(第二部)五十八章 暗い目の前に新聞のような-3
(第二部)五十八章 暗い目の前に新聞のような-3
書籍確保・・・いつもの如くに自転車で山越え。
親に頼めば車に乗せて連れて行ってくれるだろうが、自分の内面世界のことであるし自分自身の力をつける要素なのでできる限り親を頼りたくない、たかだか本を買いに行く程度は己の足で行うべきだと思ったからだ。
時折訪れるその本屋のそれらしいものが置いてある一角は既に見慣れたもので無くなっている本、新たに登場している本が時間もかからず把握できてしまう。
一角といっても神秘系の本ばかりが置いてあるわけでは無く、健康系、健康体操のような気功法の本や薬膳、よくわからない新興宗教の教祖の本などが雑前に置いてあるような感じだ。
それでも見落とした新本があるかも知れない、見慣れた背表紙の本を開いてみれば新発見があるかも知れない、あるいは・・・とすがるような気持ちで一冊づつ目次を目で追って目に留まった箇所を開いて要点読みをしてゆく。
ある程度の冊数に目を通して同じ箇所にとどまるのも気が引けてきて、神秘系の雑誌の置いてあるコーナへ移動してそちらも確認してゆく。
この時代神秘系や神通力・超能力の分野の社会的な認知度は低く雑誌などはほんの数種類も無いほどだった。
種類が少ないので余り時間が懸ることも無くザラリと目通しできてしまう。
もう一度それらしいコーナーへ行って目を通してみよう、そうそう長時間居座っているわけだからとりあえずこの雑誌だけでも購入するようにしようかな、とその雑誌を持ってコーナーへ移動した。
また同じ程度の時間棚のコーナーの端から見てゆくが二度三度みてもない物は無いといった感じだった。
当たり前といえば当たり前のことだが、それでも少し残念な気持ちになるのはしようが無い。
雑誌の会計を済ませ本屋の外に出る。
腕時計をポケットの中から取りだして時間を見てみるとそれなりに時間が過ぎていて軽い疲労感が体になじんでくる。
腕時計をポケットからというと何故腕に無いのかと疑問に思うことだろう、実はあまり貴金属やそれの類いを身につけるのにどうも違和感があって腕時計はポケットの中という具合だった。
目線はアイスクリームの自動販売機にいってしまう、田舎には珍しいアイスクリームの自動販売機がこの本屋には置いてある。
頑張って確認したのだからちょっとくらいの散財は良いよな、と思いながら一つアイスクリームを購入間違えたわけでは無いがいつもと違う抹茶のアイスを片手に自動販売機の隣にあるベンチへ腰掛けそれを囓る。
その途端、軽い目眩のようなものが襲ってきたかと思うと、目は開いていてベンチから眺めてる風景が見えているわけだが、頭の中といえば良いのか、前頭葉といえば良いのか額の当たりといえば良いのか、視覚が二重に重なっているといえば良いのか、そんな非日常の中で風景を見ている目のもう一つの視覚では、駅のホームから電車の昇降口が開いていて中に座っている人がいる情景が存在した。
あっ、とおもってもう一つの視覚の電車を確認しようと思ったら淡雪のようにその情景はフェードアウトしていった。
唐突に見えた情景だったが、自分で見たい物を見れるわけでも無く見ようと思って見れるわけでもないので一瞬しか見れないのは未熟故だと自分に言い聞かせた。
急に手に冷たいしずく感があった。
アイスクリームが溶けて手に雫した感触だった。
電車とホームの情景には意味があるのかも知れないと勝手に思って思い込みながらすわって固まっていたらしい、アイスが溶けて雫が垂れるほどに。
冷たい雫に現実に引き戻され、手早く食べて自転車で帰路についた。
もしかしたら今日見た映像は、何らかの未来の情景か何かかも知れないと想像しながらの帰路だったので、何度か追い越してゆく車にクラクションを鳴らされるという危険な走行だったのでは無いかと思う。
危険走行は良くないですね。
クラクションを何度ももならされて少し気落ちしての帰宅だったが、もしかしたら岡山の本屋に行けという暗示だったのではと着想したとき少しばかり有頂天になったようで、妙に躓いたりものを落としたりしたのでこれも注意せよとの啓示かも知れないと気を引き締めることとした。
日を改めて岡山に出向くこととしたが、山をいくつも超えて山陽本線の駅まで行くのだがその日はいつもより足取りは軽い。
時間はかかったが本屋に到着して本を探すと二冊ほど示唆を与えるような本があったのでそれを購入して足早に帰路につくこととした。
もちろん往路で先日見た情景に出会うことを期待していて、良い本に出会ったのも少し色あせた感じではあったが。
学生の小遣いで喫茶店に入るなどの散財は思いつかなかったし、せめて惣菜パン二個と今日は水筒を忘れてしまったがために買ったお茶の缶詰を食べる程度として我慢する。
田舎に比べて刺激の多い街のことだから見て回ればさらに散財してしまって後で後悔すると思ったからだ。
噂のゲームセンターがあると同級生から聞いていたので少しばかり後ろ髪が引かれる思いだったが・・・。
そうして駅に到着してベンチで遅い昼食を食べながら電車の待ち時間にした。
パンを食べ終えてお茶缶を手にのんびりしていると、各駅停車の電車が駅のホームに滑り込んできた。
私の乗る電車は次の時間だったので、そのまばらな人の昇降を眺めていたときに手に持っていたお茶缶を落としそうになった。
それは先日見た情景映像と寸分狂い無く一致しあっけに捕らわれたからだ。
その一致した情景は次の瞬間には既にそれでは無くなっていて、人の乗り降りが止まって電車の扉が閉まる。
また思考の海に落ちてゆき、危うく乗るべき電車に乗りそびれてしまうところであった。
次話投稿は2月15日17時の予定です。
よろしくお願いします。




