」


「貴様ーーー!!」


アレクシスはキースの静止を振り切り、素早く剣を抜きハミルに飛びかかる。


黒いローブを被った者達が一斉に動き、アレクシスの前に立ちはだかり防御魔法を展開する。

アレクシスは防御魔法により吹き飛ばされ、壁に身体を強く打ち付け床に転がり落ちた。絨毯には赤い染みが広がる。


ハミルは笑いながら手をかざし、魔法陣から魔獣を召喚する。

黒光りした羽を持つ蛇(ルアトル)が現れた。

黒ローブの一人が壁に手を添え魔力を放つと、爆風と爆音が響き壁にポッカリと穴が開いた。


「では。ご機嫌よう」


ハミルはルアトルに颯爽と乗り、壁の穴から外へ飛び立った。黒のローブの者達もの次々と魔獣召喚をし、ハミルの後に続いて飛び去った。


「アレクシス様!」


キースがアレクシスに駆け寄り、治癒魔法をかけ続ける。アレクシスは仰向けになりながら、歯を食いしばり己の非力を痛感し拳をずっと握りしめていた。


「あの黒ローブに白い仮面…どこかで見た覚えが……」


「父上。殿下と王妃を救出しなくてはなりません。ハミル魔法師の言っていた事も気になりますが、モルテリリーの殲滅が先です」


スペンサーの言葉で皆我に返り、応接の間を見渡すが何もない。

仰向けになっていたアレクシスが少し動きキースに何かを伝える。


「ガウス殿!そちらの壁を手で押して下さい。部屋があります」


ガウスは言われた通りにすぐ側にある壁を軽く推した。すると軋んだ音がし、壁が外れ隣に続く部屋が現れた。


「アレクシス様、キース様。私共が必ずモルテリリーを殲滅し殿下と王妃を救出致しますので、ここは私達にお任せ下さい」


キースはデニスの言葉に頷き、アレクシスの治療に専念する。騎士2名が念の為にアレクシスとキースの側で護衛する事となり、ガウスとデニス、スペンサーと騎士2名が隠し部屋へと進んでいったのだ。

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