手術室という名の戦力
第21話です。宜しくお願いします。
翌朝。
昨日の余韻がまだどこかに残っているような、少しだけ柔らかい空気の中で、俺達はリビングに集まっていた。
コーヒーの匂い。
焼きたてのパン。
……正直、この世界になってから一番“普通の朝”に近い気がした。
「……でさ」
その空気を少しだけ崩すように、浮田が頭をかきながら口を開いた。
「俺もさ、お前らと同じ“やつ”になったっぽい」
一瞬、全員の動きが止まる。
「……どういう意味だ?」
俺が聞くと、浮田は肩をすくめた。
「そのまんまの意味だよ。なんか、ステータスってやつが出てきた」
やっぱりか。
昨日の言葉は、冗談じゃなかったらしい。
「見せてくれ」
「はいはい」
浮田が軽く手を振る。
次の瞬間――
俺達の前に、淡い光のウィンドウが展開された。
【ステータス】
名前:浮田亮
年齢:38
種族:超人族
Lv:1
《手術室Lv1》 自分の目の前に手術道具が揃った手術室を展開する
・手術空間Lv1
・オペ Lv1
・手術道具Lv1
【手術空間 Lv1】
・目の前に手術室を覆う空間を展開する。
その手術空間はいかなる外的要因も受けない。
治療が終わるまで空間が消える事はない。
・空間範囲の大きさ全長3メートル
・最大収容人数3人
【オペ Lv1】
・欠損部位を再生、修復が可能になる
手術中自分の実力以上の実力を出すことができる
・オペ時間30分
・クールタイム:1日
・同時欠損修復箇所1つ
・手術の腕1.5倍
【手術道具 Lv1】
・自分の手元に好きな手術道具を召喚する事が出来る。
手術室外でも使用可能。
召喚した手術道具は性能が上がり武器としても使用可能。
・手術道具召喚数 2つ
・クールタイム2分
・性能最大1.2倍
「……」
全員、しばらく無言だった。
「……まんま医者じゃん」
未来がぽつりと呟く。
「だな……」
俺も同意する。
むしろここまで“そのまま”なスキルも珍しい。
だが――
(これ、かなり強いぞ)
直感的に分かった。
ただの回復じゃない。
戦場そのものを変えられるスキルだ。
だが、俺はすぐに別のことが気になった。
「……なあ、浮田」
「ん?」
「お前、いつ覚醒した?」
その問いに、浮田は少しだけ考える仕草を見せる。
「あー……それな」
頭をかきながら、少し曖昧な表情で答えた。
「お前らが出てった後さ、俺ここで準備してたんだよ」
「準備?」
「医療機器とか、手術道具とか。もし怪我人来てもすぐ対応できるように」
……ああ。
「そしたらさ」
浮田は軽く笑う。
「急に出てきたんだよ。目の前に、これが」
空中を指差す。
「……ステータスが?」
「ああ。意味分かんねぇだろ?」
俺は、少しだけ黙る。
(……やっぱり)
覚醒のタイミングが、バラバラすぎる。
戦闘中。
極限状態。
感情の爆発。
そして――
今回みたいな、“日常の中”。
(条件が……読めない)
意図があるのかすら分からない。
だが――
「……まぁいい」
俺は首を振る。
「考えても分からないなら、今は使うだけだ」
「現実主義だな」
「生きるためだ」
そう言いながら、もう一度ステータスを見る。
(……“手術室”か)
間違いなく――
「これ、かなり使えるぞ」
俺はそう断言した。
「……で」
俺は全員を見渡す。
「せっかくだし、スキルポイント振るか」
「そうね」
未来が頷く。
「結構溜まってるはず」
今回の救出戦。
あれだけの数のモンスターを倒した。
「Dランクが1ポイント、Cランクが5ポイント」
陸斗が冷静に言う。
「合計すれば、かなりの数になります」
「だな」
強くなるタイミングとしては、今がベストだ。
「順番にいくぞ」
「まずは浮田だな」
「俺かよ」
「一番変化大きいからな」
浮田は少しだけ面倒くさそうにしながらも、ステータスを開いた。
「……ポイントは?」
「初期分だけだな。住民登録後だから」
「あー、なるほどな」
少し考える。
