(第二部)四十五章 この本体を
(第二部)四十五章 この本体を
「この本体を買わんかぁ?。」
と、妙に眉毛の細い、眉毛があるのかどうか微妙な、そういう部位が目立ちさらには性根が曲がっているのか目は澱んでおり光を感じさせない、そういう特徴の同級生が話しかけてきた。
手に持ったその機材は、数年前ぐらいから発売されたゲームの本体と高価なオプション機器が合体したゲーム好きにはたまらない物だった。
怪訝な顔をしてみていると「○○がゲームをやりすぎて親に叱られてこの本体を捨てられるちゅう話で、いらんいゆう話じゃけぇもろうたんじゃが、わしゲームせんけぇ譲っちゃろうゆう話。」
ふう~ん、と興味あるようなないような生返事を返すと、「二本ゲームをつけるけぇ一万五千でどう?、お得するでぇ。」
妙な地方語が複数混ざったような言葉でのセールストーク。
手持ちの小遣いから考えたら足らないなと考えて、言葉に出そうとしたら何を先読みしたのか判らないが「じゃあ一万円で・・・これでかなりお得じゃろぉ~、こおてえゃぁ。」
また妙な言葉で押してくる。
先日、祖母の結構な規模の内職の手伝いをしてかなりの時間を割き、そして手に入れた手伝い費。
それらお小遣いを貯めているヤツを足せば何とかなるかなぁ~と思っていると「じゃ一万円で売った。決まり。今日でも帰りに家まで取りに来てくれ、学校で渡すと後々うるせーじゃん。じゃあそういうことで後で声をかけるわぁ。」
と、手を振りながら去って行った。
まだ買う買わないの返事もしていないのに勝手に決まってしまった、なんなんだろう?と、よくわからない流れだった。
放課後声をかけられてそやつの家に行くこととなった。
家は県営住宅のようで親は隣の部屋で子供達が親の部屋の隣という、二区画借りているという形で県営住宅の家賃がどのようになっているのか判らないが、少し驚く気持ちがあった。
その子供部屋と称されている部屋に入ると通路側の部屋がそやつの部屋で、奥の方にもう一部屋ありそちらは兄貴の部屋という事だった。
奥の部屋から話し声が聞こえて、玄関の靴の数が妙だなと思ったのは奥の部屋に屯しているからのようだった。
「あれ話がついたんか?。」
「おう話がついて取りに来てもろうたんじゃ。明日にでも金はもらうことになっとるけぇ。」
「おう、そうか。」
あまりよくわかっていない顔をしている自分に対して、物品の良さや付属するゲームの発売日などをアピールして買うように説得するようにかぶせてくる。
買わないと入っていないのになぜこんなにアピールしてくるのか判らなかったが、話を聞いているととても良いものに聞こえてくるから不思議だ。
その後、代金は明日で良いとゲーム本体を渡され、それじゃ明日よろしくの言葉と共に玄関まで見送られ扉が閉まった。
代金を渡す前に試すのは悪いだろうと思い、配線をつなぐことはしなかった。
翌日朝一番にそいつは教室を訪ねてきて、代金をひったくるようにして「じゃああの本体はお前のもんナ、しっかりつかってくれや。」と言い残し去って行った。
付属のゲームはやってみれば結構面白くあっという間に二週間がたった。
放課後職員室に呼び出された。
ゲーム本体は買ったのか、誰から、どのような話だったのか、そのお金はどこから出たものなのか・・・色々と聞かれ、話が途切れたところで疑問を聞いてみた。
確かに○○の親から捨てるぞと言われ、自分の所にあると本当に捨てられると思い、その話を同級生に言ったところほとぼりが冷めるまでゲーム本体を貸せということで貸し出していたらしい、つまり売りに来た同級生が○○に借りただけの物で不要品であったわけではないらしい。
なんとも無茶苦茶な話に巻き込まれたモノだ。。。
翌日ゲーム本体を元の持ち主に返し、さらに五日後に支払った代金が教師の手より戻ってきた。
反省文書くための用紙と共に。
学生のすねかじりの分際で売買をするなということらしい。
最初見た同級生の印象をもっと確実に捉えて、それに重点を置いて判断すれば良かったなとしみじみ思った。
それは今でも時折思い返すことがあり、とても難しいことだが看破(可能な限り)するのはとても重要であると思っている。
次話投稿は29日か1月5日の17時の予定です。
もしかしたら1月1日の17時に一話投稿するかもしれません。
よろしくお願いします。