第14節
虎太郎は方向転換を図ろうとするが、完全に隙をついた攻撃だったため遅かった。
「カフカこうなったら俺は潜るぞ」
「え」
瞬時にして泳がねばならないという事実を突きつけられ、動揺が走る。
深度は結構あるだろう。
「ちょっと待て!」
迷っている暇はないと虎太郎の頭部が水中に消えたとき、ふっ、と私は軽くなるのを感じた。
「泳ぎが上達する方がよかったか?」
間一髪のところでアマリリスが私を持ち上げてくれたのだ。
「すまない助かった」
「いくつ俺に借りをつくるつもりだ」
私は微笑した。
「必ず返すよ」
下には虎太郎を見失ったと思しき警官たちがガヤガヤと騒ぎ立てている。
私たちには目もくれていない。
猫の聴覚は人の4倍ほどもある。
警官の会話も微かに聞こえてきた。
「香住さん、今夜はこのコイで、ひと時の恋、釣りませんか」
「意味不明なこといってないで放ってやれ。それに俺には妻も娘もいるんだぞ。ワニガメは惜しいが、早いところあの猿を捕まえなきゃいけない。明日俺は休みなんだから」
「へーい、人手が減る前に。でも応援呼ばれますよきっと。ていうかあの猫はなんだったんだろう」
どうやら網にはコイだけが捕まったようだ。
虎太郎が逃げるのに成功した証拠だった。
そして私は、ただの三毛猫だよ、と囁いておいた。
私たちはそれから川に沿って海を目指した。




