百合子
また今日も逢えなかった――――――――
そう呟くのも、もうどのくらいになるだろうか。
《百合子》は教室の窓から校庭を見下ろす。野球部員達が強い日差しの中、汗を流して走っている。
こんな真夏に外で走り回らなくてはいけないなんて、部活動というものはなんて過酷なのだろう。どの部活にも所属したことのない百合子は思う。
今は夏休み、教室内には百合子以外誰もいない。百合子は、今では珍しくなったセーラー服の胸元を摘み扇ぐ。
それにしても今年の夏は暑い。異常気象は年々悪化し続け、日常生活に支障をきたす程だというのに、学校というものは昔と何ら変わりなく存在している。教室にエアコンは無く、家庭用より少し大きめな扇風機が心許無い風を送り出している。
窓辺の席に座り、靴下の履いていない素足を机の上に乗せると、風が来る度にふわりとスカートが捲れ、百合子の白い肌が日差しを受けて光る。
日焼けのしていない陶器のような百合子の肌を見て、羨む者はここにはいない。大きな瞳や長い睫毛、赤いふっくらとした唇、艶のある黒い髪も、全て憧れの的であるはずだった。だが周りが百合子を見る目は妬みの類いのものであった。
失敗だ、と百合子は後悔する。前回の“平凡な容姿”でも物事がうまく運びづらかったが、今回は更に動きづらかった。その証拠に、この“夏休みの呼び出し”である。面倒な事はなるべく避けたかった百合子は、ここに来てから何度目かの溜息をつくと、また校庭を眺めた。




