終 哀愁漂う夜の催し
⋯⋯結局、あれから誰とも合流することなく、シルフと2人で場内を巡ってしまった。
「⋯⋯よく食うな」
「まあな、今日はよく働いたからなー⋯⋯もぐもぐ」
自分でそれを言うか。フランクフルトを頬張りながら。
「もうすぐ夜だよなー」
「ああもぐ⋯⋯そうだなはぐ⋯⋯」
口の中の物を飲み込んでから話してくれ。
「夜には、何かあるのかな?」
この夏の気候と、祭りと言ったら、アレが必要だろう。
「⋯⋯あ! おーい、翔太くーん! ⋯⋯って、シルフさんもいるんだった」
なんてことを考えていたら、前方に俺を呼ぶ声がする。⋯⋯おお。おお! おお!!
声の主であるチトセの方に、瞬間移動をしてから、その衝撃を伝える。
「ゆ、浴衣⋯⋯だと!?」
「はい、翔太君が気に入るだろうと思って」
なんか、もうここが異世界だとかそんなことはどうでもよくなりそうだ。⋯⋯よくはならないけど。
「ふん、生意気だな」
「ちょ⋯⋯! ちょっと! 帯は引っ張らないでください! 1人じゃできないんですから!」
おっと、見惚れてる場合じゃないな。
「こらシルフ! あんまり困らせるもんじゃないぞ」
俺はシルフを持ち上げて、形だけだが、叱っておく。
「ちっ⋯⋯それより、早く移動した方がいいと思うぞ」
「⋯⋯ん?」
「私は本来の姿じゃないから単なる幼女として見られているかもしれないが、こいつは有名神だからな」
「⋯⋯ああ、なるほど」
気づけば、周囲の人達はこちらに釘付けだった。
「チトセ、移動しよう」
「え⋯⋯あ、はい」
俺は彼女の手を取って、いつものように瞬間移動した。
「いやー、なんでわざわざそっちから来たんだよ」
「だって、こういうのは自分から会いに行くものかなーって思って⋯⋯」
そう言うチトセの顔はやけに赤い。⋯⋯何かあったのか?
「あと、この後の催しの前に誰よりも先に翔太君から感想を聞きたかったし⋯⋯」
うっ⋯⋯そんなことを言われると、こっちは困ってしまう。こういう時なんて言えばいいんだ?
「ああ⋯⋯その、似合ってるよ」
「翔太、聞いてるこっちが恥ずかしいんだが⋯⋯」
う、うるせい。割と勇気を出したんだ、これで勘弁してほしい。
「さあ、それより翔太、移動の時間だぞ」
俺達は魔王城にひとまず飛んだんだが⋯⋯どういうわけかすぐに移動しなければいけないらしい。
「? どこに行けばいいんだ?」
「城だな」
「うん、城ですね」
ふたり揃って言うのか。あとチトセ、口調が安定してないぞ。
「食事会と⋯⋯花火だな!」
「そうなんです! だから浴衣を着てるんで⋯⋯あ、ちょっと裾から風入れるのはやめてください」
このふたりの仲はどうしてこんなに悪いんだ? まあいいや、今の問題は、
「食事会って⋯⋯どうしても俺、出なきゃダメなの?」
「私がいるしな」
まじか。よし、逃げてみよう。
「じゃあ、俺帰るんであれどこだここ!?」
瞬間移動でバックれようとした瞬間に、逆にチトセに飛ばされてしまったようだ。
⋯⋯最高神には勝てなかったよ。
「おお〜! 翔太! あれが食べたいぞ!」
「はいはい」
会場はビュッフェ形式というやつだった。シルフはいつの間にかドレスを身にまとっていた。瞳の輝きにも負けないくらい可憐で眩い装飾に彩られたドレスだ。
チトセが能力で着替えさせたのだろう。⋯⋯俺は何故かTシャツとハーフパンツのままだけど
「すっかり保護者ですね」
そう言って、チトセが身体を俺の隣にピッタリと寄せてくる。く⋯⋯心臓に悪い!
「なんでそんなに寄ってくるんですか?」
「だって⋯⋯これからたぶんみんな寄って来るんだもん」
「みんな」という言葉に疑問符を浮かべた俺だったが、顔を上げてすぐに、その意図がわかった。
「⋯⋯⋯⋯あ」
信じられなかったが、俺の前に夏蓮、コレット、ヒノデ、エリシャがいた。⋯⋯が、
「⋯⋯って、なんでお前らが固まってんだよ?」
驚いたのは俺の方だけじゃなかったらしい。
少し経ってから、肩をぷるぷると震わせて、ヒノデ以外の3人が一斉に口を開いた。
「「「またすぐに女を侍らせて!!!!」」」
「なっ⋯⋯!? ちょ、これは誤解だ!」
「ふふーん♪」
「ち、チトセ!? あんまりくっつくなって!?!」
別にハーレム野郎と思われても構わないが、そんな誠実さの欠片もない言われようは勘弁してほしい!
こうして、俺の長い1日の幕が閉じようとしていた。⋯⋯本当に閉じてくれるよね?
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感想、誤字脱字の指摘はお気軽にどうぞ。
「終」とか書きましたけど明日にはこの後ろに幕間を入れるかもです。




