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世界崩壊後、日常生活スキルで俺が最強拠点を作ってしまった件  作者: ナマケモノ


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20/35

もう一度、家族を

第20話です。宜しくお願いします。

賑やかな声が、耳に残っていた。


 パーティはまだ続いている。


 料理の匂い、笑い声、軽い会話。


……なのに、俺の視線は自然と一箇所に向いていた。


 浮田だ。


 あいつだけが、輪の中に入らず、少し離れた場所に立っていた。


 酒も飲まず、料理にも手をつけず――ただ、俺達を見ている。


(……どうした)


 何を考えているのか分からない。


 でも、その目は――


 どこか、遠くを見ているようだった。






 ――天才外科医。


 それが、若い頃の浮田の評価だった。


 難手術を次々と成功させる。


 他の医者が匙を投げた患者ですら、助ける。


 成功率は、ほぼ100%。



 医療界では知らない者はいない存在だった。


 そして、その頃の浮田には――


 ちゃんと、家庭もあった。


「パパ、おかえり!」


 小さな娘が、玄関に駆け寄る。


 無邪気な笑顔。


 勢いよく抱きついてくる。


「おう、ただいま」


 疲れた体でも、自然と笑みがこぼれる。


 頭を軽く撫でる。


 その奥から、妻が顔を出す。


「今日も遅いんだから」


 少しだけ呆れた声。


 でも、その顔は優しい。


 食卓には温かい料理。


 3人で囲む時間。


 何気ない会話。


 それだけで、満たされていた。


 ……はずだった。


 だが、少しずつ歯車は狂い始める。


 仕事が増える。


 責任が増える。


 呼び出しも増える。


 帰る時間は、どんどん遅くなっていった。


「パパ、今日もお仕事?」


 娘が、不安そうに聞く。


 浮田は一瞬だけ詰まる。


 でも、すぐに答えた。


「……ああ」


「そっか……」


 その一言が、やけに軽かった。


 でも――その裏にある感情を、あの頃の浮田は見ようとしなかった。


 やがて、限界が来る。


「ねぇ」


 妻が真剣な顔で言う。


「家族より仕事が大事なの?」


 浮田は、即答した。


「命救ってんだぞ、俺は」


「分かってるよ!」


 妻も声を荒げる。


「でも、私達は!?」


 その言葉に、返せなかった。


 でも――謝らなかった。


 謝るべきだと、分かっていたのに。


 そして――終わり。


「……もう無理」


 静かな声だった。


 怒りも、悲しみも通り越した声。


 玄関。


 荷物を持つ妻。


 その隣に立つ娘。


「パパ……ばいばい……」


 小さな手が振られる。


 それが、最後だった。


 ――3年後。


 電話が鳴る。


 事故だった。


 交通事故。


 病院に運ばれた時には――もう。


 手遅れだった。


 医者なのに。


 人を救ってきたはずなのに。


 何もできなかった。 


(……俺が)


(あの時、帰っていれば)


(あの時、話を聞いていれば)


(あの時……)


 後悔だけが、積み重なる。


 答えは、どこにもないのに――







「……おい」


 俺の声で、浮田は現実に戻る。


 目の前には――


 笑っている連中。


 美咲がはしゃぎ。


 未来が少し照れながら笑い。


 陸斗が真面目に話し。


 チャン爺が料理を運び。


 俺が、それを見ている。


(……なんだこれ)


 こんな世界で。


 こんな状況で。


 こんな風に笑っている。


 おかしい。


 普通じゃない。


 でも――


(……家族みてぇだな)


 その言葉が、自然と浮かんだ。


 そして同時に。


(……こんな俺が)


(ここにいていいのか)


 罪悪感が、胸を刺す。


 でも――


 ほんの少しだけ。


(……悪くねぇ)


