6 意外と体力がなかった説
地龍が打ち上げ、次々と落下してくる岩石達を俺はギリギリのところで躱す。
俺の『主人公補正』とは、目的を達成するための最善の行動が目に見える能力だ。
だから今俺がとっている行動は、俺のみに視認出来ている光の線に沿って動いている結果だ。これは、数々の修羅場を乗り越えた者にしか与えられないスキルでな⋯⋯まあ、本気でやれば誰でも身につけれるっちゃあそうなんだけど。
『生きてますか? 魔王様?』
「そっちは随分と余裕そうだな! ⋯⋯なに、今片をつけるところ⋯⋯だ!」
ギムギスからの通信に応えながらも、目の前に現れた岩を叩き割り、俺は遂に地龍を見下ろせる位置にまで、岩雪崩を登りつめた。⋯⋯これで、終わりだな。
「さあて、いつまでも寝ぼけていやがって⋯⋯! 怒りの鉄槌をお見舞いしてやるよ!」
俺は、右手に魔力を集中させ、詠唱を始める。
これは、俺の咎送りの一撃。
これは、俺の次なる理想への第1歩。
そしてこれが―――
「魔王以外の全てに教えてやる⋯⋯これが、俺だ!!」
叫び、気合いを入れて、俺は大気を蹴り、地龍へ一直線に向かう。
「神魔一対究極奥義――――――神をも砕く愚者の一撃!!!!」
俺はそう言って、地龍の頭にゲンコツをお見舞いしてやる。
地龍はそのまま、大きな悲鳴と激しい地響きとともに、地面へと倒れ伏す。
『また恥ずかしい名前を付けて⋯⋯』
通信機からため息が聞こえる。この良さがわからないとは⋯⋯困ったものだな。俺がせっかく考えた技名なのに。いや、まあルビの安直さは認めるけどね!
「さて、帰りますか」
ギムギスは、着地した俺の目の前に現れた。俺は、なんの驚きもなく、応答する。
「ああ、そうだな⋯⋯心配したか?」
「⋯⋯⋯⋯まさか、このくらいでへこたれてしまっては困ります」
フッとキザに微笑みながら、彼は俺に手を差し出してきた。
「へっ⋯⋯そうかよ」
俺も笑いかけながら、差し出された手を掴む。事後処理はこれから来るであろう騎士団に任せておけばいいだろう。
さて、あとは城がどうなってるかだな。
俺の息は、すでに上がっていた。優勢か劣勢かと問われれば、まだ優勢だ。
コルトは防戦一方だが、俺達はイマイチ決定打を決めかねていた。⋯⋯というか、相手の守りが硬すぎて、打てないでいた。
ああクソ、こうなったら体力尽きる前に、心から攻めてみるか。
「おいおいどうした。それでも最年少勇者か? そんなんだから、弱いんだよ」
嘘です。ドーピングかけまくってる俺より、よっぽど立派で、強いと思います。
「弱い⋯⋯だと?」
そう思っていても、向こうが反応してしまったのだから、続けるしかない。
「そうだよ。お前は所詮⋯⋯⋯⋯復讐をしに来た勇者だ。そんな勇者らしくない理由、動機でここまで来たやつが、俺に勝てるとでも思ってるのか?」
途中で若干なに言ってるのかわからなくなってきたが、続けよう。
「出直してこい。お前はあの時から、何も成長していない」
「⋯⋯⋯⋯」
どうやら、今の一言に思うところがあったらしい。先程まで1片の隙も見せなかったコルトの動きが、ぴたりと止まった。
よし。
(ここを逃せば他に手はないよな!?)
俺はコルトに向かって飛び出した。
(待て翔太!)
この、シルフの制止を無視して―――。
「がっ⋯⋯ゴバァ!!?」
どうやら、今のはフェイクだったらしい。俺はコルトに触れる前に吹き飛ばされ、城の城壁にこれまでにないスピードで突っ込んだ。
「そんなこと、ずっと前からわかってますよ」
俺が突っ込んだ部分の城壁は、綺麗に穴が開いており、壁の向こう側には、静かに歩いてくるコルトの姿が見えた。
「だからなんなんですか? 『復讐に燃える勇者は勇者じゃない』だなんて、正論言ってればいいとでも思ってるんですか?」
(ああー、あいつが美少女ならまだ可愛げがあるんだが⋯⋯)
(それ、今言うことか?)
(当たり前だろ⋯⋯?)
俺は瓦礫を払い除け、城壁の向こう側に飛び移る。
「っげ!」
その瞬間、コルトに一気に接近され、こちらに手を突き出してきた。
俺はなんとか避けて、そのまま城壁を並走しようとしたところ⋯⋯。
「ま⋯⋯じ、か!」
石造りの城壁が、一斉に俺に向かって落ちてきた。もう、瞬間移動を刹那に使用できるほどの体力は残っていないというのに!
「あれ? 知りませんでした? 地龍は引力と斥力⋯⋯そして、触れた物質の形状を大まかですが変化させられるんです。変化させられるのは固体に限られますがね」
「そこで眠っててください」と言わんばかりの皮肉のこもった笑みが、眼鏡越しだが、俺には見えた。
仕方がないな、俺もそろそろ覚悟を決めるべきか。
怒涛の勢いの瓦礫に埋もれながらも、俺の目は死んでいなかった⋯⋯と思う。
もういい加減日常パートに戻りたい作者です。
あと1話は続くので、付き合っていただけたらなあと思います。
とりあえず、ここまでお読みいただきありがとうございます!
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