そして――
「まぁ、均等でいいか」
迷いはなかった。
各スキルに1ポイントずつ。
その瞬間――
淡い光が、浮田の周囲に広がる。
「……お?」
空気が少しだけ変わる。
スキルの“質”が上がったのが分かる。
「出たぞ」
浮田が呟く。
新しいステータスが、表示される。
【ステータス】
名前:浮田亮
年齢:38
種族:超人族
Lv:2
《手術室Lv2》 自分の目の前に手術道具が揃った手術室を展開する
・手術空間Lv2
・オペ Lv2
・手術道具Lv2
【手術空間 Lv2】
・目の前に手術室を覆う空間を展開する。
その手術空間はいかなる外的要因も受けない。
治療が終わるまで空間が消える事はない。
・空間範囲の大きさ全長5メートル
・最大収容人数5人
【オペ Lv2】
・欠損部位を再生、修復が可能になる
困難な手術を自分の実力以上の実力を出すことができる
・オペ時間20分
・クールタイム:20時間
・同時欠損修復箇所2つ
・手術の腕2倍
【手術道具 Lv2】
・自分の手元に好きな手術道具を召喚する事が出来る。
手術室外でも使用可能。
召喚した手術道具は性能が上がり武器としても使用可能。
・手術道具召喚数 3つ
・クールタイム1分30秒
・性能最大1.4倍
「……おい」
俺は思わず声を漏らした。
「これ、やばくないか?」
「何が?」
浮田はまだピンと来ていない様子だ。
「同時修復2つだぞ」
「……ああ」
「戦場で2人同時に救えるってことだ」
浮田の表情が、少しだけ変わる。
自分のスキルの“意味”を理解した顔だった。
「……なるほどな」
小さく呟く。
その目は、昨日よりも少しだけ――真剣だった。
(これ……戦い方が変わる)
そう確信した。
「……次は、僕ですね」
陸斗が静かに前に出る。
その声はいつも通り落ち着いているが、ほんの少しだけ真剣さが増しているように感じた。
「どう振るんだ?」
俺が聞くと、陸斗は一瞬も迷わず答えた。
「全体強化です」
「無駄なく、バランスよく。現状の性能を最大限活かします」
陸斗がステータスに触れる。
スキルポイントが振られる。
淡い光が、ゆっくりと体を包む。
「……完了しました」
表示された。
【ステータス】
名前:瀬川陸斗
年齢:14
種族:超人族
Lv:7
《手遊び Lv7》
■準備 Lv7
■バリア Lv7
■光線 Lv7
【準備 Lv7】
・攻撃の溜めを行う
・溜め効率上昇
・1秒ごとの威力倍率:5倍
・最大蓄積:250秒相当
・最大到達時間:約5秒
・発動中はバリアのみ使用可能
・発動中は光線を使用不可
【バリア Lv7】
・自分または対象を状態異常攻撃以外から完全防御
・持続時間:3分
・クールタイム:5秒
・発動中は準備のみ使用可能
・発動中は光線を使用不可
【光線 Lv7】
・対象へ強力な光線を放つ
・威力、持続時間は準備量に依存
・光線数:6本
■分散
■集中
■追尾
■貫通
・発動中はバリア、準備を使用不可
「……貫通、か」
俺は小さく呟く。
陸斗が頷いた。
「はい。今までは表面で止まるケースもありましたが……」
「これで、後方の敵にもダメージが通ります」
「つまり……」
未来が言う。
「一列まとめて吹き飛ばせるってこと?」
「理論上は可能です」
さらっと言ってるが、やばい。
「……お前、火力おかしいな」
「いえ、まだ最適化の途中です」
いや、十分すぎるだろ。
「……次、私ね」
未来が少し前に出る。
その表情は、どこか自信があるように見えた。
昨日までとは、少し違う。
「前より、ちゃんと使えると思う」
その言葉に、俺は軽く頷く。
「見せてみろ」
未来がスキルポイントを振る。
光が、ふわりと体を包む。
そして――表示される。
【ステータス】
名前:黒川未来
年齢:17
種族:超人族
Lv:5
《動植物愛護 Lv5》
■操作 Lv5
■共有 Lv5
■強化 Lv5
【操作 Lv5】
