(第二部)五十七章 暗い目の前に新聞のような-2
(第二部)五十七章 暗い目の前に新聞のような-2
「三種の御息をしている途中、目を閉じているのに見えたんです。」
「どんなものを見たのじゃな?」
「真っ暗な目の前に文字のカウントダウンのようなものが見えて、何だろうと思ったら新聞のような紙面に○○○○会社×××と現れて、その文字を読もうとしたらその見えていたものが消えていったんです。」
「なるほどな、そういうこともあるじゃろうな。」
祖父は一旦言葉を留めて、思案している風だった。
あのあと先日の体験を先ずは祖父に話し、言い伝えや伝聞がないかを聞いてみることにした。
「そういえば儂の父が、足止めの御加持を行うときの話にそういうことをいうとったが、同じものではないじゃろう。もっと昔に別の人が遠見の技をつかっとったという話も聞いたことがある。」
「???、曾御祖父さんの足止めの御加持?、遠見の技?。」
「順を追って話そうか、先に儂の父の話からじゃな。お前からいえば曾御祖父さんとなるわけじゃが御加持をしておったのは話をしたな?。」
「それは聞きましたが詳しくは聞いていないです。」
「余り話す機会も無かったしの、まぁええわ、これからは話す機会があれば話をしようかのぉ。」
「ぜひぜひお願いします。」
「足止めの御加持とは、たとえば家出人や盗人などの消息がつかめぬものに対して使う業で、かけられたものは金縛りに懸かったようになってその場から動けなくなるか、原因不明の痛みでうずくまってその場から動けなくなるというものじゃ。」
(☆?★?、なんか判らんがずごい)
「驚いたか?、儂も実際に見たことがある故、驚きを隠せなかったのじゃ、それでな父は御加持を行っておる時の事も話をしてくれた。神前に御加持のお道具を揃えて決められたとおりに配置して、祝詞を奏上し真事宣を唱えてゆくと目を開けていても瞑っていても足止めをするべき者が目の前に見えてくる。しっかりみえたならばとある秘伝の呪文を唱えつつ清めたお道具を取り気合いを深く込めて打ち込むと、空に向かって行っているのに相手に当たっているように感触がある。そうするといつのまにか術は懸っており、しばらく日数がたつと家出人なら家に連絡が入り家人が迎えに行ったというそういう出来事を間近で見たことがあって、その時に御加持の様子を聞いたのじゃ。」
「いま話したように御加持の中で遠くの人が見えるということはあるようじゃ。」
なるほど、としかいいようがなかったが、なんとも身近にいたものだと感心した。
「もっともこれは御加持の中での出来事で、そなたの体験とは異種同体験というところかの。もう一つ思いつくのは伝聞でしか無いがそれでも良いか。」
もちろん否応も無く話を聞きたい旨を述べた。
「これは昔の話じゃがこの家の先祖にも他の先達にもあったことじゃし、なによりこういう遠見の業を使う者は今の時代にもいるし、ほら遠縁のあそこの宮司も少しだけならそういう力があると聞いたぞ。またそういう者達は深く神々に祈るときに遠くを見、人の有様を見、先の出来事を見るという。神々にそういう力を授かるという話じゃ。」
少し話を切ってお茶を一口飲んで。
「遠見の業は信心深く、懸命に長い期間神様に祈った者が御心にかなって遠くを見ることがかなうという事じゃそうな。それもたんに信心深いだけでは到達せず、祈り込むだけでは到達せず、心神が御心にかなうほどに真澄の鏡となることが大事と聞く。」
自分がとてもでは無いが御心にかなっているとは思えず、これから先はどうするべきか考え込んでしまっていたようだ。
「何を考え込んでおるのかは判らぬでは無いが、見込みのある者に神々は神通を少しばかり体験させるともいう、そなたももしかしたらそういうことかもしれんの。」
はっと顔を上げて祖父の顔を見れば、いつもは笑うことの無い祖父のお顔が少しほころんで笑顔になっているように見えた。
「まぁ試しに祈りを続けてみるのがええじゃろう、今頃はそういう本が出回っているかもしれんから探してきて調べるのもええじゃろう。暫く待て。」
と言い残して納戸のほうへいってまた戻ってきた。
「その手の本は少し値が張るかもしれん、お小遣いや手伝い賃ではだけかもしれんからこれを使いなさい。」
とお金を手渡して祖父はもう話すことが無いとばかりによそへ行ってしまった。
なるほどと思いながら自室に戻って暫しの思考の海に没入することとなる。
次話投稿は2月1日17時の予定です。
よろしくお願いします。