20、事件裏 モニカ編
前回のあらすじ
侯爵はフランシスの手の上で転がされ、捕まる
不思議に思ったのではないか、私がブリジットと共に王宮に向かうことについて。
え、お前は誰だって?私はモニカ。いつもは語尾を伸ばしているけど、真面目な時はちゃんと話せますからね。
私も最初何故王宮に行くのか不思議に思っていた。そのまま当日になってしまったのだ。
王宮では、侯爵様の影と偽ブリジットを捕らえたあと、旦那様の部下ーーと思われる方が、ある一室に私を案内してくれた。のんびり待っていた私だったけど、次に旦那様の部下の方が来られた時、ある女性も一緒だった。
思い出せないけれど、私の知っている人である気がする。私が思い出せない記憶で、私を知っている人といえば。
「……もしかして、お母様……?」
「モニカ?モニカなのね!?」
私の髪は母と同じような栗毛であった。そして驚くほど顔が似ていた。お母様はすぐさま私を抱きしめる。
それを見ていた部下様は私たちの抱擁を止めることはせず、そのままお話をしてくれた。
公爵家で雇われた歳は確か13歳の頃。私は大雨の日に何故か公爵家の裏口で倒れていたのを使用人が見つけてくれたようだ。ようだ、と言うのは私も拾われる前の記憶がないから分からないのである。
実はその時倒れていたのは、私だけではなく母もだったらしい。母はポスフォード家の使用人として仕えていたが、ある日侯爵にーーそして私が生まれてしまった。
周囲の目に怯えたお母様は、使用人を辞め、街に出て食堂の配膳の仕事を見つけて細々と暮らしていた。そこから12年は平和な時間だったらしい。
だが私が13歳になる数ヶ月前に、侯爵が何を思ったのかは知らないが、自身の手の者を使って彼女たちを屋敷に連れ戻そうとするようになったそうだ。
その追っ手から逃げようとした母だったが、運悪く逃げる際に追っ手に怪我をさせられてしまった。
その日は大雨で、流れた血は跡を残すことはなかったが、体力の消耗が激しかったようだ。遠くまで歩くことができず、丁度侯爵家の反対側にある旦那様の屋敷の前で力尽き倒れていたようだ。
「その時、フランシス様にご提案頂いたのよ。モニカはこの家で使用人として雇い、私は王宮で雇う、と」
いきなり親子二人を同じ場所で雇えば、侯爵に怪しまれるかもしれない。しかし、別々であれば目をそらすことができる可能性が高い、と。
だからお母様は王宮の調理場で下働きを行っていたそうだ。これも旦那様の配慮があり、目につきにくい仕事場にして頂いたらしい。
その間私は1週間ほど高熱を出して寝込んでいたそう。その間に母は王宮に向かったそうだ。
「たまにフランシス様からあなたの様子を聞いていたの。元気でよかったわ……」
記憶は無くてもなんと無く、母親だと言うことは分かった。何故なら抱擁されながら、私の目からは涙が出ていたからだ。
「モニカさんのお母様のご協力により、ポスフォード侯爵の罪が明るみになりました。ご協力を感謝いたします」
「いいえ、娘と私を保護して頂いた恩を……こちらこそ本当にありがとうございました」
そのあと私たちは語り合った。今日は王宮の客間で休んで帰るように、と何故か陛下からもお話があったようだった。私も同様に陛下から、母の部屋に泊まっていいと特別許可が出た。これほど嬉しいことはない。
次の日、私は旦那様の屋敷にブリジットと帰ることにした。最初は母も悲しそうな顔をしていたのだけれど、私がしっかり自立できていることに喜んでくれた。
そして今私はブリジットと馬車に乗っている。
「モニカ……王宮に居なくてよかったの?」
隣にいるブリジットが伏せ目で聞いてきた。ある程度事情を聞いているみたいだ。
「うん、大丈夫。私の仕事場はカノヴァス公爵家の屋敷だもの!抜けるわけにはいかないわ」
それにブリジットたちとも離れたくないしー!といつもの通り話しかけると、ブリジットは少し涙ぐみながら笑ってくれた。
あまり感情を出さないブリジットだったけど、最近は少し私たちに心を許してくれている気がして嬉しく思っていたのは内緒。
第二章終了いたしました!
三章からは恋愛要素を入れていく予定です。
次回は、明日投稿します。登場人物紹介を挟む予定です。




