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輪廻転生  作者: 香月薫
第12章
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第441話

 自身の部屋に戻ってきた、アレス。

 まだ、眠ろうとはしない。

 やることが、残っていたのだ。

 〈乙女の祈り〉の力に関する報告書や、貴族たちの動向を記した報告書など、多くの報告者が机に置かれていたのである。

 それに、他国のハーツに関する報告も上がっており、本日の睡眠は、二時間も取れそうになかった。

 それでも、動き出したアレスは、止まろうとは思わない。

 リーシャの顔を曇らせず、すべてのものを排除するために。


 カーテンが閉められていない窓に近づき、外を眺めているアレスだ。

 ところどころ、庭園がライトアップされていた。

 真っ暗な庭ではなかった。

 ここから、見つけることが難しいが、至るところに、警備する者たちが配置されていたのである。

 王宮にある宮殿の中で、一番、厳重な警備が敷かれているのが、ここ仮宮殿だった。

 一見すると、他の宮殿と変わらないような警備体制になっているが、数多くの警備する者たちが集められ、どこの宮殿よりも、厳しい警備がなされていたのだ。


 徐に、一息、ついている。

 とても、すぐに仕事をする気分になれない。

 頭の中では、先程の台本に書かれていた二人の文字が気になっていたのだ。


(何で、ラルムが書き込んでいる。その必要性がないじゃないか……)


 抑え込んでいたムカムカ感が、また、再燃している。

 眉間にしわを寄せていた。

 演出を担当しているビルゴとリーシャの橋渡しを、ラルムが率先して担っている報告は、すでに受けていて把握済みだった。

 だが、ラルム自身が、わざわざ、リーシャの台本に書き込む必要があるのかと抱いていた。

 それも、これ見よがしにだ。


 顔を顰めているのが、窓に映っている。

 映っている自身の表情に、ますます、面白くないアレスだった。


(ラルム……。何を考えているんだ……)

 リーシャとラルムの噂が、また広がっていたのだ。

 アレスの元にも、部下からやゼインたちからも、リーシャとラルムの噂が広まっている話を聞き、いろいろと対策を講じているが、どの対策も沈静化する気配をみせていなかった。

 ラルム自身が、周りを気にする様子もなく、常にリーシャの傍にいたからだった。


 まだ、ラルムが距離を置くような姿勢を示していれば、鎮まることはなくても、ここまで広がるような事態に、陥ることはなかったと考えていたのである。

 一番いいのは、演劇の出演を辞めればいいだけの話だが、アレスとしては、やめさせたくはなかった。

 ハーツに意識を傾けてしまうことは、避けたかったからだ。

 だがら、ラルムが相手役だとわかっていても、強行に、この話を中断させることをしなかった。

 けれど、それが裏目となって、二人の噂話が、再び上がってしまっていたのである。

 出るたびに、王宮側やメリナ側が抑え込んでいたが、両サイドが動いても、卑猥な二人の噂話が止まる様子がない。

 アレスも噂話を沈めようと動いているが、収めるどころか、広がる一方な自体に疲弊していた。


 ただ、幸いなことに、リーシャの耳に、噂話の件が、詳細に伝わっていないことに安堵していたのだった。

 学校と王宮を行ったり来たりしていても、学校では、不特定多数の生徒たちで出くわす可能性があり、そこから伝わってしまう可能性もあったので、アレスやラルム、ナタリーたちが、そうしたやからと近づけないようにしていたからだ。

 勿論、ビルゴたちも、リーシャに噂話が伝わらないように、細心の注意を払っていたのである。

 せっかく、リーシャとラルムが、主役を演ずる文化祭での舞台を、中止にさせないために。


「誰が、リークしている?」

 学校での二人の様子が、リークされている可能性が出てきていたのだ。

 ただの噂話だと、突っぱねることができない、学校での様子がありありとリークされていたのだった。

 誰がリークしたのか、調査が行われているが、今のところ、掴むことができなかったのである。

 次から次へと、頭の痛い問題に、頭を悩まされていた。

「ラルム……」

 小さく呟いていた。


 回りを気にしないで、振舞うラルムの態度に、リーシャの前から消し去りたい気分だったが、できない状況に苛立ちを、さらに募らせている。

 上手くいかない状況に、長い息を吐いていたのだ。

 そして、気持ちを落ち着かせ、残っている報告書の山へと、アレスが向かっていったのだった。


読んでいただき、ありがとうございます。

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