9.5 その後
俺とエンドラしかいなくなった応接室で、俺達はのんびりと過ごす。
「それにしても、未だにあの子が選んだのがあやつだとは信じられんのじゃが⋯⋯」
幾分幼くなった姿で、エンドラは口を開く。
「なんだ? 翔太じゃ不満か?」
「あれは⋯⋯ただの人じゃろ? 魔法適性がなければ、魔法耐性もないこの世界の常人よりも遥かに非力な存在じゃ」
「げっ⋯⋯バレてるのか」
まさかこうも速くバレるとは。もしかして翔太が何かやらかしたのか?
「なあに、ちっとばかし殴っただけじゃ。じろじろ見てきてイラついたからの」
「うわあ⋯⋯」
出会い頭で殴ったのは聞いていたが、そこで翔太の身体調べたのか。これは同情しちまうな。
「⋯⋯それで、特質した個性もないんじゃろ?」
エンドラの表情は、救いを求めているような感じがした。⋯⋯だが、これだけは正直に言わなければいけないだろう。
「ああ、あいつは何も持ってなかったただの人間だぞ」
あえて過去形にしておいた。翔太のことを一方的に下げるのも俺の流儀に沿わないからな。
「そうか⋯⋯あの子が悪質な詐欺にでも引っかかったんじゃないか気が気でないんじゃが、今は保留にしておくか」
「おう。でも、お前みたいな反応が普通だと思うぜ」
一応エンドラのこともフォローしておこう。給料を下げられても困るし⋯⋯。
「じゃろうな。先日の式典でも大変だったのではないか?」
「う〜ん⋯⋯そうだな。疑念が湧く前にコルトに一騎打ちしてもらって何とかしたんだ」
「なるほど」
いやー、あの時は焦ったなー。当日になって急にギムギスが忠言してきたんだからな。
「ちなみに、この姿はいつになったら戻るんじゃ? 服もサイズが合わなくて困っとるんじゃが⋯⋯」
「ん? ⋯⋯24時間はそのままだな」
俺の返答を聞いた途端、エンドラが目を丸くする。
「半日じゃと!? これからエリシャと会談の予定なんじゃが!?」
それならそうと先に言ってくれよ。というツッコミはあえて喉の奥に飲み込み。
「それ、海龍についてだろ? 俺にも聞かせてくれよ」
俺は今日の会合の本題に入ることにした。
微睡みの中から、目を開ける。
(あれ? ここはどこだっけ?)
枕や背中の感触が明らかにいつも俺が寝ている物とは違う。⋯⋯なんかこう、無駄に高級というか⋯⋯。
あと、いい匂いがする。俺が普段嗅ぐことのない香りだ。
「うーん」
唸りながら、寝返りを打つ。
「お、やっと起きたか」
⋯⋯⋯⋯⋯⋯。
「⋯⋯⋯⋯⋯⋯」
見慣れた顔が目の前にあった。こちらの瞳をじっと覗き込んできている。
「うわあ! な、何してるんだよエリシャ!?」
「いやなに、エンドラとの会談が無くなって暇だったのでな。ちょっと翔太の顔でも覗いてみようかと思って」
顔が熱い。心臓がバクバクと鳴っている。
⋯⋯いや、落ち着け、冷静になれ! 今俺はエリシャの普段使っているベッドの上で、エリシャと一緒に寝ていた(?)
⋯⋯耳まで赤くなっているのを感じる。
余計ダメじゃねえか!! と、1人でツッコミを入れる。
「え、ええええとっとと、お、俺はなんでここにいるんだ?!」
「翔太が妾の部屋に来たからじゃろ?」
「そうじゃなくて! なんで俺はここで寝てるのかってこと!」
「ああ、それか⋯⋯」と言ってエリシャは答える。⋯⋯テンパっている俺とは対照的に、彼女は至って冷静だ。
「足つぼマッサージをした後の、あまりの痛みに悶絶しているお前を見かねて、膝枕をしてやったところでスヤスヤ眠り始めたのでな」
そうだった! あの時のことは意識が朦朧としていてよく覚えてないけど、多分そんな感じだったはずだ。
「い、今何時?!」
「ふむ⋯⋯魔王城だと恐らく4時ぐらいじゃな」
「そ、そうなのか! 俺そろそろ魔王城に戻らないと! 今日はありがと、じゃあな!」
早口でそう言い終わるが早いか、俺は魔王城へと瞬間移動した。
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ちなみに、翔太がメガネをかけるうんぬんの描写は省いてます。




