第10節
「これからも続けるのかい」
私の問いに彼は意外にも首を振った。
「僕にはちゃんと飛ぶことができないってよくわかった。それに母さんを危険な目にあわせられないからね。家出もしない。みんなが僕を心配してくれていたことに気が付かなかったんだ。だからもう無茶はしないよ。これからはアマリリスさんみたいに誰かを助けられる力を持った立派なものをつくりたい。そのためにおじさんみたいに頑張って色々と学ぶんだ」
彼は相変わらず瞳を輝かせていった。
「私は君を心から尊敬するよ」
頭のいい彼ならきっと成し遂げるだろう。
そうしてちょっぴり頼もしくなった彼は、壊れた翼を担ぎながら、母親と共に家路についた。
「いつのまにか俺たちはあの子の成長に一役買っていたみたいだな」
ハクビシンの親子を見送りながらアマリリスはいった。
「できるかできないかの見極めにもなったしな」
「俺も、めずらしいものが見れて満足している。餌をとるのがめんどくさいからって空腹に耐えるお前があんなに何かに熱中する姿なんて拝めないと思っていたんだ」
「人間が為しえたことに挑戦する彼の姿にロマンを感じたんだよ」
アマリリスはふいにとんでもないことをいった。
「お前も飛んでみるか」
「いやいい」
「遠慮するな」
といって彼は私を掴み上げた。
刹那のうちに浮かび上がり、私は暴れまくったが彼の脚力に勝てはしなかった。
小さくなる街並、顔にぶつかる風。
ここから先は思い出したくもない。
おそらく私としても今まであげたことのないような悲鳴を町の空から振りまいていたと思う。
近々新聞に、空から聞こえる謎の鳴き声! という小見出しの記事が出るのではないだろうかとそわそわして、私は今日も眠れないのだ。
<end>




