現在位置
第22話です。よろしくお願いします。
拠点の外に出ると、朝の空気が肌に触れた。
少しひんやりしているが、不思議と心地いい。
……いや、それ以上に。
(なんか、ワクワクしてるな)
自分でも分かるくらい、気持ちが高揚していた。
「準備はいいか?」
俺が振り返ると、全員がそれぞれの位置で頷く。
「はい、問題ありません」
陸斗はいつも通り落ち着いている。
「うん、いつでもいける」
未来も、どこか自信ありげだ。
「美咲もー!」
元気よく手を挙げる。
「……お前は戦うなよ」
俺が軽く言うと、
「しないよー!」
と即答だった。……たぶんしない。
浮田は肩を回しながら、少しダルそうに言う。
「まぁ、俺は初めて戦うからなぁ」
「最悪、僕達も居るので気軽に行きましょう。」
陸斗が少し自信満々に先輩風を吹かす。
チャン爺は静かに一礼する。
「いつでもお供いたします、坊ちゃま」
その後ろでメイド三人も揃って頭を下げる。
「「「ご命令を」」」
……ほんとに組織っぽくなってきたな。
「じゃあ――」
俺はミニバンのドアを開ける。
「どこまで強くなったか、確認といこう」
車を少し走らせたところで、俺は未来に声をかけた。
「未来、索敵いけるか?」
「うん、やってみる」
未来は静かに目を閉じた。
集中。
空気が少しだけ変わる。
「……“動植物図鑑”」
その言葉と同時に――
目の前の空間が、わずかに歪んだ。
黒い影が、輪郭を持ち始める。
羽。
嘴。
そして――
「……カラス?」
美咲が首を傾げる。
次の瞬間、その影が“形”を持った。
完全なカラスだ。
羽ばたき、空中に浮かび上がる。
まるで最初からそこにいたかのように自然に。
「これ……召喚なのか?」
俺が聞くと、未来は首を振った。
「ちょっと違うかな」
「一度“登録”した動植物を、コピーして呼び出してる感じ」
「コピー……」
つまり、何度でも使えるってことか。
「うん。前に使ったことあるやつなら、こうやって出せる」
未来がカラスを見上げる。
「“共有”」
その瞬間。
未来の目の焦点が変わった。
「……見えた」
「どうだ?」
「上から……結構広く見える」
カラスが空へと舞い上がる。
その動きと同時に、未来の視線も追従しているのが分かる。
(これ……)
索敵性能、かなり高いな。
視界を“空から”取れるのはデカい。
「便利すぎないか、それ」
「うん、かなり使えると思う」
未来が少しだけ笑った。
数秒後。
未来の表情が、変わった。
「……いた」
声が、低くなる。
「どこだ?」
「このまま真っ直ぐ。森の中」
一瞬、間を置いて――
「Cランク。シャドウウルフの群れ」
全員の空気が、少しだけ引き締まる。
「数は?」
「……30以上」
多いな。
だが――
俺は口元が緩むのを感じた。
「ちょうどいい」
「……余裕そうだな」
浮田が苦笑する。
「いや、試すには丁度いいって意味だ」
「強くなった実感、欲しいだろ?」
未来が小さく頷く。
「……うん」
陸斗も静かに言う。
「検証としては、最適です」
全員の意識が揃った。
「行くぞ」
車内は、妙に落ち着いていた。
戦闘前とは思えないくらい。
「なんかさ」
俺はハンドルを握りながら言う。
「ゲームみたいだよな」
「分かる」
未来が笑う。
「レベル上げして、スキル振って、敵探して」
「……確かに」
陸斗も頷く。
「ただし」
一拍。
「現実です」
「分かってるよ」
俺は軽く笑う。
その時だった。
「見えてきた」
未来が言う。
視線の先。
森の奥。
影が動く。
「……いるな」
車を止める。
ドアを開ける。
空気が変わる。
戦場の気配が満ちる。
森の中へ足を踏み入れる。
すぐに気配を感じた。
低い唸り声。
殺気。
そして――
姿を現す。
シャドウウルフ。
影のような体。
鋭い牙。
赤く光る目。
その数――
「……多いな」
だが。
誰も、怯んでいなかった。
むしろ――
少しだけ、楽しそうですらある。
「……どうする?」
浮田が聞く。
俺は一歩前に出る。
そして――
全員を見た。
「好きにやれ」
一瞬の静寂。
そして。
「了解です」
陸斗が前に出た。
その目は、すでに戦闘のそれだった。
「僕からいきます」
陸斗が一歩、前に出る。
静かに。
無駄のない動き。
だが、その一歩で空気が変わった。
シャドウウルフ達が低く唸る。
