21 続・魔法ガールズトーク
やぁ!ボクは世界の平和を願う無害な神獣クロモだよ!
今日は良子が家に持って帰ってきた怪しい魔法少女むつきに色々と話を聞いてるんだ!
すると何か話が怪しい方向に向かって……いやぁ、魔王ブラックモアって何だろうねー。わっかんないなー。
「恐怖の大王アンゴルモア……」
「ええ、かつて世界を滅ぼすと予言された存在よ」
「えと、なんだっけ?聞いたことあるような無いような」
よしこの反応軽っ! 当時はみんな知ってたのに! これが平成っ子か! ジェネレーションギャップを感じるよ!
「そのアンゴラウサギみたいな名前のヤツがどうしたって言うの?」
アンゴルモアね! アンゴルモア! そもそもアンゴルモアなんて名前気に入ってないんだよね。ブラックモアって呼んで!
「恐怖の大王アンゴルモア……ヤツが魔王ブラックモアと名乗り出した経緯は分かっていないわ」
え?ノリだよ? なんかブラックってかっこいいじゃん。大王より魔王の方がかっこいいじゃん。
「とにかく、魔王ブラックモアは世界を滅亡させようとしたけど、結局何も起こらなかった。それは5人の魔法少女によって未然に防がれたから」
「5人の魔法少女……」
「ええ、その魔法少女達はこの吹津町にいたらしいの。私は彼女達を探しにきた」
あー、あいつらかー……そうだよね。この町にいたね。少なくとも15年前はね。
「あのさぁ……探しにきたのは分かるけど、もう15年も前の話だし……とっくに定年迎えてるよね」
「一理あるわ」
アラサーで魔法少女やってるとか思いたくないよね。
「魔法少女に定年ってあるの?」
「適齢期は13~15歳と言われているわ」
「あの、私もうすぐ16なんだけど」
うわ、そうだったのか。もう適齢期過ぎるね。
「ボク、人間の十代と二十代の違いよくわかんないし、みんな顔同じに見えるし」
「すごい節穴ね、この神獣」
うるさいなー。ボクの時間感覚からすると、十年も百年もそんなに変わらないんだよ。
「で、定年迎えたアラサーに会ってどうするの?」
「彼女らは魔王を倒したわ。私はどうやって倒したのか、彼女らに聞かなければならない」
どうやって倒したかって……そういやボクどうやって負けたんだっけ?
「……って、何でそんなこと聞く必要があるのさ?」
「それは……」
「それは?」
むつきは言うかどうか迷ってるようだった。が、良子の顔を見て、意を決したように言った。
「魔王が再び現れようとしている。世界にまた危機が迫っているの」
な、なんだってーーー!?
ってあれ?なんでそんなこと知ってるの?ていうかボクまだ何もしてないんだけど。
「……それは大変ね」
「反応軽っ!?」
対する良子の反応は、ものすごく他人事だった。
「世界の危機だよ!? 恐怖の大王だよ!? もっと驚こうよ!!」
「悪いけど、全然実感がわかない」
「くそぅ、淡泊な平成っ子め!」
そういえぱ、世紀末はもっとオカルトめいたテレビ番組多かったなぁ。あの頃はみんな本気で世界が終わると思っていたのに。時代か?時代なのか?
