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【Monster編開始】世界崩壊後、日常生活スキルで俺が最強拠点を作ってしまった件  作者: ナマケモノ


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181/204

東京を守る約束

第181話です。宜しくお願い致します。


鎖に繋がれていた男。

 凛堂明日香に引きずられるようにして、地面に膝をついていたその男を見て、悠真は言葉を失った。

 佐々木金次郎。

 元SPМ特殊隊副隊長。

 第2の厄災が終結した時、突如として行方不明になっていた男だった。

 あの時から、消息は途絶えていた。

 どこへ行ったのか。

 生きているのか。

 それすら分からなかった人物が、今、東京にいる。

 しかも、凛堂に鎖で繋がれ、傷だらけの姿で。

 佐々木の服は破れ、身体の至る所に打撲や切り傷があった。

 口元からは血が流れ、片目は腫れ上がっている。

 ただの拘束ではない。

 明らかに、激しい戦闘の末に捕らえられた状態だった。

 悠真は信じられない思いで呟いた。

「何で、行方不明だった佐々木がこんな所に……」

 凛堂は鎖を片手で握ったまま、鼻を鳴らした。

「こいつらが東京を突如襲ってきたんだよ!」

 悠真は、周囲の光景へ視線を向ける。

 半壊した建物。

 くすぶる煙。

 焦げた匂い。

 瓦礫の散らばった道路。

 負傷者を運ぶ住民達。

 山梨から戻ってきたばかりの悠真達が見た東京は、まるで戦争でも起きた後のような姿になっていた。

「じゃあ、外の酷い有様は……」

 凛堂は、鋭い目で佐々木を見下ろした。

「全部、こいつらのせいだよ」

 悠真は眉をひそめる。

「こいつらという事は、佐々木以外にも襲ってきたやつがいるのか……?」

「あぁ」

 凛堂は短く答えた。

 そして、口角を上げる。

「全員、捕まえてやったがな!」

 その言葉に、悠真達は息を呑んだ。

 佐々木だけではない。

 複数の敵が、東京を襲った。

 そして凛堂達は、それを全員捕らえた。

 だが、目の前の東京の惨状を見る限り、その戦いがどれほど激しかったのかは想像に難くなかった。

 悠真は低い声で尋ねる。

「一体何があったんだ……?」

 凛堂は一度だけ、東京の街を見渡した。

 それから、悠真達へ向き直る。

「話すぜ。お前らがいなかった間、東京で何が起きたのかをな」


 ◇


 凛堂の言葉と共に、話は1日前へと遡った。

 悠真が山梨で薬付き矢を受け、《日常生活》を失った頃。

 東京では、突然の異変が起きていた。

 いくつかの建物が、何の前触れもなく崩れ落ちたのだ。

 春日の研究所も、その1つだった。

 春日の研究所は、以前、悠真がスキルで作った建物だった。

 頑丈に作られていたはずの建物が、突然、支えを失ったように崩れた。

 壁が割れ、天井が落ち、土煙が上がる。

 幸いにも、その時、研究所の中に人はいなかった。

 もし春日が中にいれば、無事では済まなかっただろう。

 春日は、崩れた研究所を見た瞬間、顔を青ざめさせた。

 そして、すぐに凛堂達の元へ走った。

「大変です!」

 息を切らしながら飛び込んできた春日を見て、凛堂が眉をひそめる。

「あぁ? 何かあったのか?」

 春日は焦った様子で叫ぶ。

「私の研究所が崩れ落ちて、外でもいくつか建物が崩れ落ちたみたいですっ!」

 凛堂の表情が変わった。

「……何だと?!」

 すぐに立ち上がる。

「すぐに向かうぞっ!」


 ◇


 凛堂達自衛隊は、すぐさま崩落現場へ向かった。

 現場に到着すると、すでに多くの警察官達が住民を誘導していた。

 土煙が残る道。

 崩れた建物の周囲。

 不安げに集まる住民達。

 その前に立ち、指示を飛ばしていたのは、東警察署の警視長である楢沢だった。

 楢沢は凛堂達の姿を見ると、すぐに声を上げる。

「自衛隊も来たか……!」

 凛堂は周囲を見ながら尋ねた。

「一体何があったんだ……?」

 楢沢は険しい表情で首を横に振る。

「それが理由が分からないんだ……」

 凛堂の眉間に皺が寄る。

「理由が分からないだと?」

「あぁ」

 楢沢は崩れた建物を見た。

「急にいくつかの建物が崩れ落ちたらしいんだ……」

「何だそれ……」

