第6節
「大丈夫さ。君にはもっといい彼女ができる。君を尊重してくれる立派な彼女がね。そうだ。どんぐりだけじゃ物足りないだろう。私の友人がたくさん食料を持ってる。それをわけてもらおうじゃないか。何心配ないさ。彼は優しいんだ」
私は彼の歩幅にあわせて歩き出した。
「今頃彼女は新しい寝床を探すのに苦労しているかもしれない……」
無力で優しい彼は寂しそうに呟いていた。
そうして近所の公園まできたときだった。
子どもとその母親が木々の前で何やら話し込んでいるのを発見した。
それから子どもは手にもっていたビニール袋をひっくり返した。
直後、中から滝のようにどんぐりが落下していった。
山と積まれたどんぐりを前に、怒られたらしいその子どもはへそを曲げながら母親に手をひかれて公園をあとにしていった。
動物や子孫繁栄には意味はあっても人間の家庭にどんぐりは必要ないのだ。
「私たちは実に運がいいね」
私が彼を見つめると、彼も私を見つめていた。
そして彼は一目散に、宝の山を目指して飛び立った。
「誰もが何かをするということはすべて、幸せに生きるためだ。だからすることのために、幸せを棒に振ってしまうのはすごくもったいないことだね」私は呟いた。
ふと、彼はどんぐりを貯蔵庫である木のところへ運ぶ最中私にいった。
「ありがとう。あなたのおかげだ。今までせき止められていた水が解き放たれたようだよ。すごい気が楽になった。それにそのでっかい耳もイケてるね」
彼は煽てのつもりでいったらしい。私は何もやっていないが。
「やめてくれ。ただ落ちこぼれているだけの耳さ、半端者だよ」
私はため息をついた。




