表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
没落令嬢vs金策  作者: yononaka


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
8/28

没落令嬢vs事務

 新たな領民であり、側に仕えるということもあって騎士の位をリオに渡しましたのよ。

 家に一応の形で保管されていた勲章(リボン)も渡したので儀礼としては形はとれた、って感じですわね。


 とはいっても、他に何か実用品を渡せるわけではありませんけれど。勲章だけじゃあ、寂しいもんですわよ。やっぱり。

 なので屋敷の部屋をプレゼントすることにいたしましたわ。

 喜んでいたのでひとまずはこれで。そのうちちゃんと渡すもの渡さないと、ですわね。


 側にいる以上は彼女には多くのことを伝えておかねばならないでしょう。

 ハイエンド陛下のことは伏せつつ、わたくしの手に氏族紋があり、それによってダンジョンを開いたりできるだとか、そういうのの共有と、


「ゼニがねえですのよ。ああ。あなたを解放するためとかではなくって」


 と、リオを放つためのゼニなんて安いものであると言わんばかりの納税義務を伝える。

 彼女もわたくしが言いたいことをしっかりと受け入れて、


「じゃあ、お金稼ぎをたくさんしないと……ですね」

「そうなんですのよ。ガチで追いつめられておりますわ」


 わたくしの形相から既に自分が修羅場にあることを理解したのか喉を鳴らす。

 それから、彼女はわたくしから許可を受けて帳簿やら何やらをひっくり返して何かないかを探す作業に、わたくしは紋を扱うためにあれこれと考えることに。


 処理するべき事務仕事が二倍以上でこなすことができる!

 最高ですわ! いや、ホントに精神的に全然違いますわね。やれと言われてできることをするのと、やっていて気が楽な作業ってのは大いに違うもんですもの。

 私であれば殴ってなんぼの冒険者仕事が後者。

 そして事務仕事が前者。

 リオが手伝ってくれてマジのマジで救われておりますわ!

 持つべきものは我が騎士! ホーッホッホ!!


 ……支払うものもちゃんと計算しておかないと、ですわね。



 ✘✘✘



 納税。できなくば死。


 いやあ、死ぬのは避けたいですわよ。流石に。

 とはいえ、このまま初心者向けのお手製ダンジョンを普通に巡ってもダメ。


 であれば応えは一つ。


「現状から五割から十割くらい数を増やせ~……。そしてダンジョン出ろ出ろー……!」


 このように祈るのですわ!!

 ……と、この結論に至った理由を離さねばなりませんわね。

 私が思考を整理して出てきたのとちょいと試してわかったことは、


 ●ダンジョンは遺跡のアーチっぽいものだったら出入り口にできる。

 →必ずしも屋敷の中である必要はない。


 ●ダンジョンを攻略すると普通は変化するはずなのにしない。

 →普通のダンジョンはボスを打倒すると構造が変化する。


 ●入り直すと魔物は復活。ドロップ品も。

 →普通のダンジョンにいる魔物が復活するまでにはある程度時間が掛かる。


 最初の一つ目に関してはさておき、二つ目に関して予想できるのは前者に関してはわたくしが変化するのを話の上でしか知らないから『変化する』という結果が付与されていないんじゃないのかと思っていますわ。