 凛堂は思わず呟く。

 地震ではない。

 モンスターの襲撃でもない。

 爆発音もなかった。

 それなのに、建物だけが突然崩れた。

 あまりにも不自然だった。

 楢沢は続ける。

「理由は分からない……」

 凛堂はすぐに気持ちを切り替えた。

 原因が分からないなら、まず確認すべきは被害だ。

「被害状況は……?」

 楢沢は資料を持っていた警察官に視線を向け、それから答える。

「今の所何人か軽傷者は居るが、重傷者や死者は確認されていない……」

 凛堂は少しだけ息を吐いた。

「……そうか、良かったぜっ」

 最悪の事態は避けられた。

 だが、安心できる状況ではない。

 楢沢もそれを分かっていた。

「だが、またいつ何処かの建物が崩れ落ちるか分からない……」

 楢沢は周囲の住民達を見る。

「だから、住民は全員避難シェルターに誘導しているんだ……」

 東京の各地には、避難シェルターが設置されていた。

 モンスター襲撃や災害など、緊急事態から住民を守るための場所。

 数日分の水や食料、医療用品も備蓄されている。

 悠真が東京を整えていく中で、万が一に備えて作られたものだった。

 凛堂は、その言葉を聞きながら拳を握る。

 悠真に東京を任された。

 あいつがいない時に何かあれば、自分達が守る。

 そう決めていた。

 凛堂は楢沢へ力強く言った。

「よし、分かった」

 そして、自衛隊員達へ振り返る。

「俺達も手伝うぜ!」


 ◇


 そこから、自衛隊と警察官達による避難誘導が始まった。

 崩れた建物の周辺から住民を離れさせる。

 危険区域へ入ろうとする者を止める。

 老人や子供を優先的にシェルターへ送る。

 不安で泣き出す子供を警察官が宥め、自衛隊員が荷物を運ぶ。

 住民達も混乱しながら、それでも指示に従って動いていた。

 そんな避難誘導の最中だった。

 1人の住民が、凛堂の元へ駆け寄ってきた。

「あのぉ……気づいた事があるんですが良いですか?」

 凛堂はその住民を見る。

「……どうした?」

 住民は息を整えながら言った。

「私は普段建設業をしています」

 凛堂は首を傾げる。

「建設業?」

「はい」

 住民は崩れた建物の方を見る。

「それで気づいたのですが……この壊れた建物のほとんどが黒瀬都知事の力で建設された建物なんです……」

 凛堂の目が細くなる。

「ほぉ……大将が作った建物が……」

 そこへ門脇誠司も近づいてきた。

 門脇は住民へ続きを促すように視線を向ける。

 住民は少し緊張しながら説明を続けた。

「はい、黒瀬都知事は私達、建設業者の仕事を取らないようにとすぐに必要な建物だけを予め建設しておりました……」

 それは、悠真の方針だった。

 スキルで何もかも作ることはできる。

 だが、それでは住民達の仕事がなくなる。

 人が自分達の手で街を作る機会も失われる。

 だから悠真は、すぐに必要な建物だけをスキルで先に作った。

 そして、その後は人の手で作り直していく形を取っていた。

 住民は続ける。

「そして、その建物を参考に私達建設業者が隣の土地に同じ様に建物を作り、解体業者に依頼して解体してもらうという流れになっていました」

 門脇はすぐに理解したように頷く。

「成る程な……」

 そして、整理するように口にした。

「この東京の街がすぐに出来ていたのは、悠真が先にスキルで作っていた」

 門脇は崩れた建物と、その周囲に建ち始めていた建物を見比べる。

「そして、その街を少しずつ建設業者に作らせてスライドさせて行くといった形を取っていたんだな……!」

 住民は頷く。

 門脇はさらに続けた。

「そうする事で、建物を使っている人達は建設中、どこかに移動せずに済むといった所だな……!」

「はい、その通りです」

 住民は少しだけ視線を落とす。

「壊れた建物を全てを見た訳ではないので分かりませんが、私が避難しようと歩いている時に見た壊れていた建物は全て、私達が建設し直す予定の建物ばかりでした……」

 門脇の表情がさらに険しくなる。

「……成る程、という事は」

 その途中で、凛堂が口を挟んだ。

「あ~、難しい事はよく分からん」

 凛堂は頭をかきながら言う。

「つまり、何故か大将が作った建物だけ壊れたんだよな……」

 そして、門脇を見る。

「それがどうしたってんだよぉ」

 門脇は少しだけ呆れたように息を吐く。

