5 意外と体力が無かった問題
(よっしゃ、シルフ。援護頼むわ)
(いいのか? さっきはなんか『こいつムカつくわ〜、まじぶん殴りてぇ〜』みたいな顔をしていたが)
(そ、そんなに顔に出てた? まあいいや、俺達の目的はあいつの動きを封じること。俺はあんなぶっ壊れた精神構造で話し合いに応じるとは微塵も思ってない⋯⋯というかなかったからな!)
実際、今コルトからは先程とは比べ物にならない程の圧とオーラ―――神格を付与される前では絶対に見えなかったであろうもの―――が出てきている。
(勘弁してくれ、俺は油断してるところをつく作戦だったのに⋯⋯)
(それはもう無理だな。今の翔太は時空龍の半身、風の大精霊である私、そして国のトップの神格が宿った護符を所持しているからな)
そんなに盛らなくても勝てたのでは? もしかして、これは俺TUEEEEを見せつけなければならない場面なのか?
(まあ相手も、仮契約とはいえ、地龍からのバックアップがあるようだがな)
(げ⋯⋯まじ?)
そんなこと初耳なんですけど。まだ見習いで契約なんてしてないって聞いてたんですけど!
(ああ、確かあいつは史上最年少勇者の候補らしい。が、肝心の地龍は知っての通りほとんど機能していないから、今回特別に仮契約という形で能力の底上げを行っているらしい⋯⋯てネットに書いてあったぞ!)
(お、おお⋯⋯)
俺は驚きと少しの感動が入り交じった声を上げる。⋯⋯あの年代的にアナログだったシルフがまさかネットを使えるようになるなんて⋯⋯!
まあそれは別として、
「契約か⋯⋯なら、最悪ワンチャンあるか⋯⋯」
契約に対して、俺は思い当たることを口に出しておく。その間に、
「なにボソボソと独り言を唱えてるんですか?」
(来たぞ翔太!)
あちらさんの準備が整ってしまったようだ。俺はすぐに頭を切り替え、身構える。
(目標、約1秒後に接触!)
「ってはええよ!!?」
シルフのどうでもいい注意喚起にツッコミながら、俺はコルトの初撃をなんとか躱す。うお!? かすった!?
「あっ⋯⋯ぶねえな!!」
続く第2撃も危なげながら躱し、瞬間移動で距離をとる。⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯。
(もしかして、あいつ)
(ああ、あいつには見えてるぞ。私たちが次にどこへ瞬間移動するのかが)
(嘘だろ⋯⋯)
(驚くことじゃない、今のあいつはエリシャと一緒だぞ。仮にも神だ。神なら、翔太の移動先がオーラでわかる)
マジっすか⋯⋯。俺の予定じゃあちょちょっと話し合って、無理だなこりゃ⋯⋯と思ったら即行で片付けるつもりだったのに。あと、エリシャは毎度毎度俺の転移先がわかってたのね。通りで毎回俺の正面を向いて待っててくれたわけだ。
「なんだ⋯⋯意外と大したことないですね」
コルトがそんな俺でもわかってることを言ってくる。ついでに言うと、まだ本調子じゃないのにそんなこと言われても困る。
(気にするなよ翔太、今回はいくら何でも急すぎだ。私が上手い具合に補助なり援護なりしてやるから、思うままにやってみろ)
(⋯⋯シルフ、いつになく優しいな)
(? そうか?)
「いつもこれぐらいならいいのに⋯⋯」という言葉はあえて言わずに、俺は気を取り直して姿勢を正す。
「つまり、今回はチュートリアルだと⋯⋯ヨユーだな、ハハハハハ!」
(ろくな事が起こらない気がするが⋯⋯ほんと頼むぞ翔太!?)
「⋯⋯あぁ、まさかここまでとは」
くっそ⋯⋯完全に油断してた。周囲一帯の大地は一通り抉られており溶岩煌々とが湧き出ている所が大半だ。
木々と山しかなかったここら一帯が、地龍1柱の手によってこうなったって言ったら、翔太は驚くだろうか。
「いや、そんなことは今はどうでもいいか⋯⋯」
俺は片足のみで、器用に立ち上がり、落ちていたもう片方の脚を拾い上げ、傷口に無理矢理ねじ込む。
こっちのほうが翔太には衝撃的だったりしてな⋯⋯、なんて思いながら改めて地龍に向き直る。
「こういう時だけ⋯⋯不死身で良かったって思っちまうよな」
修復された脚の調子は⋯⋯よし、問題ないな。
「もう魔法も無駄打ちしてらんねえからな。途中で通知が来るのに望みをかけて、やっちまうか!」
俺には、魔王の称号に恥じぬ魔力量がある。⋯⋯恐らく、異世界最高峰だろう。さて、残念ながら俺にはそれ以外の特質すべき特技はない。唯一あるとすれば⋯⋯。
「たゆまぬ努力と研鑽⋯⋯ぐらい、か⋯⋯」
自分で言っちゃうのは流石に恥ずかしいんだけどね!
「これの欠点は、かっこいい詠唱も何もない事だな」
俺は、唯一習得できた、スキルを発動する。
『主人公補正』―――!!
名前がダサい? 気にすんなって! 俺は気にしてるけど!
ちなみに、『シンクロニシティ』はグーグル先生によると「意味ある偶然」らしいです(たぶん)。
ここまでお読みいただきありがとうございます!
感想、誤字脱字の指摘はお気軽にどうぞ。




