7 体の節々が痛い
俺は、彼の思想を否定する気はない。だが、これだけは言っておかないと流石に気がすまない。
「だ⋯⋯れが、『正論』なんて言った⋯⋯?」
俺は、コルトの後ろへと瞬間移動していた。正直次から次へと瓦礫が叩き込まれる中、よく落ち着いてイメージできたなと思う。⋯⋯まあ、左手の感覚はもうないんだが。
(シルフ、次が最後の一撃にする。あいつの槍を吹き飛ばす程の力加減で頼む)
(わかった)
(あと⋯⋯⋯⋯ってことで、シメは任せたぞ)
(ふむ⋯⋯任せろ! 必ずなんとかしてやる!)
「本当に心強いな」と思いながらも、俺はコルトに向き直る。
俺は、正論を言えるほどできた人間じゃないし、もっと言うと、正論なんて大嫌いだ。少し、虫唾が走るかもしれないが、どうか最後まで聞いてほしい。
「最近考えたんだよね。『復讐は何も生まない』なんてのは幻想だって⋯⋯もちろん、『復讐した本人の気が済めばそれでいい』なんてのもな」
「⋯⋯?」
突如始まった自分語りにコルトは困惑している様子だ。それでいい、戯言として聞き流してくれていいから⋯⋯頼むから俺の呼吸を整えさせてくれ。
「復讐は復讐を生む⋯⋯これが、俺の考えた結論だ」
もちろん、ある程度状況が限られている場合においてだし、例外だってどうせある。今朝考えた結論だからな。
「異論は認める。ただし、結局、俺が1番言いたいことはというと⋯⋯お前は真の勇者と成りえるのか否かということだ」
「⋯⋯何が言いたい?」
いいぞいいぞ。このまま続けよう。
「だから、つまりはだな。お前は、復讐のためにそのチカラを使うのか?」
「当然です。今だって⋯⋯」
「その、魔王を倒したらどうする?」
「⋯⋯⋯⋯」
しまった。少し急ぎすぎたな。⋯⋯まあ、良しとしよう。
「思い出せ。コルト・エルドラド! 天涯孤独の身になった時、お前を支えてくれたのは復讐心だけか?」
「それは⋯⋯」
ダメ押しのカードをここで切ろう。
「それに、どうして地龍が仮とはいえ契約に応じたと思う?」
「⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯」
地龍は、世界の維持を任せられている神の1柱だ。性格とかはわからないが、同じ役割を持つ風の大精霊と、時空龍は、自分の認めた者に力を貸している。
そして、地龍は100年前の大戦では魔王側だった。なら、復讐だけに手を貸す悪いやつではないだろう。
「僕の⋯⋯思想を全て見ていたということです、か?」
「そういうことだ。お前は、勇者に成れるほどの心意気を持ったやつなんだろ?」
コレットに聞いていた話じゃあ、困っている人を放っておけない性分なんだそうだ。俺なんかよりよっぽど優れてるな。
きっと、世界の残酷さを体験した後に、世界の優しさもその身で味わったんだろう⋯⋯というのは、コレットの見解だ。
「⋯⋯そうですか。でも、それでも僕はここを押し通りますよ。たとえ、あなたに敵意がなくとも」
「わかってる。でも、俺はここで大人しく引く人間じゃないんでね」
残念ながら、魔王城にあるほとんどの便利な魔道具は企業秘密の代物ばかり⋯⋯こちらの手で商品化する前に、うっかり見られてしまっても困るのだ。
「行くぞ!」
と宣誓した後、俺はコルトの懐に瞬間移動する。当然、コルトには予測出来ていたはずの動きだったんだが。
「⋯⋯!」
コルトの動きが、突然鈍くなった。⋯⋯どうやら、魔王の方は片づいたらしい。
俺はそのまま、突き出された槍を右手の渾身の一撃で吹き飛ばす。そして、頬に1発、ビンタを食らわせようと⋯⋯思ったのだが⋯⋯。
「間一髪でしたよ⋯⋯」
いや、まじかよ。
(俺の腕にナイフが刺さってるんですけど! しかも感覚ないんですけど!?)
(神経を麻痺させる毒が塗られているな。流石地の勇者候補、抜かりのない立ち回りだ)
(それじゃあ⋯⋯任せるわ)
(ああ)
俺は殺傷部を見続ける。⋯⋯後ろに現界した、シルフを気づかせないために。
「ほいっと」
「!? ⋯⋯な!?」
シルフにスタンプを押され、コルトの動きは完全に止まった。
「いやー危なかった危なかった⋯⋯」
懐に飛んだ時、スタンプを落としておいて正解だったな。
「まあ、色々と思うところはあるだろうけど⋯⋯」
そう言いながら、俺はコルトの足の上に、足を乗せる。⋯⋯別に、踏んで煽っているわけじゃなくて、手がろくに機能してないから、足で触れているだけだからね?
「とりあえず、エピローグと行こうや」
俺は、シルフが汚れに汚れた服の端を摘んだのを確認してから、魔王城内に瞬間移動をした。
遂にやり遂げました!
うおーやったぜー!!
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