・周囲500メートル圏内の動植物を1つ登録し、自分の手足のように操作できる
・操作可能対象:身長+80cmまで
・同時操作可能数:6体
■動植物図鑑
・登録した動植物はコピー召喚可能
■モンスター操作解放:Dランク以下
【共有 Lv5】
・視覚、感覚共有
・動植物を通して会話可能
・同時共有可能
・好感度上昇
【強化 Lv5】
・身体能力強化:2.2倍
■植物の材質変更全解放
「……これ」
俺はすぐに気づいた。
「モンスター操作って……」
未来が頷く。
「Dランクまでなら、動物と同じ扱いで操作できる」
「……おい」
思わず笑う。
「それ、普通にやばいぞ」
「……そう?」
「敵をそのまま戦力にできるってことだ」
陸斗も少し驚いた様子で言う。
「さらに強化を乗せれば……」
「Cランクに近い性能になるかも」
未来が小さく笑う。
「……お前」
俺は肩をすくめる。
「一人で軍隊だな」
未来は少しだけ照れたように視線を逸らした。
「……最後は俺か」
全員の視線が集まる。
正直、少しだけ緊張する。
だが――
「いくぞ」
スキルポイントを振る。
その瞬間。
今までよりも強い光が、体を包んだ。
「……っ」
空気が変わる。
スキルの拡張。
明らかに、段階が上がった感覚。
「出たな……」
俺はステータスを開く。
【ステータス】
名前:黒瀬悠真
年齢:22
種族:超人族
Lv:6
《日常生活 Lv6》
■テリトリー最大登録数:4
■テリトリー置換:解放済
【内訳スキル】
■テリトリー修復 Lv6
・同時登録数:4
・修復時間:2秒
・内装変更:完全解放
・外装変更:完全解放
・材質変更:完全解放
・複数同時建物修復:5
■環境維持 Lv6
・温度調整
・菌・ウイルス遮断
・電気・水道・ガス維持
・空気清浄
・身体能力アップ1.15倍
■商品生成 Lv6
■ネットショッピング Lv6(6回)
■召使い Lv5
・チャン爺
・メイド3体
■住民登録 Lv4
・最大12名
・スキル共有
■警備 Lv5
・5人召喚
・派遣2人
・監視50m
・会話機能解放
「……メイド?」
未来が首を傾げた。
その瞬間だった。
パッ――
光と共に、3人の女性が現れる。
「「「お呼びでしょうか、ご主人様」」」
「「は???」」
全員、完全にフリーズ。
「……え?」
「……何これ?」
未来が混乱する。
陸斗ですら言葉を失っている。
美咲だけがキラキラした目で言った。
「かわいい!!」
3人のメイドは一斉に頭を下げる。
「私達は召使いスキルにより召喚された存在です」
「命令には絶対服従いたします」
……さらっととんでもないこと言ってるな。
「いや、ちょっと待て」
俺もさすがに困惑する。
「急すぎるだろ……」
「……とりあえず」
俺は深呼吸する。
「名前つけるか」
「見分けつかないしな」
3人とも顔が同じ。
これは分かりにくい。
「じゃあ――」
少し考える。
「一葉、二葉、三葉でいくか」
「かしこまりました」
「識別用にリボンもつけるか」
・赤 → 一葉
・青 → 二葉
・黄 → 三葉
3人が一斉に頷く。
「了解いたしました」
「……なんか組織っぽくなってきたな」
俺が呟くと、チャン爺が一歩前に出る。
「では、私が統括いたしましょう」
「執事長として」
「頼む」
これで指揮系統は決まった。
「……で」
俺は全員を見る。
「強くなったな、確実に」
誰も否定しない。
それくらい、変化は大きい。
「なら――」
外へ視線を向ける。
遠くで、モンスターの気配。
「試すか」
静かに言う。
未来が頷く。
陸斗も。
浮田も。
「……はい」
「行こう」
扉に手をかける。
開ける。
外の空気が流れ込む。
そして――
俺は一歩踏み出した。
「――次は、俺達が狩る番だ」
前にも後書きに書きましたが、ステータスって書くの大変ですけど、ステータス出てきて確実に強くなる系の作品って好きなんですよね……。
だから自分の作品にも入れたくなってしまうんです。




