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第10節

 私は倉庫の扉から黒いビニール袋を持って出てきた青年が、再び扉を開けるのを待っていた。



 だが、いくら待てども重く鉄の匂いのする扉が開くことはなかった。



 私は歩き出した。



 塀を越え、閑散とした歩道を歩いた。



 疲れを感じて歩をとめた。

 隣に咲いたアキノノゲシに寄りかかった。



 背が高いので、私を支えてくれると思ったのだ。



 だが、茎は私を支えられなくなって白い花弁をつけた花が地面についた。



 私も倒れ込んだ。

 そして起き上がると、曲がった茎が元通りになって花が上を向いた。



 私は一人呟いた。



「死を恐れた私も、君のような優しき強者になりたいよ」


 

 後日、青年の家には数台のパトカーが止まっていた。

 テレビでも彼の家が映し出され、殺人事件の詳細が語られていたが、私は途中で見るのをやめた。



 深夜、私は夜空に浮かぶ星の大群を見つめた。

 その中で、一際大きく輝いている二つの星があった。



 今宵も私は祈るだろう。弱き親子の幸福を――  



<end>

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