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「過去を乗り越えて」

昨日更新できず、すみません、外出してて疲れてそのまま寝てしまいました。

あなたを好きにならなきゃ良かった〜エルフに生まれ変わったお医者さんの波瀾万丈記〜


7話「過去を乗り越えて」



コンコンッ


部屋をノックする音で目が覚める。


(誰だろ…アリアさんかな)


ベッドに寝転んだまま上を見上げる。そこには、木が貼られた殺風景な天井が広がっていた。


「知らない天井だ…」


(って、これ〇ヴァやん)


1人でボケて1人で突っ込むという寂しげな事をしながら、ゆっくりと起き上がる。

部屋の中には、里から持ってきた物が散乱している。里では、片付け等は、レイに任せ切りだったから当然ではある。


「ほら、ソフィーそろそろ起きなさーい。寝すぎも体に良くないわよ。」


外でアリアが呼んでいる。


(まだ体だるいんだけどな。)


「はーい、アリアさーん。」


「ふぁ…」


あくびをしながら起き上がる。


ガチャ


目も半開きの状態でドアを開ける。

開けると目の前にアリアが立っていた。


「おはようございます、アリアさん。」


「具合はどう?」


「まぁまぁです。とりあえず歩き回るのには支障はないですよ。」


「そう、良かったわ。後、私の事は、師匠って呼びなさい。分かった?」


「はい、師匠。」


「はい、お利口さん。」


そう言ってソフィーの頭を、よしよしと撫でる。


「ちょっと!子ども扱いしないで下さい!」


「はははっ、すまんすまん。でも、私からしたらソフィーなんてまだ可愛い子どもなんだよ。」


「むぅ…」


からかわれた事に対してソフィーは少し不服そうだ。


「そう不貞腐れんなって。あっ、そうだ。お腹すいてる?」


「まぁ、少しは。」


「後少ししたら、昼食の時間だから、食堂行こうか。」


「はい!」


「じゃあ、それまでは自由にしてていいよ。食後は私の研究室にいらっしゃい。実践はまだ危険かもしれないから、座学くらいしかやれないけど、早速色々しましょうね。」


「はい、わかりました師匠。」


「じゃっ、また後で。」


そう言ってアリアは、手を振ってドアを閉めた。


「ふ〜」


(お昼まで何しようかな。ちょっと、この辺探検してみようかな。)


興味本位で、部屋を出てみる。

部屋の外の雰囲気は、前世でテレビやマンガで見た寮等に似ていた。横にズラっと扉が並んでいる。


初めての場所だから緊張しているからか、ドアの前から恐る恐る歩き出す。


「軍の女子寮みたいな感じかな。」


(あっ、そういえば、レイモンドさんが宿舎って言ってたな…)


その女子寮の建物を出てみると直ぐに、隣に大きな石造りの建物が建っていた。入口に名前が2つ書いてある。


〈ガイロニア王国軍務局〉〈ガイロニア王国軍魔法使い研究室〉


(うーん、とりあえず軍の施設って事だよね…?勝手に入ったら怒られないかな?)


再び、恐る恐る金属の重い扉を開けて、建物の中に入ってみる。

入ってすぐの部屋はロビーの様な空間で、鎧を着てる兵士や、いかにも魔法使いな感じのローブを来た人があちこちに居た。中には服装的に軍の位の高そうな人も居る。

チラチラと人の視線がソフィーに集まる。見慣れない服装、子ども、エルフ、視線を集めてしまっても仕方が無い。また時折、あちこちから、ソフィーの事を色々言っている声が聞こえてくる。


「ほら、あいつだよ、こないだ中庭で爆発させたやつ。」「あー魔力暴走したガキか。」「マジでエルフじゃん笑」


小さな声でも、ソフィーの耳には入ってきてしまう。


(うぅ…みんな私の事色々言ってるよ…そりゃ、やらかした私が悪いけどさ…)


ソフィーにとって、こんなに人にじろじろ人に見られた経験等ほとんど無い。更に見てくるのはエルフでは無く、関わりが薄い人間だ。そんな人達に先日の失態をこそこそ言われて耐えられるわけが無い。


「うぅ…ひっく…」


半べそ気味になりながら、なるべく人と目を合わさない様にしてどこか避難できそうな場所がないか探しつつ歩き回る。少し歩いて階段に差し掛かった時だった。そこには、建物の二階に何があるのかが記されていた。


〈研究室〉〈図書室〉


(研究室って師匠のかな…あと、図書室って…本あるって事よね?)


他に行くあても無いため、とりあえず二階上がる。


タタタッ


まだこっちの方が人が少なかった。また、二階にあるのが、研究室と図書室という事もあり、静かだった。


(研究室は後で、行くし、とりあえず図書室に入ろうかな。)


ギィ…


うるさくしないようにそっと部屋の中に入る。


「わぁ…」


そこには、ソフィーの背丈の3倍近くの高さの本棚がズラっと大量にそびえ立って居た。本好きからしたら天国に近い空間である。


(それにしても広い部屋。こんなの軍務局に入り切らないでしょ。拡張魔法かな?)


