9 英気を養うとは、こういうことなのかー
「それじゃあ、また明日」
「おう、またな」
俺は夏蓮の部屋に瞬間移動して、彼女と別れる。
「⋯⋯はぁ」
自分の部屋に戻ってきて、家族が誰も自分のことを気にしていないかを確認する。
うちはそんなに都合の良い環境ではない。夜中に「寝る」と言って自室へ行った長男がいないと分かったら多少混乱するだろう。
(シルフ〜、おーい)
返答がない。⋯⋯寝やがったな。
時計を確認するともう結構いい時間だ。このままベッドの上で横になりたいところだが、その前にちょいと顔を出しに行こう。
「よう! エリシャ」
「! ⋯⋯⋯⋯⋯⋯なんじゃ、翔太。妾は今忙しいんじゃが?」
エリシャは、俺の挨拶に一瞬ビクッと反応したが、直ぐに不機嫌な口調で俺を突き放す。物理的ではなく言葉的に。
「忙しいつったって、ただのゲームの周回だろ? 俺も手伝ってやるよ」
「⋯⋯⋯⋯⋯⋯」
「な、なんだよ⋯⋯?」
隣に座って、加勢しようとしたところ、エリシャは鋭い目付きでこちらを見てきた。もちろん、その間も手は忙しなく動かしている。
「⋯⋯別に構わんが。この手の物は、翔太は毎度毎度死んでばかりで役に立ったことがないんじゃが?」
「ギクリ⋯⋯」
俺は別に、ゲームをプレイするのは得意ではない。好きなゲームジャンルはノベルゲー。
要するに、プレイヤースキルがないということだ。
「じゃあ、隣でのんびり眺めてますよ。⋯⋯俺、もう眠いし」
そう言って大きな欠伸を1つつく。
「⋯⋯ん」
短い返答だったが、許可は降りたな。
⋯⋯時間が、ゆっくりと過ぎていった。
「⋯⋯さて。異界と言えど、一国の主との約束を破るほどの用事だったんじゃろ? それだけの物を得られたんじゃろうな?」
エリシャの機嫌は、周回に一区切りを付け、俺に向き直った後も治らない。いやー、正直そろそろ治ってほしいなー。
あと、冷静に考えるとエリシャは女王様だったな。⋯⋯俺、馴れ馴れし過ぎじゃね?
「ええと、じゃあ、この際なんで――――――」
俺はさっきまでのことを話した。元々事情はある程度伝えてしまっているから、この際正直に話してしまおうという心意気だ。
「⋯⋯なるほどな。膝枕か⋯⋯ふむふむ」
「いや、どこに反応してるんだよ」
疲れているとはいえ、普段の俺だと言えない話をあっさり言ってしまったのがいけなかったか⋯⋯。
「⋯⋯まあいいじゃろう。ほれ、翔太。今回も殴られたんじゃろ? 見してみろ」
「俺はいじめられっ子ですか⋯⋯」
嘆息した後、エリシャに少し近寄る。
「⋯⋯ところで翔太。お前は今日妾にした事に罪悪感はあるか?」
「? まあ、あるけど」
なんだか妙な言い方だな。⋯⋯あとエリシャ、なんで俺の足を持つんだ?
「なら、終わるまで動くなよ⋯⋯!」
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!?!!!」
突然足つぼマッサージをされ、俺は悶えるしかなかった。
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