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137 ハミルの過去

いつもありがとうございますm(_ _)m

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正月ボケで身体が鈍っておりますが、毎日更新頑張りますので宜しくお願い致します。

インフルエンザが流行っておりますので、皆様もお気をつけ下さい。

 

 ん……

 ここは……どこだ……



 目を開けようとするが、周りが明るいのか、中々目が開けられない。


 鳥の声に、緑の匂いがし、優しい風が頬を撫でる。


「起きたか」


「誰だ?!」


 ハミルは急に起き上がろうとし、簡易で作られた寝台のようなものから転げ落ちた。


「直ぐに起き上がるな。まだ呪いは完全に取り切れていない」


 白い衣を纏った年配の男は、手にしてた水を近くの台に置き、ハミルを脇から抱えるように持ち上げ寝台へと戻す。


 ハミルは自身に何が起きたか、全く理解が出来ずに戸惑っていたのだ。


「ここは……何処なんだ……」


「別空間だ」


「別空間……?」


「お前も祭壇などと言う場所に行っていただろ?」


「祭壇……? 」


 ハミルは恐る恐る年配の男に聞くが、全く思い出せないのだ。


「まぁ、一時的だとは思うが呪縛魔法をかけられたせいで記憶が抜けているかもしれんな」


「呪縛魔法をだと?! そんな禁忌を私はかけられていたのか?! 」


「そうだな。大方、弱みに付け込まれ知らぬうちに少しづつ術にかけられていたのだろうな」


 男は静かに答え、先程台に置いた水をハミルの前へと差し出す。


「色々と聞きたいのが……」


「後にしろ。もうすぐしたら、否応なしに見る事となる。先ずは呪いを全て取りきらんとまた、闇に戻されるぞ」


 ハミルは、闇という言葉に反応し眉をピクリと動かした。


 急に風が強くなり、風の渦が発生し、その中から仮面をつけた者が現れた。


 風の中から人が現れたかと思えば、寝台の周りに続々と白い仮面の者達が現れ始めたのだった。


「すまぬが少しの間、拘束させてもらうぞ」


 年配の男がそう言うと、寝台から蔓がどこからともなく伸び、ハミルを寝台にはりつけたのだ。


 寝台を囲む仮面の者達は、一斉に紋様を描き始め、ハミルへと手をかざし始める。


 掌には古代魔法の紋様が現れており、黄色く光っている。


 魔力が身体全体を包み込み、お湯に使っているような錯覚さえ覚える。


 ハミルは気持ちが穏やかになっていくような感じがしていた。


 だが、急に頭の中に声が響いて来たのだ。



 [殺せ」

 [奴等が憎いだろう]

 [我の手となり足となれ]

 [お前のせいだ]



 ハミルは頭の中に響く声に反応し、目を固く閉じ、呻き声を上げる。


 目の前は真っ暗になり、そこには幼少期のハミルが居る。


 ハミルは女性の側におり、手を固く握りしめている。



 "あれは、母か?"



 女性の衣服は血塗れになっており、辛うじて息をしている状態のまま何かを話しているが、上手く聞き取れない。


 女性が力なく、目を閉じた時、幼少期のハミルは泣き叫び出したのだった。



 "これは確か……森へ行き、誰かに会って……何かの術をかけられそうになって、母が自分を庇ってくれた時だ"


 目の前の暗闇には、ハミル自身の過去の出来事が流れるように次々と写し出される。




 "これは、フェリアだ……謎の額の傷の事件を一緒に調べている時か……"



 赤毛の髪を三つ編みにし、邪魔にならないように後ろで一纏めにしている女性は、ハミルと同じ魔法師のローブを羽織り、何かをハミルに話しかけ調査をしていた。



 "そうだ。この傷の事件後にフェリアは失踪したんだ……何故私は今まで大切な事を全て忘れているのだ……"



 赤毛の女性、ファリアが謎の額の傷事件を調査中に行方不明になり、ハミルが必死にファリアを探している姿がある。


 ハミルは森の奥へと入り、何かを見つけると側に黒いローブを纏った者が居ている。

 黒いローブを纏った者に囁かれるように何かを言われ、足から崩れ落ち呆然と地面を見つめている。


 すると顔はよく見えないが、黒いローブを纏った者が背中に手をかざし、ハミルの背中に魔法陣を展開させ、黒いモヤが魔法陣へと吸い込まれていくのだった。



 "私は呪縛魔法をかけられているのか……"



 ハミルは呟くと目の前の出来事はぷつりと消え、真っ暗になったのだ。



 "なるほど。その後の記憶がないのは、呪縛魔法をかけられ、操られていたのか。この黒のローブの者が誰なのか思い出せない……以前から何度も出会っている筈なのだが……"



 思い出そうとすればするほど、頭が痛くなり、目の前の暗闇は渦のように歪み始め、頭に響く声が大きく聞こえるようになってくる。



 [邪魔者は殺せ]

 [まだ足りない]

 [我の手足となれ]



 "何なんだ‼ この声は‼ お前は一体何なんだ‼ "



 ハミルは何度も繰り返される気持ち悪い声に反応し、叫び声を上げる。


 再び、母親の死、大事な女性の失踪、他国との戦争により死んだ人々が次々と目の前に現れては、消えを何度も何度も繰り返している。


 ハミルはその光景を見る度に心を痛め、追いやられていく。


 いっそこのまま静かにこの声に従っていれば自分は楽になれる、と思い始めたのだ。


 小さな虹色の蝶が舞い降り、幼いハミルや青年になったハミルに触れていく。

 真っ暗闇だった目の前は、蝶が触れた場所から鮮やかな色に変わっていくのだった。

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