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輪廻転生  作者: 香月薫
第12章
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第436話

 演出を担当しているビルゴの元に、ラルムが訪れていたのである。

 ラルムに声をかけられるまで、舞台装置の修正について、裏方と話し合っていたのだった。

 文化祭まで、演劇科は一般の授業がなくなり、文化祭で披露される演劇の稽古に当てられていた。

 美術科も、ほとんどの授業が休講となり、文化祭に出展する作品造りや、演劇科の手伝いに回っていたのである。

 この場に、演者は、誰一人としていない。

 別な場所で、演者だけで、稽古が行われていたからだ。

 その現場から、ラルムが抜け出し、こちらに足を運んでいたのだった。

 忙しなく動き回っている裏方のことを気遣い、端により、二人で顔を合わせていた。


「セリフの変更か?」

 ラルムから声をかけられることが多くなったビルゴから、切り出していたのだ。

 これまで、何度か、リーシャのために、セリフの変更や休憩のことでお願いしに来ていたからだった。

「そう」

「どこだ?」

 二人での打ち合わせもなれたもので、無駄な話をしない。

 演出を担当しているビルゴも、文化祭までの時間が短く、無駄に時間を使いたくなかったのである。

「ここか……」

 ラルムが求める箇所のセリフを見て、眉間にしわを寄せていた。

 以前から、リーシャが突っかかる場所でもあったのだ。

 だが、ビルゴとしては、変えたくなかった箇所でもあった。


「少し、短く……」

「俺としては……」

「この辺と、この辺を少し変えれば、短くなると、思うんだけど……」

 ラルムの提案を聞いても、指摘された箇所を見つめているだけだった。

 ようやく、顔を上げ、ビルゴの双眸が、隣にいるラルムを捉えている。

「リーシャ様の状況は、どうだ?」

 ここ数日、学校に来ていなかった。

 だから、当日、来られるのか、心配になっていたのだ。

「大丈夫。アレスの仕事が、忙しいみたい」

「そうか……」

 安堵の表情を浮かべている。

 だが、すべてがクリアになった訳ではない。

 まだ、まだ、やらなければならないことがあったのだ。


「当日まで、でき上がるか?」

 長いセリフになると、どうしても、台本を手放せない状況が続いていたのである。

 開演まで、後、少ししかない状況の中で、未だに、台本が手放せない状況は、危機的状況とも言えたのだった。

「流れは、頭の中に入っているけど、みんなとの通し稽古が少ないせいで、自信が持てないのかもしれない」

「そうか……」

 考え込むビルゴだ。

 ビルゴとしても、通し稽古が少ないことを痛烈に感じていた。

 リーシャが学校に来られない日の稽古は、流れが崩れないように、代役を立てて、通し稽古が行われていたのだった。

 ラルムも、リーシャほどではないが、稽古に参加できない日もあり、演者たちの稽古が思うようにいかない時もあったのである。


「この箇所は、変えたくない」

 ラルムと話しながらも、指摘された箇所のセフリが、変更できるか、模索していたが、変えたくないと言う結論を出していた。

「では、ここは?」

 別な箇所を示していた。

 先程よりも、セリフは短いが、言い回しが難しい箇所でもあったのだった。

「ここね」

 同じように、考え込んでいる。

 けれど、すぐ様、顔を上げるビルゴ。

「わかった」

 ニュアンスを僅かに変え、セリフを短くしたものを口に出していた。

「これで、どう?」

「それで」

 ニッコリと、ラルムが微笑む。

 ビルゴ自ら、台本にセリフの変更を記入していった。


 ビルゴとラルムが、セリフについて話し合いが行われている間も、裏方たちの手は止まらない。

 演出を担当しているビルゴからの指摘を受け、舞台装置の直しに集中していた。

 演者であるラルムがいても、違和感がない裏方たち。

 稽古に参加できないリーシャのために、よく足繁く、通っていたから、見慣れた光景でもあったのだった。

 開演まで、変更した箇所の修正の舞台装置を作るため、裏方たちも急ピッチで行われていたのだ。

 演出を担当するビルゴのこだわりが凄く、違和感が生じると、すぐさま修正を裏方たちに命じ、休憩を取る暇もないほどだった。

 当初の舞台装置とは、がらりと変わっていた。

 その後も、ラルムも意見を出しながら、気になる箇所のセリフについて、話し合いが行われていたのである。

 毎日、稽古に顔を出せない代わりに、リーシャの伝えてほしいことを、ラルムに頼んでいたのだった。

 ラルムもまとめて、台本に書いていく。


「だいたい、こんなものか?」

 ビルゴの眼光が、ラルムを注いでいた。

「そうだね。後、この辺の、僕のセリフを変えてもいい? リーシャのセリフを変えちゃうと……」

「確かに……」

 ラルムの意見に頷く。

 そして、新しいセリフを口に出していた。

「……」

「どう?」

 窺うラルムに、顔を傾けていたのだ。

「ストレート、過ぎないか?」

 少し難色を示すビルゴ。

「その方が、いいと思うんだ」

「……」

 難色の表情が消えない。

「ダメかな」

 まっすぐに、ビルゴの顔を見つめていた。

 もう一度、思考をフル回転し、考えていく。

「……それで、大丈夫だ」

「よかった」


「これで、今日のところは、終わりか?」

「そうだね」

「じゃ、リーシャ様に、変更箇所を伝えてくれ」

「わかった」

 ラルムが立ち去り、ビルゴは裏方たちがいるところへ、戻っていった。

 納得できない箇所を、次々と上げていく。

 裏方たちが、ジト目でビルゴを睨んでいた。

 だが、ビルゴのこだわりの強さを知っているので、腹を立てながらも、言われるがまま、手を動かしていたのだ。

 声を張り上げているビルゴ。

 ラルムと話している間も、演出も、舞台装置も、変えたい箇所が、次々と浮かんできていたのだった。


読んでいただき、ありがとうございます。

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