 だが、すぐに真剣な声で説明した。

「つまりだな、悠真のスキルで作った建物だけが壊れたという事は、悠真の身にもしかしたら何かあったのかもしれないという事だ……」

 凛堂の表情が一変した。

「何だと?!」

 その声に周囲の自衛隊員達も振り向く。

「大将の身に何かが……?!」

 凛堂は今すぐにでも飛び出しそうな顔をした。

 悠真の身に何かがあった。

 そう聞いて、黙っていられる性格ではない。

 門脇もそれを分かった上で問いかけた。

「どうする、みんなで何かあったか見に行くか……?」

 凛堂は頭を掻きむしる。

「うー………」

 歯を食いしばり、唸る。

 行きたい。

 今すぐ悠真の元へ向かいたい。

 大将に何かあったのなら、助けに行きたい。

 だが。

 凛堂は、ふと周囲を見た。

 不安げに避難する住民達。

 子供を抱える母親。

 荷物を背負って歩く老人。

 指示を出し続ける警察官。

 崩れた建物。

 そして、まだ何が起きるか分からない東京。

 悠真に頼まれた。

 東京を任された。

 自分達がここを守るのだと。

 凛堂は、低く息を吐いた。

「いや……」

 門脇が凛堂を見る。

 凛堂は拳を握りしめた。

「俺達は東京を守るように頼まれた……!」

 そして、迷いを振り切るように言う。

「だから、避難誘導の続きをしよう」

 門脇は、一瞬だけ目を丸くした。

 それから、静かに頷く。

「そうだな……」

 門脇は少しだけ口元を緩めた。

「分かった」


 ◇


 凛堂はすぐに再び住民誘導へ向かおうとする。

 その背中を見ながら、門脇は心の中で思っていた。

 珍しいな……

 あの野生的な考えで、自分のやりたい事、思った事をそのまま実行する凛堂が、考えて行動しているなんて……

 明日は天変地異でも起きるのか……?

 門脇は、思わずふふっと小さく笑った。

 それに気づいた凛堂が振り返る。

「何だよ……」

 不満そうに眉を寄せる。

「何が可笑しいんだよ……?」

 門脇は首を横に振った。

「いや……何でもない」

 そして、少しだけ真面目な顔に戻る。

「早く住民を避難させよう……」

 凛堂は一瞬だけ怪訝そうにしたが、すぐに鼻を鳴らす。

「あったりめぇだ!!」


 ◇


 自衛隊と警察官達は、その後も協力して避難誘導を続けた。

 東京の各地へ散らばり、崩落の危険がある場所から住民を離れさせる。

 シェルターへ向かう道を確保し、怪我人を運ぶ。

 不安がる住民へ、警察官が何度も声をかける。

 自衛隊員は、崩れかけた壁の近くへ近づこうとする者を止めた。

 楢沢は全体の状況を確認しながら、避難場所の人数を調整していく。

 門脇は警備の配置を考え、凛堂は現場を駆け回った。

 悠真はいない。

 だが、東京は止まらなかった。

 悠真が作った仕組み。

 悠真が信じた人達。

 その全員が、自分にできることをしていた。

 避難誘導は夜まで続いた。

 日が落ち、東京の街に暗さが広がっても、誘導は止まらなかった。

 そして、ようやく大きな区域の避難が完了した頃、凛堂は深く息を吐いた。

「はぁ……」

 額の汗を拭う。

「何とか、終わったぜっ……」

 門脇も少し疲れた顔で頷いた。

「数日分の備蓄もシェルターに置いてあるから、暫く何日間かは住民にはシェルターの中に居てもらおう」

 凛堂は頷く。

「おぅ、そうだな……」

 東京は、何とか持ちこたえた。

 死者も重傷者も確認されていない。

 建物の崩落はあったが、住民の避難は終えた。

 悠真がいなくても。

 悠真のスキルに異変があっても。

 東京の人々は、自分達で動き、被害を最小限に抑えた。

 その夜、凛堂達は警戒態勢を強めた。

 いつ悠真が戻ってくるか分からない。

 そして、いつまた別の異変が起きるかも分からない。

 不安を抱えたまま、東京は夜を越えた。


 ◇


 そして、次の日の朝。

 ようやく一息つけるかもしれないと思ったその時。

 新たな脅威が、東京へ襲いかかった。

 先頭に立っていたのは、佐々木金次郎。

 第2の厄災終結時から行方不明になっていた、元SPМ特殊隊副隊長。

 その佐々木が、約100名の超人族軍団を率いて、東京へ攻め込んできたのだった。



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