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第7節
翌日、私はいつもの如く川沿いの道を歩いていた。
ふと目に入った木を前に、私は感嘆の鳴き声を洩らした。
半分近くが空き家状態だった穴が、すべてどんぐりで塞がっていたからだ。
さらに私を驚かせたのは、ここから先の光景だった。
木の枝に座った彼の隣に、出て行ったはずの彼女がいたのだ。
その二羽はどんぐりの件によって分裂する前にしていたように、ラブラブな眺めを私に提供してくれた。
なんとも調子のよい彼女もそうだが、そんな彼女を探しきったあげく元の状態を取り戻した彼の執念と活力には目を見張るものがある。
まぁあれで心優しいお人よしの彼が幸せであるのなら、それもそれでいいのかもしれない。
当分この散歩コースは避けようと思った。
そして私は幸せ振りまくその木を背に、冷たい風と寄り添いながら家路へとついた。
<end>