第4節
「序の口といったところだよ。恥ずかしながらね。だからぼくは色んな奴に聞いているのさ。ぼくはどんな奴だ? といって。そして出てきたそれほど多くない数の中から重なり合う部分を照らし合わせて、それを自分だと思っている。でも評価というのは複雑で、実に変化に富んでいるんだ。だから本当に自分を知るのは困難なことなんだよ」
そのときの私の顔は複雑だっただろう。
「君はぼくに怒っていたはずだけれど、今ではそうでもないみたいじゃないか。ぼくの話に耳を傾けている」
「それは君が語るからさ。でも怒りはあるよ。くすぶっている」
「でも、少なくともぼくに対する評価は変わっただろ」
私は彼のいいなりみたいで嫌になった。
だけど彼のいっていることはその通りで私は何も言えなかった。
彼の言い分を汲み取って考えれば、母はきっと、私に縛りを与えたくなかったのだ。
猫としてではなく違う何者かとなって世界を知り、何者にもとらわれない己という真の存在を確立してほしかったのだろう。
私に名前をつけなかった理由もそれなのだろうか。
実際のところ母に聞かなければわからないけれど、今になっても私は、彼の言い分は正しいと思う。
だが、はた迷惑な話だ。
おかげで私は変なネズミによって腹痛に見舞われた。
だけれど、どうしても母を嫌いにはなれないのがどこかもどかしいのニャ。
「自分を知るもっと簡単な方法はないの?」
愚かな私の質問に彼はちゃんと答えてくれた。




