8 口が滑って、手が滑って
「⋯⋯ふぅん。そんなことがあったんだ」
会場を散策しながら、俺は渋々式典前にあったことを話した。「なんで俺の口からこの話を⋯⋯」なんてことは言えなかった。
「ボクから言うのもなんだけどさ、覚えてるよね? 春休みにキミが言ったこと」
「うっ⋯⋯⋯⋯」
それを掘り返されるとちょっと困る。
春休み。
俺は夏蓮交えた友人達のちょっとした面倒事に巻き込まれた。
その時に俺が夏蓮を説得するために言ったことを今覚えいるか、と訊かれている。
「も、もちろん覚えてるよ」
あんなやばい発言は忘れたくても忘れられない。
「なら、試しに言ってみてよ」
「え? ⋯⋯え?」
「おお、それは私も聞いてみたいな」
夏蓮の希望にシルフも乗っかってきた。⋯⋯嘘だろ。
「えーと、『お前の背ぐらい俺が余裕で超えてやるよ』⋯⋯だったかな⋯⋯」
「そっちもあったけど、もう1つあったよね?」
「もう1つあるのか。そして翔太はまだレンを超えられてないな」
シルフが痛いことを付いてきた。⋯⋯が、そんなことは今はどうでもいい。
⋯⋯え? 本当に言わなきゃダメ?
「ぷっ⋯⋯冗談だよ。流石にボクの方も恥ずかしくなるし」
「あ、ああ。そういう⋯⋯」
「なんだ。言わないのか⋯⋯残念だぞ」
よかった。
⋯⋯冷や汗をかいたせいか、喉が乾いてきた。
「ちょっと飲み物買ってくるわ」
「うん、じゃあここで待ってるね」
夏蓮と別れて、俺は駆け足気味で飲み物を売っている店を探す。
「「すいません⋯⋯あ、」」
俺と同時に店員さんに声をかけた者がいた。そいつはどういうわけか、1人だった。まあ俺が言うのもなんだと思うが。
「コレット?」
「あ⋯⋯翔太」
「いやー、驚いた。まさかおじいさんと別れてたとは」
俺はなんとなくコレットと来た道を戻っていた。
「まあ、あの人とはこれから話す機会が何度もあるから」
「ふむ、また私達が駆り出されそうだな」
「げっ⋯⋯確かに」
と、話しているうちに夏蓮と合流した。
「あれ? コレット?」
「あ、レン。翔太と一緒だったんだ」
ああそうか、この2人は魔王城で話したことがあったんだっけ。
「じゃあ私はこれで⋯⋯」
「せっかくだからコレットも一緒に回ろうよ」
コレットは夏蓮と俺を交互に見てから、
「⋯⋯いいの?」
少し申し訳なさそうに訊いてきた。
「いいよいいよ。⋯⋯コレットがいなくてもシルフは必ずいるし」
「ああ、それもそうね」
「? 私がどうかしたのか?」
「なんでもー」
かくして、両手に花の状態で、巡ることとなった⋯⋯と思ったんだが、この状態は長く続かなかった。
それは、俺が反射的に通行人の女性の胸をチラ見してしまった時だった―――。
「そういえば、翔太はおっきいのが好きなんだよな。時空龍に近寄られて式典の時も嬉しそうだったし」
シルフ、なぜに今その話を振る。
「翔太⋯⋯それ本当?」
「そういえば、そんな感じだったような⋯⋯」
ほら見たことか。どことは言わないが、小さい2人からの批難の目が痛いのなんの。
「いや⋯⋯そ、そんなわけないだろ!」
確かに、チトセが近くてちょっとたるんでたかもしれないけど。それでも俺は全力で否定する。
「⋯⋯⋯⋯」
「⋯⋯⋯⋯⋯⋯」
それでも2人の疑いの目は変わらない。
「私は本来の姿に戻ればもうすごいのなんのだからまあ、いいな」
シルフがフォローどころか嫉妬されそうな発言をしている。
「ああもう! レンには言ったけど、今小さいなら、俺がなんとかしてやるから、問題ないだろ!?」
気まずい空気をなんとかしようとして、思わず言ってしまった。あの時夏蓮に言った一言を。
「⋯⋯! 馬鹿ぁぁぁぁ!!!!」
「ンが!?」
「ちょ、ちょっとレン!?」
夏蓮が俺を殴って、駆け出して行ってしまった。それをコレットが追いかける。
「⋯⋯⋯⋯やっちまった」
「翔太、今のは多分セクハラっていうやつだぞ」
「うん、ですよね」
今日は色々ありすぎて頭がおかしくなっているのかもしれない。
とりあえず、後で謝っておこう。
ここまでお読みいただきありがとうございます!
感想、誤字脱字の指摘はお気軽にどうぞ。
こんな時間になってすみません!
あと、翔太は最後までDTのままにしようと思ってます。……え? DTってなんの略かって?
誰 と も 付 き 合 わ な い
……失言、失礼しました。それではまた次回!




