表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
206/208

第206話 潤んだ瞳

「ふぅ……やっぱり、くなぁ」

「リッタ、おわりいる?」

「ありがと、もらおうかな」


 ネリネのテラスでうみながめながらおちゃすするのは、最高さいこうだね。

 これがまさに、仕事しごとのあとの一杯いっぱいってやつなのかも?


 よくえばゆったりお風呂ふろはいって、フカフカのベッドにもぐりこみたいところだけど。

 さすがにいまは、そんなことやってる場合ばあいじゃないからね。


まえからおもっていたのですけど、どうやったらこんな状況じょうきょうになるのですか?」

なにへんなところでもあったかな? シルビアさん」

「この状況じょうきょう違和感いわかんおぼえてない時点じてんで、へんよ!!」


 そうった彼女かのじょ視線しせんは、テラスのテーブルにこしろしているプルウェアさんたちと、対面たいめんすわってる人物じんぶつそそがれてる。


 と、そんなシルビアさんを一瞥いちべつしたその人物じんぶつ―――ライラックさんが、おちゃすすったあとくちひらきました。


たしかに、この状況じょうきょう異常いじょうんで差支さしつかえがないであろうな」


 その口調くちょう声音こわねは、わたしってるライラックさんのものとは全然ぜんぜん別物べつものだね。

 つまり、いまここにいるかれのことはレヴィアタンってんだほうがいいかもしれません。


「うへぇ。なんか、へんデス。はやかれからだかえしたらどうなのデスか?」

「ふん。貴様きさまらのいなりになるわけがないであろう?」

けた分際ぶんざいでよくもそんなくちをきけますね。消滅しょうめつしたいのデスか? だったらいますぐにでも―――」

「ほらほら、二人ふたりとも。ここでわたしたちがあばれてしまったら、リグレッタにわるいデスよ?」


 プルちゃんとプルねえは、ライラックさんのからだをレヴィアタンがあやつってることがゆるせないみたいだね。

 プルばあ冷静れいせいでよかったよ。


 多分たぶん、プルばあにもおもうところはあるはずだから。

 すくなくとも、はなしはできそうな空気くうきでよか―――。


「やるならあとにしましょう。そのほうが、ゆっくりとしつけることができるはずデスからね」


 全然ぜんぜんよくないよっ!

 かなりおこってるじゃん。


 笑顔えがおなのに、わらっていもん。

 まぁ、事情じじょう事情じじょうだから理解りかいはできるけど。


 このまま喧嘩けんか再開さいかいしちゃったら、せっかくこうやってあつまってもらったのが無駄むだになっちゃうよ。


「こ、こほん。えっと、喧嘩けんかはやめてほしいかな。それよりも、はなしをしたいとおもってるんだけど、いい?」

「あなたがそううのであれば、仕方しかたがないデスね」

「ふん……」


 まだまだわだかまりがえてなくなったってわけじゃないみたいだけど、みみしてくれるみたい。


 いまのレヴィアタンは、さっきまでみたいにあばれることはできない状態じょうたいだから、迂闊うかつ喧嘩けんかはしないでしょう。


 というのも、レヴィアタンがんだっていう沢山たくさんたましいを、わたし没収ぼっしゅうしたからね。


 いまかれにできるのは精々(せいぜい)、このからすことくらいでしょう。

 げられちゃったらはなしもできないから、しっかりと見張みはっておかなくちゃ。


「それで、わざわざわたしらえてまではなしたいこととは、なんなのだ?」

「うん。まずはね、おたがいにおもってることをはなしたほうがいいんじゃないかなっておもってさ。レヴィアタンさん。あなたはなにのぞみなの?」

蔓延はびこおろかな人間にんげんさばきをくだすことだ」

「そのために、あらしとか地震じしんとか大波おおなみこしたんだね。おまけに、魔物まものたちまでれてきちゃってさ。大変たいへんだったんだよ?」


 そのせいで、ソレイユさんと盗賊団とうぞくだんのみんなは、いまだにけがにん治療ちりょう街中まちじゅうけずりまわっているのです。


 はなしわったら、レヴィアタンさんにも手伝てつだってもらわなくちゃだよ。


「ちなみに、さばきをくだしたあとって、どうなることを想定そうていしてたのかな?」

さばきをくだしたあとだと?」

「うん。だって、レヴィアタンさんがったじゃん。おろかな人間にんげんにって。ってことは、おろかじゃない人間にんげんにはさばきがくだらないってわけで、そのあとつづいてくハズだよね?」

「えっと、リグレッタ? おそらくコイツは、すべての人間にんげんおろかだとおもっているのデスよ」

すべての人間にんげんが?」


 プルねえったことはただしかったのか、レヴィアタンがおおきく、そしてふかうなずいたよ。


 それにしても、すべてのひとおろかかぁ。


わたしはそうはおもわないけどなぁ」

「そうおもうのであるならば、貴様きさまおろかだということだ」

「そっか、わたしおろかなのかぁ」

「リッタはおろかじゃないとおもう!」

「えへへ~。ハナちゃんがそういうなら、わたしおろかじゃないかもねぇ」

「そうだよっ!」

貴様きさまら、愚弄ぐろうするつもりか!!」

愚弄ぐろうって、べつにそんなつもりはないよ」

腹立はらだたしい。そもそも、貴様きさまもそこの駄神だしんどもも、かんがえがりぬのだ! 人間にんげんなんぞにたぶらかされおって。そのようなことだから、おろかだとっているのだ!」

「べ、べ、べつわたしは、たぶらかされてなどいないのデス!!」


 プルねえかりやすいなぁ。

 まさか、ライラックさんのくちからそんなことをわれるなんて、おもってもなかったはずだよね。


 中身なかみちがうとはいえ、きっとダメージはおおきいはずだよ。

 っていうか、ライラックさんの意識いしきはあるのかな?

