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世界崩壊後、日常生活スキルで俺が最強拠点を作ってしまった件  作者: ナマケモノ


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19/167

帰る場所

第19話です。少し少ないですが宜しくお願いします。


車内は、静かだった。

 エンジン音だけが、一定のリズムで耳に残る。

 誰も、あの施設のことを口にしなかった。

 ……いや、できなかった、が正しいかもしれない。

 未来は助手席の窓を見ていた。

 流れていく景色を、ただぼんやりと。

 泣き疲れたのか、もう涙は出ていない。


 でも――


(……まだ、全部は終わってない)

 そんな空気が、どこかに残っていた。

 美咲も、珍しく静かだ。

 陸斗も、何も言わず前を見ている。

 チャン爺だけが、いつも通り落ち着いた表情で座っていた。

 ……けど、分かる。

 全員、同じことを考えてる。

 だから俺も、何も言わなかった。


 今は――それでいい。


 ◇


 やがて、病院が見えてきた。

 中継地点。

 俺達の、もう一つの拠点。

「……着いたな」

 車を止める。

 ドアを開けた瞬間、少しだけ空気が変わった気がした。

 あの重さが、ほんの少しだけ軽くなる。


 中へ入ると――


「……遅かったな」

 白衣姿の男が、壁にもたれていた。

 浮田亮。

 その周りには、ずらりと医療機器が並んでいる。

 消毒済みのベッド、点滴、手術器具、薬品類……。

 一目で分かる。

 全部、“すぐ使える状態”だ。

「怪我人は?」

 無駄な前置きはない。

 真っ直ぐ、本題。

 未来が一歩前に出る。


 少しだけ間を置いて――


「……いなかったわ」

 そう言った。

 嘘ではない。

 でも、全部でもない。


 それでも――


(……それでいい)

 俺はそう思った。

 浮田は、少しだけ目を細めた。

「……そうか」

 短く答える。

 それだけ。

「なら俺に用はねぇな」

 そう言って、軽く肩をすくめた。

 いつも通りのダルそうな口調。

 ……でも。

(……ほんとか?)

 俺は、その奥を見た気がした。

 視線を、横に向ける。


 そこにあるのは――医療機器の山。


 全部、無駄になるかもしれないのに。

 それでも準備してた。

 本気で。

 助けるつもりで。

(……すげぇな)

 思わず、笑いそうになった。

 俺だったら、そこまでできただろうか。

 ……いや、できない。

 少し前の俺なら、絶対にやらない。


 ◇


「……浮田」

 名前を呼ぶ。

「ん?」

「お前さ」

 言葉を選ぶ。

「ここ追い出されたら、行く場所ないよな」

「は?」

 怪訝そうな顔。

「……まぁ、そうだな」

「すまなかった」

 頭を軽く下げる。

「は?」

 今度は本気で驚いた顔。

「……なんだよ急に」


「だから――」


 一呼吸。

「よかったら、ここに住まないか?」

 沈黙。

 完全に、止まった。

「……は?」

 理解が追いついていない顔。

「お前のこと、信じてみたくなった」

 正直に言う。


「それに――医者も必要だ」


 浮田の目が、少しだけ細くなる。

「……お前、頭おかしいのか?」

「かもな」

 俺は肩をすくめた。

「でも、決めた」

 しっかりと目を見る。

「ここにいてくれ」

 数秒。

 浮田は黙った。


 そして――


「……まぁいいか」

 あっさりと言った。

「どうせ行く場所もねぇし」

 一歩近づく。

「ただな」

 指を立てる。

「年上に対して“お前”は気に入らねぇ」

「……善処する」

「しろ」

 軽く笑う。

 そして、小さく呟いた。

「……暇つぶしにはなりそうだ」

 その言葉に、全員の空気が少しだけ緩んだ。


 ◇


「じゃあ、さっそくだ」

 俺はスキルを発動する。

「住民登録」

 光が浮田を包む。

「うおっ!?」

 浮田が一歩下がる。

「何だこれ!?」

「俺のスキルだ」

「いや意味分かんねぇ」

「そのうち慣れる」

「慣れたくねぇよ」

「次」

「テリトリー置換」

 外へ出る。

 空間が歪む。


 そして――


 ドンッ!!

 コンビニと家の複合施設が、病院の隣に現れる。

「……は?」

 浮田が固まる。

「いや……は?」

「慣れろ」

「無理だろ」

「内装変更」

 次の瞬間。

 建物の中が一気に変わっていく。

 壁が変わる。

 床が変わる。

 家具が現れる。

「おいおいおいおい……」

 浮田が完全に引いている。


 ◇


 1階。

 広いリビング。

 大きなソファ。

 巨大テレビ。

 暖かい照明。

 誰でもくつろげる空間。

 2階。

 食堂。

 チャン爺専用のキッチン。

 料理が並べられるカウンター。

 3階。

 トレーニングルーム。

 器具、サンドバッグ。

 戦える場所。

 4階。

 個室。

 それぞれの部屋。

 未来の部屋には、植物と優しい色合い。

 5階。

 大浴場。

 露天風呂風の造り。

 湯気が立ち込める。

 6階。

 医療フロア。

 手術室、設備完備。

 浮田の領域。

 7階。

 娯楽。

 卓球、ゲーム、カラオケ。

 8階。

 展望スペース。

 夜景が見える場所。

「……病院どこいった?」

 浮田が真顔で言った。

「進化した」

「進化の方向性おかしいだろ」

 さらに外装も変更。

 白を基調とした近未来的な建物。

 ライトアップ。

 柵とゲート。

 ちょっとした庭。

「……ここ本当にさっきの病院か?」

「そうだ」

「頭おかしい」


 ◇


 その頃。

「坊ちゃま、準備が整いました」

 チャン爺の声。 


 振り向くと――


 料理が並んでいた。

 ローストビーフ。

 パスタ。

 サラダ。

 スイーツ。

 香りが広がる。

「おいしそう!!」

 美咲がはしゃぐ。

「こちらも準備完了です」

 陸斗が、真面目に飾り付けをしている。

 風船。

 飾り。

 手書きの“歓迎”の文字。

 ちょっと不格好だけど、いい。

「……なんだこれ」

 浮田が呟く。

 その視線は、俺達を見ていた。

 笑っている。

 楽しんでいる。

 こんな世界で。

 普通じゃない。


 でも――


「……乾杯だ」

 俺が言う。

 グラスを持つ。


「新しい仲間と――」


 一瞬、未来を見る。

 未来も、小さく笑っていた。

「……新しい家族に」

 グラスを掲げる。

「乾杯!」

「乾杯ー!!」

 声が重なる。

 笑い声が広がる。

 食事が始まる。

 会話が弾む。

 未来も、少しずつ話し始める。


 ぎこちないけど――確かに笑っていた。


 浮田も、気づけば混ざっていた。

 無意識に。

 自然に。

 ふと、浮田が手を止める。

 俺達を見る。

 少しだけ、目を細める。

(……なんだこの空気)

 そんな顔だった。


 そして――


 何かを思い出そうとする。

 過去を。

やっと明るい回になりました。

本当は明るい回ばっかり書いていたい時もあります。



読んで頂きありがとうございます!!


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― 新着の感想 ―
医療フロアは1Fかせめて2Fがいいかもね 動線や隔離、分離などを考慮。 生活空間が奥
んん?病院っていっぱい設備あってそれが良いと思ってたけど、縮小しちゃうの?しかも知識がない人が勝手に?
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