警備隊の進化と、新たな気配
第23話です。よろしくお願いします。
「ヒャッハァァァ!!主人ォォォ!!見ててくださいよォォォ!!」
「……」
俺は、思わず無言になった。
目の前でテンション爆発している警備隊。
……いや、何だこいつ。
(こんな奴だったか……?)
今まで何度も呼び出してきた警備隊。
だが、こんな“感情丸出し”な奴はいなかった。
というか――
(普通に喋ってるしな……)
そこでふと思い出す。
「……そういえば」
俺はその場でステータスを開いた。
視界に浮かぶ半透明の画面。
《警備 Lv5》の項目を確認する。
そして――
「……あった」
小さく呟く。
そこに記されていたのは。
【会話機能:解放】
「……なるほどな」
思わず納得する。
「だから喋り出したのか」
だが、すぐに眉をひそめる。
(いや、それにしても……)
チラッと横を見る。
「ヒャッハーーー!!最高だぁぁぁ!!」
両手を広げて叫んでいる警備隊。
(テンション高すぎだろ……)
ただ“会話できるようになった”だけじゃない。
これはもう――
(完全に自我出てるだろ)
そう思った瞬間。
「……お前は、少し落ち着け」
隣に立っていたもう1人の警備隊が、ボソッと呟いた。
目の下には大きなクマ。
姿勢も少し猫背気味。
声も小さい。
「皆、引いているぞ……」
「あぁん!?」
テンションMAXの警備隊が振り向く。
「何言ってんだよ!!今、最高の状況だろうが!!」
ビシッと俺を指差す。
「後ろには!!我らが崇拝する主人!!」
目がキラッキラしている。
いや、怖いわ。
「そして!!」
今度は前方を指す。
「前には!!大量の敵!!」
拳を握り締める。
「こんな最高の舞台があるかよォォォ!!」
……テンションが異常すぎる。
「さぁ!!主人に見せねば!!我らの活躍を!!」
「……」
その横で、クマのある警備隊がため息をつく。
「はぁ……」
「頼むから……」
「主人に嫌われない程度にしてくれ……」
「2度と召喚されなくなったらどうする……」
めちゃくちゃ弱気だ。
真逆すぎるだろこの2人。
(……何だこの温度差)
俺は一瞬だけ考えたが――
「……まぁいい」
とりあえず切り替える。
「残りの殲滅、頼む」
そう言うと。
「アイアイサーーーッ!!」
「了解しました……」
そして――
2人が同時に前へ出る。
その瞬間。
空気が、変わった。
(……来るな)
次の瞬間。
2人の手元に武器が現れた。
だが――
(……あれ?)
俺は違和感を覚える。
今までの機関銃とは違う。
回転式。
重厚なフォルム。
まるで――
「リボルバー式……機関銃?」
俺が呟いた直後。
「いくぜぇぇぇぇ!!」
ハイテンションの警備隊――アルが突っ込む。
そのままトリガーを引く。
ドドドドドドドドドッ!!!!
弾丸の嵐。
凄まじい連射。
だが、それだけじゃない。
動きながら撃っている。
笑いながら。
「ヒャッハァァ!!逃げてみろォ!!」
まるで遊んでいるかのような戦闘。
だが、精度は異常に高い。
シャドウウルフ達が次々と撃ち抜かれていく。
一方で――
「……カバーします」
もう1人――ソックス。
こちらは静かに構える。
狙う。
撃つ。
ドンッ
一発。
確実に急所。
無駄がない。
アルが崩した動きを、正確に仕留めていく。
(連携……)
自然にやっている。
まるで長年組んでいたかのように。
「左、3体」
「任せろォ!!」
アルが即座に対応。
弾幕で押し潰す。
「……残り2体」
「了解……」
ソックスが冷静に処理。
撃破。
数秒後。
残っていたシャドウウルフは――
全て沈んでいた。
合計、8体。
「……すげぇな」
思わず、口から漏れた。
正直、ここまでとは思っていなかった。
(明らかに違う)
前の警備隊は“ただの戦力”だった。
だが今は違う。
(考えて、動いてる)
機械的じゃない。
ちゃんと“戦っている”。
それも――
(かなり強い)
俺は自然と口元が緩む。
「……お疲れ」
2人に声をかける。
「お前ら、凄いな」
その瞬間――
「うぉぉぉぉぉ!!主人に褒められたァァァ!!」
アルが絶叫した。
「ヒャッハァァァァァ!!」
飛び跳ねている。
……うるさい。
「……だから言ったんだ」
ソックスが小さく呟く。
「簡単に褒めないでください……」
「すぐ調子に乗るので……」
完全に保護者ポジションだなこいつ。
(……面白い奴らだな)
俺は苦笑しながら、2人を見た。
「……なぁ、お前ら」
俺は2人に声をかける。
アルはまだニヤニヤしているし、ソックスはどこか疲れた顔をしている。
「お前らって……その、警備スキルの“会話機能”が解放されたから喋れるようになったんだよな?」
そう聞くと、ソックスが一歩前に出て答えた。
「はい……その通りです」
「やはり、気付かれましたか……」
落ち着いた声。
だが、その目はどこか諦めにも似た色を帯びている。
「でもよ」
俺は少し笑いながら言う。