 もしかれてたら、ずかしいだろうなぁ。


 なんか、プルねえ可哀かわいそうになってきたよ。

 それが理由りゆうってわけじゃないけど、ここは1つ、はなしらしてあげましょう。


かんがえがりない、かぁ。なるほどね。わたしとレヴィアタンさんのかんがかたにあるズレは、きっとそこなんだね」

なんはなしだ?」

わたしかんがえるおろかなひとってさ、まったなにかんがえてないひとのことなんだよね。でも、レヴィアタンさんは、ちょっとかんがえるだけじゃりないっておもってるんでしょ?」

たりまえだ!!」

「そっか。でもそうなら、レヴィアタンさんもかんがえがりないんじゃない?」


 こしかけてるレヴィアタンさんのかおが、いかりに

 まってく。

 でも、ここでやめるわけにはいかないかな。


「だって、すべての人間にんげんおろかなんだって、よくかんがえもせずにめつけちゃってるじゃん」

かんがえていないだと!? 貴様きさま、やはりわたし愚弄ぐろうするつもりだな!!」

「そんなにいうなら、人間にんげんおろかだっていう根拠こんきょがあるの?」

「そのようなもの、げればキリがないほど無数むすう存在そんざいする。貴様きさまらにかかわるところでえば、まさにこのおとここそが、おろかな人間にんげん代表だいひょうとでもいえる存在そんざいであろう!」


 そうったレヴィアタンは、そのがって自身じしんゆびさした。

 つまり、ライラックさんのことかな?


「ライラックさんのどこがおろかなの?」

「このおとこおろかにも、永遠えいえんいのちなどという世迷言よまいごとしんじたのだ。その結果けっか、こうしてわたしからだられている。これほど無様ぶざまおろかなおとこは、そうそうることはできないぞ」


 かれ言葉ことばさき反応はんのうをしめしたのは、プルねえだよ。

 よっぽどおこってるのかな。

 こぶしにぎりしめてふるえてる。


 となりでプルちゃんがわらいをこらえてるのは、だまってておいてあげよう。


「なるほどね」

 ってわたしくちにした途端とたん、プルねえするど視線しせんんできました。


 ちょっといてほしいな。

 ちゃんとフォローするからさ。


「つまり、レヴィアタンさんはそうやって、いろんな人間にんげんためしてきたってことなんだね」

「そのとおりだ!」

「それはかったよ。でも、それってたんに、ライラックさんが失敗しっぱいしちゃったってだけだよね」

失敗しっぱいしただけ? 貴様きさまはまだ理解りかいできていないようだな。その結果けっか―――」

「ライラックさんはんじゃうかもしれなかった。ってことでしょ? かるよ。おろかなことを享受きょうじゅするひとは、いのちとしやすいよね」


 やっぱり、結局けっきょくはそこにきつくんだ。


 レヴィアタンさんとはなしてて、プルウェアさんたちからいてた印象いんしょう全然ぜんぜんちがうっておもってたけど。

 その理由りゆうがちょっとわかったがするよ。


 嫉妬しっとぶか魔神まじんレヴィアタンは、ライラックさんをだましてイゼルのまちうみしずめた。


 それはつまり、ライラックさんたち肩入かたいれするプルウェアさんのことが信用しんようできずに、さばきとしょうしてみんなためした。

 ってことなんじゃないかな?


 くにごと全部ぜんぶためすってのは、規模きぼおおきすぎるがするけどね。


 もしかしたら、いまわたしかれためされてるのかもしれないよね。


「ふふふ。やっぱり、はなしいてよかったかな」

「リグレッタ? それは一体いったいどういうつもりなのデス!? まさか、いまはなしいて、コイツとかりえるなどとかんがえてはいないデスよね!?」

かりえれば、そりゃそれが一番いちばんいいんだけどね。できないならできないで、かんがえるべきことがあるとおもうよ」

かんがえるべきこと? 正直しょうじきアタシは、コイツとはなしをしても、意味いみなんかないとおもってるデス!」

意味いみならあるよ」


 そもそも、わたしがこのはないのもうけたかった理由りゆう

 それは、プルウェアさんとライラックさんの喧嘩けんか仲裁ちゅうさいすることでも、かりうためでもないのです。


わたしはね、わたしなにができるのかを判断はんだんするために、このはないをしたかったんだ」


 そうしてわたしは、ついいましがたたどりいたこたえを、そのにいたみんなはなしました。


 まぁ、すこまえからかんがえてはいたことなんだけどね。


 これで、とうさんやかあさんからたくされてたことも、たせるかもしれません。


 おものこすことがあるとすれば、それは……。


 そんなおもいをめてハナちゃんをわたしは、彼女かのじょうるんだひとみにしたのでした。

面白いと思ったらいいねとブックマークをお願いします。

更新の励みになります!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