 三つ目に関してはわたくしの願いがどうとかって感じなのかはわかりませんわね。

 金が欲しい=魔物が大量に出現するって形で叶えられた可能性はありますけれど。

 これまでの冒険者人生で『妙に魔物の出現が多いダンジョン』を攻略した経験が活きたのかもしれませんわね。


 と、ここまで考えてわたくしは『魔物を大量に狩れる』=『金銭効率が上がる』と考えたわけですのよ。

 となれば次にやるべきことはダンジョンに対して何を願うか、ですわね。


 ◆A案:敵を強くする。

 強い魔物の魔石は単純に価値が上がる。

 となれば強い魔物が出るように祈ることはそのまま金銭効率に直結すると思われる。


 ◆B案:敵を増やす。

 単純に遭遇数が増えれば探す手間が省けて、入手量が増えればそれだけ稼ぎが捗りますわよね。


 この二つですわよ。

 ただ、強くした結果、わたくしが戦って死にかけたマルティスコアのようなガチヤベぇ魔物が出てきたら詰みですから、今回は増やす方向で考えてみまして、その結果として──


「現状から五割から十割くらい数を増やせ~……。そしてダンジョン出ろ出ろー……!」


 となったってワケですわよ。



 ✘✘✘



 光が走る。

 ポータルが開かれた。


「それじゃ、わたくしは行ってまいります。申し訳ないけれど、デスクワークはお願いしますわ」


 とリオにお願いする。

 彼女はわたくしを心配そうに見るものの、ガッチガチに装備を固めたわたくしを見て付いていくのは諦めてくださったようで、


「あちらの戦場は私に任せてください!」


 と胸に手を当てて宣誓してくださいました。頼りにしてますわよ。本当に。


 剣を掴んだ。鎧もしっかりと着込んだ。

 増えた数が予想より多かったら、たとえ大した魔物でなくとも命に届きかねないのがダンジョンと魔物。


「それじゃあ、行ってきますわね」

「大漁を、ライヒ様!」


 少しばかり緊張しながら入る。


 ……浮遊感のあとに来慣れたダンジョン。風景は変わっていない。

 最初にエンカウントがよくあるポイントに近付くと気配がありますわね。気配と足音的にはゴブリン。

 ですが……。


「ゴウゥルブゥ?」「ゴブゥフゥ」

「ゴブウ、ゴ」「ゴブゴブブーバ!」


 声が多い。


 角待ち。曲がり角だとか部屋の隅だとかに隠れることを指しますわ。

 で、何かを喋りながら現れたゴブリンに両刃剣を叩きつけますわよ。


〝ぎしゃり〟といい具合の破砕音で戦いの幕が開きましたわよ!


 一体減って、そこから視界に入ったのは十体のゴブリン。何匹湧くかはそもそも幅がある。恐らく現れるゴブリンの数を十割増加したってことなんでしょう。


 ゴブリンたちが立て直すよりも先にわたくしの両手剣(ブロードソード)が挽肉&寸断していきますわよ。ホホホ。慢心はしないですけれど、余裕はありますわ!


 あっさりと戦いは終わり、手に入るものもそれだけ増えている。

 諸々条件はあれど、やはりわたくしが『願えば成立する』ってのは確定ですわね。


 ただ、ダンジョンに追加の願いを掛けたときに氏族紋から光がポータルに吐き出されていったので、恐らく条件を付与すればするだけ消費が重くなるということなのでしょう。


 試したいことはまだありますわ。

 待ち時間が勿体ないですし、これってここで即座に召喚はできないのかしら、ってこと。

 ここで出しては殺しを続ければウマいのではと。


「魔物出ろ出ろ……」


 無反応。

 流石にそういうズルはだめってことかしら。

 あるいはズルがだめなのではなく、ダンジョンに入っているときには途中での改ざんは許されないとか?


 いや、確度が明確でもない実験一つで研究成果とするのはアホのすることですわね。

 魔物はダメだとして、それなら……壁に手を向けて念じてみましょう。


「休憩室出ろ出ろ……」


 念じると光が向けられ、扉が作られる。


「おおっ」


 中身は……、あの日に休んでいた休憩室と大体同じの中身。

 これは素敵なことですわね。


 色々と試していきましょう! なんだか楽しくなってきましたわ!!