敵意を向ける。
だが――
陸斗は動じない。
「準備……完了」
ほんの一瞬。
わずかな溜め。
だが、その間に空気が張り詰める。
「――光線」
次の瞬間。
6本の光が、空間を裂いた。
まっすぐではない。
分かれる。
分散する。
それぞれが意思を持ったかのように軌道を変える。
左。
2体。
右。
2体。
中央。
逃げようとする個体。
それらすべてに、光が吸い込まれるように向かう。
そして――
貫通。
ズンッ――
音が遅れて届く。
5体のシャドウウルフが、ほぼ同時に崩れ落ちた。
まるで針で縫われたように。
正確に、無駄なく。
「……終わりです」
陸斗が静かに言う。
その背中に、余裕すら感じた。
「……お前、やっぱりおかしいな」
思わず俺は笑った。
「じゃあ、次は私」
未来が前に出る。
その動きは落ち着いていた。
焦りも、迷いもない。
「“動植物図鑑”」
空間に揺らぎが生まれる。
そして現れる――
6体のDランクモンスター、シルバーウルフ。
銀色の体毛。
鋭い目。
完全に“モンスター”だ。
「……それ、毎回出せるのか?」
「うん、登録してるから」
未来が軽く頷く。
「強化」
その瞬間。
シルバーウルフ達の筋肉が膨れ上がる。
空気が震える。
明らかに、別物になった。
「行って」
未来の一言で、6体が同時に駆け出す。
速い。
シャドウウルフですら反応が遅れるほど。
2体で1体を囲む。
連携。
噛みつき。
押し倒し。
喉元へ食らいつく。
一瞬。
抵抗もできず、3体が沈む。
「……やっぱりいける」
未来が静かに言った。
「これ、普通に強すぎるだろ」
俺が呟くと、
「……そうかも」
少し照れたように笑った。
「……さて」
浮田が首を鳴らす。
「俺もやるか」
手を軽く上げる。
「手術道具、召喚」
空間に歪みが生まれる。
次の瞬間――
2本の注射針が現れた。
「……毒入りだ」
軽く言う。
そして――
投げる。
無駄のない動き。
一直線。
シャドウウルフの首元に突き刺さる。
「ギャッ……!」
モンスターの動きが鈍る。
足がもつれる。
明らかに、衰弱している。
「効いてるな」
その瞬間。
浮田が上を見た。
「……落ちろ」
空中に現れる。
医療機器――CTスキャナー。
「は?」
俺が思わず声を出す。
次の瞬間。
ドンッッ!!!
落下。
直撃。
そのまま押し潰す。
動かなくなる。
「……応用だよ」
浮田が軽く肩をすくめた。
「いやいやいや」
俺は思わず笑った。
「発想どうなってんだよ」
「遅いですね」
チャン爺が一歩踏み出す。
その瞬間――
消えた。
いや、見えない。
次の瞬間。
5体のシャドウウルフが同時に崩れ落ちた。
遅れて血が噴き出す。
「終わりです」
静かに刀を収める。
……5秒もかかってない。
「おいおい……」
俺が苦笑する中。
「私達もいきます」
一葉が前に出る。
爆弾を構える。
「――投擲」
投げる。
着弾。
ドゴォォォン!!
一気に4体、吹き飛ぶ。
「次は私です」
二葉が鉄球を振り上げる。
ブンッ!!
振り回す。
叩き潰す。
3体、粉砕。
「最後は私ですね」
三葉が素手で突っ込む。
殴る。
吹き飛ぶ。
また殴る。
3体、軽々と撃破。
「……お前らも大概だな」
俺は呆れながら笑った。
「……じゃあ、俺もいくか」
残った敵はわずか。
だが――
俺はスキルを使う。
「警備、派遣」
空間が揺らぐ。
2体の警備隊が現れる。
……だが。
(……ん?)
違う。
今までと。
顔。
雰囲気。
“個性”がある。
そして――
一人が、こちらを見た。
「……あぁ!!」
突然、目を輝かせる。
「やっと会えましたねぇぇぇ!!」
「……は?」
全員が固まる。
「ずっと!ずっと!!」
「貴方に話したかったんですよぉ!!」
テンションがおかしい。
「主人に逆らう奴らは――」
ニヤァァァッと笑う。
「皆殺しだぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「ヒャッハァァァァァ!!!!!」
「……は???」
完全に意味が分からない。
今まで、こんな奴いなかった。
俺は思わず呟く。
「……なんだ、こいつは」
いやー、ストックを貯めるのって大変ですね……。
今現在この話が出来た時に公開されているのが14話なのですが、1週間もストックがないという……。




