33/90
第10節
私は倉庫の扉から黒いビニール袋を持って出てきた青年が、再び扉を開けるのを待っていた。
だが、いくら待てども重く鉄の匂いのする扉が開くことはなかった。
私は歩き出した。
塀を越え、閑散とした歩道を歩いた。
疲れを感じて歩をとめた。
隣に咲いたアキノノゲシに寄りかかった。
背が高いので、私を支えてくれると思ったのだ。
だが、茎は私を支えられなくなって白い花弁をつけた花が地面についた。
私も倒れ込んだ。
そして起き上がると、曲がった茎が元通りになって花が上を向いた。
私は一人呟いた。
「死を恐れた私も、君のような優しき強者になりたいよ」
後日、青年の家には数台のパトカーが止まっていた。
テレビでも彼の家が映し出され、殺人事件の詳細が語られていたが、私は途中で見るのをやめた。
深夜、私は夜空に浮かぶ星の大群を見つめた。
その中で、一際大きく輝いている二つの星があった。
今宵も私は祈るだろう。弱き親子の幸福を――
<end>