「まぁ……まだ先の話よ。とにかく、魔法のことを知るなら、私よりその5人の魔法少女に聞いた方が詳しいと思う」
「ちょっと待って。むつきはどうして魔王が復活することが分かったの?」
「それは……今は言えないわ。そもそも、こうして私があなたと会っているのも、まだ早い……時期がきたら、きっと分かると思う」
まーた秘密か。秘密が多いなこいつは。ほんと怪しいよね。
「分かったわ。私はとにかく、むつきちゃんを信じる」
「えー、あやしいよ?」
「信じる信じないは私の勝手でしょ?ちなみにお前のことは信じてない」
「なにその対応の差!? ひどい!差別だ!」
「ありがとう……良子」
むつきがお礼を言うと、良子は「別に私が勝手に信じるだけだから、お礼はいい」と言った。
「それよりさ、むつきは人間じゃないらしいけど、それってこれからも老化せずに不死な存在なの?」
「判らないわ。私のほかに例が無いから……たぶん、魔力のある限り死なないとは思うけど」
「それじゃあさ、むつき。お願いがあるんだけど」
良子がむつきの両手をガバッと握りしめた。
「私の一生の友達になってくれない?」
「え?一生?」
いきなりの発言に驚くむつき。
「そう、一生。私が魔法少女やめても、私が年を取っても、死ぬまで一生」
「重っ!よしこ重すぎ!」
「うるさいわよクロモ」
良子の発言は、まるでヤンデレ気味の重い女の発言だ。この子やっぱおかしいわ。
「あのね、むつきちゃん。私は中学の頃、対人関係の色々なミスが積み重なって、3年間孤独に過ごしたわ」
「良子が……? その、良子はコミュニケーション力あるし、そんなこと無いと思うけど」
「甘いわね、むつきちゃん。私に普通の友達ができるわけ無いじゃない」
「すごい説得力だ……」
良子はボクにずびしっと手刀をかますと、話を続けた。
「まぁ、それで学んだのよ。ここでむざむざ貴方を逃す手は無いと。ねぇ、言ったでしょむつき。私が貴方を家に持ち帰ったのは、親切や優しさの為じゃない」
「えと、良子。『連れて帰った』じゃなくて『持ち帰った』なの?」
今回の場合、『持ち帰った』という方が日本語として合ってる気がするね。良子はむつきから手を離し、むつきの後ろに回って彼女を抱きすくめた。むつきは突然の抱擁に戸惑う。
「あ、あの、良子……?」
「ねぇ、むつき。貴方は捕まえておかないと消えてしまいそうなのよ」
「良子……」
むつきが顔を下に落とした。その表情は見えない。
「むつきも、クロモも、今だけ私の目の前に存在してる。でもね……いずれみんな私の前から消えて、私の思い出だけの存在になってしまう。それが嫌なの」
「……それが、私を家に連れてきた理由?」
「そう、私の日常に、貴方達非日常の存在を巻き込みたかった。そうすれば、少なくとも貴方は私だけの思い出じゃなくなる。貴方達は私を巻き込んだと思ってるかもしれないけど、本当は逆。私が貴方達を日常に巻き込もうとしてるの」
良子は淡々と語る。
「あれ?ボクは家族バレしてないよね」
「あんたは姿が見えない上に写真にも写らないだろうが。心霊現象かお前は」
ゾンビの方がよっぽど心霊現象だと思うけどなぁ。
「それでね、むつき。私はこのまま貴方を思い出にしたくないの。ずっと、消えてほしくないの。これは私のわがまま」
「どうして……そこまで私を……」
むつきの質問に、良子はニヤリと笑って答える。これはいつもの良子の悪い笑顔だ。とても邪悪。
「だって素敵じゃない!魔法少女!不老不死!ゾンビ!あなたほどファンタジーな存在は、これから一生会えることないと思う!だから友達になって!死ぬまで一生!!」
「え、ええ~!?」
「何?いやなの?」
「い、嫌じゃないけど、なんか複雑というか……」
「じゃあ決まりね。あ、勝手に消えたら一生恨むから」
「ええっ!?」
良子が暴走モードに入った!この状態の良子はしつこい。ホントしつこすぎる。たぶん、断っても絶対逃げられないと思う。
「これからもよろしくね、むつき!」
「は、はいっ」
たぶん一生良子の魔の手からは逃げられないだろうむつきに、ボクは心の中で合掌するのであった。
……あれ?良子、ボクのことは?扱いがどんどん雑になってる気がする。
むつきは良子にコミュニケーション能力があると思っているようですが、実際良子と友達としてコミュニケーション出来る人は大変貴重です。