「それにしては、自我出すぎだろ」
「見た目も変わってるし……」
「何より、強くなりすぎじゃないか?」
すると――
「それは当然です!!」
アルが食い気味に割り込んできた。
「我らはずっと見ていたのです!!」
「主人の戦いを!!」
ビシッと俺を指差す。
「主人の圧倒的な戦闘!!」
「仲間を引き入れる数々の名言!!」
「そして!!」
一歩踏み出し、キラッキラした目で俺を見る。
「何より!!そのカッコいいお姿をォォォ!!」
「……俺の事しか見てねぇな」
思わず素でツッコんだ。
こいつマジで大丈夫か。
「……はぁ」
ソックスがため息をつく。
「申し訳ありません……」
「こいつ、基本的に主人の事しか見てませんので……」
「それでいいだろォォ!!」
アルが即反論する。
……うるさい。
だが、ソックスは続けた。
「本来、我らには“自我”がありました」
「ですが……スキルの制限により」
「それを前面に出すことが出来なかったのです」
俺は少しだけ目を細める。
「制限……?」
「はい」
「スキルの成長段階では、あくまで“道具”として扱われるため……」
「思考や感情は抑制されていました」
「ですが」
一瞬、間を置く。
「今回のレベルアップにより――」
「制限が一部解除されました」
「……なるほどな」
俺は小さく呟く。
(進化、っていうより……)
(元に戻ってる感じか)
(ってことは――)
俺は視線を後ろに向ける。
チャン爺。
そして、メイド三人。
(あいつらも……)
今はかなり“従順”だが。
(いずれ、自我が強く出る可能性もあるってことか)
少しだけ、想像する。
一葉が今より自由に動く姿。
二葉が感情を出す姿。
三葉が……今以上に暴れる姿。
「……いや、怖ぇな」
思わず苦笑する。
だが同時に。
(面白くなりそうだな)
そうも思った。
「まぁいい」
俺は2人に向き直る。
「今日は助かった」
「ありがとうな」
「それでは……」
俺が言いかけた、その時。
「ちょぉぉぉぉっと待ったぁぁぁ!!!」
アルが全力で割り込んできた。
「……何だよ」
思わず引き気味に返す。
「召使いの皆さんには!!名前があるじゃないですかァァ!!」
「我らにも!!」
ズイッと顔を近づけてくる。
「名前を下さいよォォォォ!!」
目がキラキラしすぎている。
……完全に犬だなこいつ。
「……分かった分かった」
俺は軽くため息をつく。
「名前な」
少し考える。
警備。
警備会社。
(……あぁ)
「警備会社といえば――」
俺は2人を見て言う。
「◯ルソックだよな」
そして、指差す。
「お前は――アル」
「はいィィィィィ!!!」
即答すぎるだろ。
次に、もう1人。
「お前は――ソックス」
「……ありがとうございます」
少しだけ照れたように俯く。
「ソックス……ですか」
「……悪くないですね」
小さく、嬉しそうに呟いた。
一方で――
アルは。
「やっ……」
溜める。
溜める。
溜めに溜めて――
「やったァァァァァァァ――」
と言いかけた瞬間。
スゥゥゥ……
消えた。
ちょうど一番ブサイクな顔のタイミングで。
「……時間ですね」
ソックスも静かに消えていく。
「……何だったんだ、あの2人は」
俺が呟くと。
全員が、ふっと笑った。
「でも……」
未来が言う。
「強かったね」
「ああ」
陸斗も頷く。
「明らかに戦力が上がっています」
浮田も腕を組みながら言う。
「面白いな……スキルってのは」
チャン爺は静かに微笑んだ。
「頼もしい仲間でございますな、坊ちゃま」
「ああ」
俺は軽く頷く。
「……また、戦力が増えたな」
そう言いながら、ミニバンへ向かう。
ドアを開ける。
「帰るぞ」
全員が乗り込む。
エンジンをかける。
そのまま――
拠点へと戻ることにした。
――それから、約10分後。
静まり返った森。
血の匂い。
倒れたモンスターの残骸。
そこに――
1人の男が現れた。
「……これは……」
ゆっくりと歩み寄る。
そして。
右手が、変形する。
グニャリ、と。
肉が歪み――
“犬の鼻”のような形へと変わる。
「……クンクン……」
地面に近づける。
匂いを嗅ぐ。
そして、呟く。
「……何だこれ」
顔をしかめる。
「Cランクのシャドウウルフが……こんな数……?」
視線を巡らせる。
その数。
異常。
「……ありえねぇだろ」
低く呟く。
「これ……どれだけの超人族が居れば出来るんだよ……」
一歩、踏み出す。
そして。
「……いや」
首を振る。
「このやり方……」
「数じゃない」
目を細める。
「質が異常だ」
一瞬、考え込む。
そして、ポツリと呟く。
「……うちの“隊長クラス”でも……」
「ここまで綺麗にはやらねぇぞ……」
その目が、鋭く光る。
「……面白ぇ」
ゆっくりと笑う。
「ちょっと、報告案件だな……これは」
そう言って――
男は影の中へと消えた。
ここら辺でまた、登場人物の
名前のふりがな整理しておきます。
黒川未来
チャン爺
浮田亮
一葉
二葉
三葉




