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猫のカフカ  作者: キャベツはどうした
カフカのこと
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第5節

「ないよ。他にあるとすれば、それは他の人に忠告することさ。食パンはよくないよ、とかね」



 確かに、誰かに対してとやかくいうのは容易い。



「結局ぼくはただの猫か」

「そうさ。ぼくが初めに君のお母さんの話を聞いていたら結果は違っただろうけれど。でも時は巻き返さない。君は他の何かになって自分を確立するんじゃなく、猫として自分を知っていかなくちゃならないんだ」

「なら僕も君みたいに他の奴らに訊くしかないのかな」



 彼は頷いた。



「ぼくたちに与えられた目は、誰かを見るためにできているからね」


 

「君は僕をどうみるんだい」

「素直な子だよ。純粋で鋭気に溢れ、愚かで浅はかだ」

「そうかい、じゃあそれが僕だね」

「まだ決まったわけじゃないさ。それにぼくも未熟なんだ。正解を必ずいうってわけじゃない」



 私の腹痛はいつのまにか治っていた。

 飲みこんだ量が少しでよかった。  



「もう平気みたいだね。またぼくを食らいたいかい?」

「いいや。めんどくさいし、もともと争いは好きじゃない。第一僕が悪かった」

「懸命だ」



 私は懸命な判断のできる愚かな猫だと知った。



「食べない代わりに君の名を教えてほしい。おかげかどうかは認めたくないけれど、ちょっとだけ母さんに近づけた気がする。水を向けるのが巧みな君の解釈が、正解じゃなくてもね」



 私は立ち上がっていった。

 彼は実に巧妙だ。

 私の過去を追及し、それをうまく理解して納得させるような弁舌を振るうことで、私の怒りを抑えると同時に、自分の有能さを認めさせようとする。



 君はお茶目で意地が悪い――

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