 そう思ってしまった。


 パーティが終わる頃には、


 美咲はテーブルで寝ていた。


 未来もソファでうたた寝。


 陸斗も壁にもたれて意識を落としている。


「……やれやれ」


 チャン爺が静かに動く。


 一人ずつ丁寧に運び、ベッドに寝かせる。


 まるで、本当の家族のように。


 気づけば――


 残っているのは俺と浮田だけだった。


「……ありがとな」


 浮田が言った。


「ん?」


「俺をここに入れてくれて」


 視線を逸らしながら。


 俺は少し照れた。


「……そう言ってもらえると助かる」


 正直な言葉だった。


 浮田は、小さく笑う。


「俺さ」


 一瞬、間を置く。


「……もう、家族なんて持つ資格ねぇと思ってた」


 その言葉に、何も返せなかった。


 でも――


「それでもいいだろ」


 俺は言った。


「ここにいる奴らは、そんなこと気にしない」 


 浮田が、少しだけ驚いた顔をする。


 そして――


「……そうかもな」


 そう呟いた。


 手を差し出す。


「これからよろしく」


「ああ」


 しっかり握る。


 翌朝。


目が覚めた時、昨日の空気とは違う静けさがあった。


 窓から差し込む光が、やけに柔らかい。


 ……少しだけ、安心している自分がいた。 


 リビングに行くと、既に全員揃っていた。


「おはようございます、悠真さん」


 陸斗がいつも通り丁寧に頭を下げる。


「おはよー!悠真お兄ちゃん!」


 美咲が元気よく飛びついてくる。


「……おはよう」


 未来は、少しだけ落ち着いた顔をしていた。


 昨日より、明らかに表情が柔らかい。


 完全に吹っ切れたわけじゃない。


 でも――前に進もうとしているのが分かる。


「……さて」


 俺は一度、全員を見渡した。


「拠点も強くしないといけないし、俺達自身も強くならないといけない」


「このままじゃ、次は守りきれないかもしれない」


 全員が、真剣な顔で頷く。


 その時だった。


「……1つ、いい?」


 未来が、少しだけ手を挙げる。


 いつもより、少し自信のある声。


「私のスキルで、気づいたことがあるの」


「気づいたこと?」


 俺が聞き返すと、未来はゆっくり頷いた。


「“動植物愛護”の中にね、“強化”って項目があるのは知ってるよね?」


「ああ、前に言ってたな」


「でも、その中って細かく分かれてるの」


 未来は目を閉じて、自分のステータスを確認するように集中する。


 そして、ゆっくりと言葉を紡ぐ。


「“植物材質変更”」


「……それ、どういう意味だ?」


 俺が聞くと、未来は少し困ったように笑った。


「最初、私も分からなかったの」


「だから、試したの」


「試した?」 


 未来は近くの植木に近づく。


 小さな観葉植物。


 普通の、何の変哲もない植物。


 それに手をかざす。 


「“強化”を選んで、“植物材質変更”を選択する」


 未来の目が、わずかに鋭くなる。


「そのあと、“材質指定”っていう項目が出るの」


「……指定?」


「うん。名前で指定できるみたい」


 そう言って、未来は小さく呟いた。 


「……タングステン」


 その瞬間。


 植物が――変わった。


 見た目はそのまま。


 だが、光沢が変わる。


 葉の表面が、金属のような鈍い輝きを帯びる。


 空気が、少しだけ重くなる感覚。


「……触ってみて」


 俺はゆっくり手を伸ばした。


 葉に触れる。


 ――痛い。


「……なんだこれ」


 思わず声が漏れる。


 明らかに植物の柔らかさじゃない。


 まるで金属。


 いや、それ以上に密度を感じる。 


「タングステンって、ドリルにも使われるくらい物凄く鋭利な金属なんだって……。」


「それを、そのまま再現してるみたい」


「……は?」


 全員が固まる。


 未来は少しだけ得意げに続ける。


「ダイヤモンドも試した」


「あと、ガラスとか鉄とかも」


「ただし、全部できるわけじゃないみたいで……」


「私のレベルとか理解度で、使える材質が増えていく感じ」


「なるほどな……」


 俺は少し考える。


 そして、すぐに結論に辿り着いた。


「……罠に使えるな」


 未来が、コクッと頷く。


「そう思ったの」


「見た目は植物のままだから、警戒されにくい」


「でも、触れたら――」


 その先は言わなくても分かった。


 俺は笑った。


「やるか」


 外に出る。


 病院の周囲。


 まだ完全に安全とは言えない場所だ。


「まずは配置だな」


 未来が周囲を見渡す。


「侵入されやすい場所を中心に……ここ、ここ、それとあっち」


 指示が的確だった。


 ただの思いつきじゃない。


 ちゃんと“守る前提”で考えている。


「陸斗、周囲の警戒頼む」


「はい」


 すぐに周囲に意識を向ける。


 その間に、未来が植物を操作していく。


 地面から植物が伸びる。


 蔦のように絡まり、柵のように配置される。


 そして――


「……変換」


 材質変更。 


 一瞬で、植物が変質する。


 見た目はそのまま。


 だが、その中身は完全に別物。


「これ、マジでヤバいな……」


 俺が呟く。


「まだあるよ」


 未来が言う。


「形も少し変えられる」


 次の瞬間。


 葉の先端が、細く鋭く変形する。


 まるで槍のように。


「……おいおい」


 誰かが小さく笑う。


 完全に“罠”だった。


「試すか」


 俺が言う。


 門を一時的に閉じる。


 逃げ場を制限する。


「陸斗」


「はい」


「一体、誘導してくれ」


「了解です」


 陸斗が外へ向けて光線を放つ。


 威嚇。


 音と光でモンスターを引き寄せる。


 少しして――


 現れた。


 Dランクのモンスター。


 犬型。


 こちらを見つけ、一直線に突っ込んでくる。


「来るぞ」 


 全員が構える。


 だが――俺は動かない。


 あえて見守る。


 モンスターは迷いなく突っ込む。


 そして――  


 植物に触れた瞬間。


 ズブッ―― 


 鈍い音。


 一瞬で体が貫かれる。


 勢いのまま、深く突き刺さる。


 もがく間もなく。


 絶命。


 静寂。


「……」


「……えぐ」


 陸斗が呟いた。


 正直、俺も同じ感想だ。 


 想像以上だった。


「これ……Cランクでもいけるかもしれないな」


 俺が言うと、未来は少し考える。


「単体なら、多分……でも数が多いと押し切られるかも」 


「なら、配置を増やすか」


「うん、それがいいと思う」


 完全に“防衛ライン”ができた。


 その時。


 チャン爺が、すっと動く。


 美咲の目を、そっと塞ぐ。 


「見てはいけません」


「えー!?なんでー!」


 美咲が暴れる。


「美咲も平気だもん!」


「ダメです」


 即答だった。


「みんなだけズルいー!!」 


 その声に、少しだけ空気が和らぐ。 


 ……だが。


 この罠の威力は、本物だった。


 俺は周囲を見渡す。


(これで……守れる可能性は上がったな)


 そう、確信した。 


 その時だった。


「……そういや」


 浮田が口を開く。


 全員が見る。


「俺もさ」


 一拍。


「その“超人族”ってやつになったみたいだ」


 静寂。


「……は?」


 俺は思わず言った。




なんだかんだ20話まで行きましたね。

ここまで見てくれている方、本当にありがとうございます。

引き続き宜しくお願いします。



それと、内装変更で大規模なお屋敷が前話でできましたが、あくまで装飾扱いで出来たものになるので何でも出せる訳ではありません。

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