第202話 感動の再会
海から出たら、オーデュ・スルスで闘ってるハナちゃん達を助けて、プルウェアさんたちとライラックさんを探しに行こう。
そう思ってたんだけどね。
遠巻きに見える街の状況は思ってた以上にマズかったんだよ。
「我が名はレヴィアタン。愚かな人間を裁く神である」
「あれがレヴィアタンなの!?」
空から響いてくる声の言ってることがホントだとしたら、街の上空にいる3つ首の龍がレヴィアタンみたいです。
「空に向かって宣言してるように見えたけど、誰と話してるのかな?」
気になることはあるけど、今はとにかくオーデュ・スルスに近づくべきだよね。
いつまでも、海面でぷかぷか浮いてる場合じゃないんだよっ!
「プル子ちゃん! 私は先に街に向かってるから、ホリー君たちを陸まで連れて行ってあげてくれる?」
「分かったのデス!」
そう言ったプル子ちゃんは、海面から顔だけ出してる氷の巨人の方に向かっていったよ。
さてと。
それじゃあ私も行こうかな。
泳いで行くよりは、風の道で向かった方が速いはず。
私がそう思った矢先、海面が急に泡立ち始めたんだよ!
激しい飛沫が、オーデュ・スルスの上空に向かって飛んでいく。
慌てて風の道を展開しなかったら、きっと怪我しちゃってたかも。
なんて考えてるうちに大聖堂前の広場に降り立った私は、そこでソレイユさんを見つけました。
けが人や子供たちに囲まれてる彼女は、震えながらも空を見上げてる。
「ソレイユさん!!」
「っ!? リ、リグレッタ様!? 戻られたのですね!」
「うん! それで、何が起きてるの!?」
「それが、レヴィアタンと名乗るあの龍が突然現れ、大聖堂を建物ごと上空に吹き飛ばしてしまったのです!」
「大聖堂を? ってぇ!! 気づかなかった!! 大聖堂がなくなってるじゃん!!」
風の道で飛んできたし、空にばっかり注意を向けてたから、気づかなかったよ。
「それで、けが人もみんな広場に出てるんだね。逃げ遅れた人はいない?」
「それが、ハナちゃんが大聖堂から出てきたところを見ていなくて」
「なんですとぉ!?」
ハナちゃんが空に打ち上げられてるってこと!?
無事だよねっ!?
ほっ。
よく見たら、レヴィアタンより上にハナちゃんがいるみたいです。
魂だけで詳細は見えないけど、俊敏に飛び回ってるみたいだから、無事ではあるみたい。
「大丈夫そうだね」
「そ、そうなのでしょうか」
「ん? 何か気になることでもあるの?」
「あれ……」
そう告げたソレイユさんや、周りにいた人たちの怯えきった目が、1か所に注がれてます。
彼女たちが怯えてるのは、レヴィアタンがあの巨大な尻尾を振り上げてるからみたいだね。
確かに、そのまま振り下ろされたら、街に大波がくることくらい誰でも想像できるでしょう。
でも、私は知っているのです。
海には彼女がいることを。
おまけに、空にはハナちゃんがいて、街には私がいるんだよね。
「ソレイユさん、安心して。私達がなんとかするから。代わりに、街の人をこの広場に集めてもらってもいい? できれば、皆が1か所に集まってる方が助けやすいからさ」
「……わ、分かりました。ですが、本当に大丈夫なのですか? その、お二人だけで……」
「ふふふ。ソレイユさん。じつはね、私とハナちゃんだけじゃないんだよ」
「え?」
「まぁ、すぐにわかると思うから、楽しみにしててよ!」
こんな状況で何を楽しめと!?
とでも言いたげな顔をしたソレイユさんを置いて、私は近くの建物の屋根に上りました。
「えっと、ネリネはどこに……あ、いた!」
オーデュスルスに並んでる建物よりも背の高い家が動いてたら、目立つよね。
おかげで、すぐにネリネを見つけることができたよ。
ネリネに行けば、きっとみんなもいるはずだから。
色々と手伝って貰えるはず。
そう思って探したんだけど、思いもよらない形で功を奏することになるのです。
「えっ!? レヴィアタンって、炎も吐けるの!?」
頭上にいたレヴィアタンの首の1本が、口元から炎をチラつかせ始めてるのです。
「サラマンダー! あの炎、任せるよ!!」
風に声を載せて指示を出した私は、視界の端で動くレヴィアタンの尻尾を目にしました。
上空には真っ黒な雷雲が発生し始めてるし。
どうやら、悠長にしてる時間はないみたいです。
間違いないね。
レヴィアタンはオーデュ・スルスの街を完全に壊すつもりなんだ。
下手したら、古代の都市イゼルみたいに、この街も沈められちゃうかも。
そんなこと、させないけどね!
オーデュスルスは海の傍にあるから、ちょっとてこずりそうだけど。
ノームの力を使えば、街の崩壊は防げるはず!
あとは、大波さえなんとかできれば―――。
なんて、それは心配のし過ぎだよね?
だって、彼女は水の主神なんだし。
私は私にできることに専念しなくちゃ。
そう思った時、レヴィアタンの猛攻が始まったのです。
強烈な地震と見上げるような大波、そして降り注ぐ業火。
地震と業火については、ノームの力とサラマンダーの力でなんとかできたよ。
大波の方も、プル姉が操る氷の巨人が止めてくれたのです。
「神の名を騙る不届き者よ。水の主神プルウェアの名において、裁きを下さん!!」
彼女がそう言って姿を現した瞬間、当然、オーデュスルスの街が騒めいたのは言うまでもないよね。
さてと。
これでレヴィアタンが諦める訳もないし。
ここからが本番です。
きっと、ハナちゃんも私たちに気づいてくれたはずだからね。
気を引き締めていきましょう。
それにしても、どうしたらいいのかな?
レヴィアタンがここに現れたってっことはさ、ライラックさんも一緒にいた可能性が高い気がするんだけど。
もしかして……頭上にいるレヴィアタンって。
それがホントなら、プルウェアさんたちとライラックさんの“感動の再会”になるんだよね?
その辺は、あとでじっくりと聞けたらいいな。
それこそ、お茶でも飲みながらね。
面白いと思ったらいいねとブックマークをお願いします。
更新の励みになります!!