 ✘✘✘



 試しているうちにどうやら外は深夜になってしまっていましたわ。

 新しいオモチャに夢中になる子供でもここまで熱中しないでしょうね。反省反省ですわ。


 とりあえずできることとできなことはメモっておくべきでしょうね。


 ◆できること

 ●ダンジョンの拡張ができる(ダンジョンの外からでもできる)

 ●拡張はわたくしがダンジョンで体験したことだけ。

 ●ダンジョンの拡張の一環で出入り口もどこにでも作れる。

 ●生成時に出現数や強さを変更できる(どこまで強くできるかは不明)


 ◆できないこと

 ●ダンジョンにいるときに魔物を出したりはできない。

 ●階層を増やすこと(生み出すときに光が尽きたようなのでコスト不足なだけ?)

 ●魔物を自動的に処理するような仕組み(出現位置に罠を置くとか)


 今のところはこんなところですわね。

 試しているうちにともかく、今日は試し疲れましたわ……。わたくしがスヤッスヤになる前にリオとも情報共有をしましたわ。

 食事に関しては相変わらず芋芋芋。芋のオンパレードで申し訳ない限りですわね。



 ✘✘✘



 翌朝。


「リオ、今日は少しお散歩でもいたしましょう」


 お散歩とはいうものの、実態的には領主というか、荘園主というか、そうした役目を捨てるわけにもいかないので領内の見回り仕事。

 リオもそれは理解しているようで側について歩いてくれていますわ。


「のどかですね」

「この時間がずっと流れてくれればいいんですけれどねえ」


 そうもいかないのが現実ですわね。


 ただ、ヒイヒイ言っていても答えが来てくれるわけでもない。

 見回り仕事にしてもそうだ。馬でもあれば楽なのですけれど、あいにく当家にそんな豊かなものはございませんのよ。

 二本の立派な脚で巡りましょう。見回りも、納税完遂のヒントも、着実に。


 ──で、一通り挨拶したり、相談を受けたり、リオを紹介したり、イノシシと殴り合いしたり、そうしたことをしている内に昼。


 イノシシとの殴り合いの際にリオは駆け出し初心者ちゃんレベルではありつつも、支援士の力を発動できていましたわ。

 当人も必死に祈っていたらと言っておりましたし、戦闘の中での成長ってヤツなのでしょう。

 隠す理由もないでしょうし、騎士になった恩恵かしら。


 それと、ここでも少し気が付いたのですけれど、領民たちからも光を得られましてよ。

 土地を栄えさせるための力だから、民の感謝が栄養になるのかしら。


 現状、紋でやれることは増えるのでしょうけど、実際問題としてその『やれること』が思いつかないんですわよね。

 まあ、見回りも終わったしダンジョンで稼ぎつつ考えましょう。


 今回は開いて、魔物の出現数は前回より多くていいですわね。六倍くらいまでなら何とかなりそうですけれど。


「出ろ出ろ……」


 紋が光るも、しかし走ることはない。支払い切れないとこうなるんですのね。

 結果色々試して結局三倍が限界。

 さーて、入りましょ……──


「ライヒ様ぁぁあああ!!」


 外から声。

 何事ですの?


 ただごとではないので急ぎ外へ。

 走ってくる領民。


「ら、ライヒ様、賊と魔物が同時に! ここの近くにぃ!」

「どこですの?」

「正面入り口ですだ!!」

「皆は一カ所にまとまってなさい!

 いざってときは時間稼ぎしつつ自分の身は最低限お守りなさい! いいですわね!!」

「わかりますただぁ!!」


 頷いた領民が荘園の、人が集中しているところへと突っ走っていきましたわ。伝達速度は問題なさそうですわね。健脚万歳、ですわ。


「リオ、あなたは騎士として彼らが軽挙妄動せぬように律しなさい。いいですわね!」

「は、はい、ライヒ様!」


 頷きながらリオも健脚を見せた領民の背を走って追いかける。それを見やりながらもわたくしは駆け出しますわ。


 目指すは正面入り口。

 とんでもねえ魔物ととんでもねえ軍隊みたいな賊だったらどうしようかしら。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