プロローグ 俺と戦場
王国最東端の町跡からさらに東。
この荒れ果てた荒野が俺の居場所だ。
十年前、ここより西の東端の街で生まれた俺は、帝国との戦争に巻き込まれた。
まあ、よく覚えてないんだが、両親を殺され、路頭に迷う寸前のところで、進軍してきた王国の兵隊に拾われ、気づいたら俺も兵士になっていた。
おかげでほぼ毎日飯を食うことができたし。身体だって大きくなった。
俺を育ててくれた兵士はだいぶ前に死んじまったけど。
かなり年上の仲間もたくさん、死んだ。
今じゃあ、俺がちっこい頃のことを知ってるのは、酒場のサマンサくらいのもんだ。
俺は五歳からの十年を戦場で過ごした。
斬った数も、斬られた数も、手足の指を全部合わせても足りない。
俺は、毎日、その日の飯のために戦った。
“サイコさんのタルク“なんて呼ばれるから、俺を拾ったオッチャンはサイコという名前なんだと思ってたら、メチャクチャ笑われた。
なんかよ、一番生き残っているやつって意味なんだそうだ。
世の中には俺の知らないものはいっぱいある。
字だって書けねえし。
でも、そんな俺でもわかっていることもある。
最近、帝国の連中は、すげえ強くなっている。
腕が落ちてるのに動き回る奴も見た。
フルプレートごと胴を断ち切られた指揮官もいた。
周りの兵士達によると、奴らが薬を使っているのを見たらしい。
薬を使った途端に、身体が大きく膨れたと話す兵士もいた。
――近々、大きなことが起こる気がする。
◇
それは、突然起こった。
いつもの帝国からの襲撃を知らせる鐘。
俺たちが野営地を飛び出すと、目の前まで帝国軍は迫っていた。
すでに王国軍の右翼は崩れ、奴らに飲み込まれていた。
誰もが今日が最後の日、と覚悟を決める。
でも、俺は、生きて帰る気満々だった。
だって、夜飯は肉って聞いたからな。
――だけど。
斬っても突いても立ち上がる奴ら。
紫がかった肌にドス黒い血の敵の波は、日が落ちても収まらず、結局肉はお預けになった。
すげえ腹減った。
一刻も早く、何か食いてえ。
ほとんどその思いだけで身体を動かし続ける。
目の前の帝国野郎を斬る。
斬ったら次。
ただそれを繰り返す。
それが、一番早く飯にありつく近道だ。
やることが終われば、飯が食えて、眠れる。
……なのに、そのやることが終わらない。
「ちくしょうが!」
敵を斬る。
「俺は!」
敵を斬る。
「はやく!飯が!」
敵の槍を避けて、斬る。
「食いてえだけなんだよぉー!」
とにかく、敵の勢いのあるところを見つけては突っ込んで斬る。
そういうところを叩けば、飯の量が増えることも、俺は知ってる。
しかも、向かう先には、高価そうな鎧がいる。
大将首を取れば、ご馳走間違いなし。
「やってやるぜ!」