どんな本があるのか室内を見て回ってみる。大量の本は分野や種類、作者ごとに分類されている。


(そこはやっぱり前世の図書館と一緒なのね。)


そんなこんなで気になった本を何冊か立ち読みしたりと、楽しんでいたら。


「あら、ここに人がいるなんて珍しいわね。」


「きゃっ!」


急に背後から声がしてソフィーは叫び声をあげてしまった。そして、ササッとすぐ近くの本棚に身を隠す。そして、ひょっこり顔だけを覗かせて声をかけてきた方を見る…が、そこには誰もいない。


「あれ…誰もいない…」


トントン


「ひゃあ!」


背後から肩を叩かれ、ソフィーは腰が抜けてしまい尻もちを着いた状態のまま、後ずさりをする。


「ちょっ、ビビりすぎだって!はははっ」


そこには、茶色い魔法使いのローブを着た、黒髪ショートの人間の女の子が居た。ソフィーより数歳年上くらいの容姿だ。


「だ、だったら、お、驚かさないで下さいよ…ひっく。」


一階での事もあり、ソフィーは今にも泣き出しそうな顔をしている。ていうか既に目尻には涙が溜まっていた。


(もう、こっち来てからこんなのばっかで嫌!里に帰りたい!)


「え?ちょっ、ちょっと泣かないで?お願い?」


「うぅ…うぇ…ううぇええん…」


何か枷がが外れたかのようにボロボロと泣き出す。


「ちょっ、ごめんね?ごめんね?もうお姉さん何もしないからさ。」


必至に慰めようとするが泣き止む様子は無い。


「なんだなんだ、騒がしいぞ…ってソフィー?!」


騒がしい声を聞きつけて図書室に入ってきたのは、アリアだった。


「師匠!この子どうしたらいいですか!泣き出しちゃって…」


「ちょっとそこどいで。」


「はい…」


女の子が退くと、アリアはソフィーの事を抱きしめて慰めた。


「全く…お前はホントに泣き虫だな…」



【ソフィーが落ち着くのを待って…】



「ひっく…ごめんなざい゛…」


「別に良いけど、何があったの?」


アリアは、ハンカチを差し出しながら、ソフィーに尋ねる。


「ひ、暇で、探検しようと思って、この建物に入ったら一階で、色んな人がじろじろ見てきて、コソコソ私のこと言ってるのが聞こえてきて…それで怖くなって…私まだ人に慣れてなくて…それで…」


アリアはソフィーの頭を撫でる


「なるほどね…当たり前よね…私も気づいてあげられなくてごめんね。だけど、私もアイシャもソフィーの味方だから安心していいんだよ。」


「えっと、アイシャ…?」


「あぁ、教えて無かったわね、アイシャってのはこの子の事。ソフィーと同じ魔法使い見習い。ちなみにこの子も私の弟子よ。」


そう言ってアリアは先程の黒髪ショートの子を指さす。


「ソフィーからしたら、姉弟子ね。」


その言葉にソフィーもアイシャも驚いた様子だ。


(増えたって言ってたのはこういうことか…)


「し、師匠…この子が言ってた子ですか…?」


「ん?そうだけど?何か問題あるかしら?あ、ちゃんと優しく可愛がってあげなさいね?じゃないとアイシャだけ課題増やすからね。」


「は…はい!わかりました!仲良くします!」


「はい、それでいいよ。あ、アイシャ、先に研究室戻っといて。」


「わかりましたー」


そう言ってアイシャは図書室から姿を消した。何かブツブツと愚痴を言っている気がしたが…


そして再びアリアはソフィーに向き合う。


「いいかソフィー?お前さんはまだ人間と接するのに慣れてないの。これまで里で生活してたから余計にそうだろう。だけど、人もエルフも1人で生きてくなんてことは出来ないんだ。ゆっくりで良いから、私達に頼ってもいいから、乗り越えていこうね。」


その言葉にソフィーは無言だったが縦に首を振った。


「あっ、ちなみに手っ取り早い方法があるんだが、どこかでお前さんの魔法の腕前を見せつける機会があれば、ちゃんとソフィーの事を認めてくれて幾分かマシになるかも。まぁ、まずは制御できるようになるのが重要だけどね。」


「わ、私…頑張ります…」


「うん、その意気よ。」


そう言ってソフィーの頭をポンッと優しく叩き、アリアはその場で立ち上がる。


「それじゃ、ここにいるのもなんだし、私の研究室に行こうか、隣の隣の部屋だし。」


「はい、わかりました…」


そう言って2人は図書室を後にし、すぐ近くのアリアが使用している研究室に入っていった。


「別に軍の魔法使いは私だけじゃないんだけどね〜、居る人はみんな今ある魔法で充分魔物を狩れるから満足しちゃって研究とかしたがらないんだよね。まぁおかげでこの部屋を貸切出来てるけどね。若手の育成って名前が名目だけど。」


そう言いながらアリアは部屋のドアを開ける。


「ようこそ!我が楽園へ。」


その部屋は…超悲惨な状態だった。


机と床には大量の本が山積みになっている。メモか何かに使用された紙も散らばっている。また、机にはいつ作ったのか怪しいお菓子が食べかけで放置されている。床もホコリやゴミまみれでかなりの期間掃除されてないのが伺える。天井の角には蜘蛛の巣も張っていた。


その部屋を見てソフィーは呆然と立ち尽くしてしまった。

ソフィーの心の中で、アリアのすごい魔法使いのイメージが壊れ、崩れていく音がした。


(ししょお〜〜)


「あの…師匠…」


「ソフィー何も言わないでいいわ…」


アリアが秒で答える。


「は、はい…師匠」


「やっぱり、あの、師匠…」


「なんだ?」


「午後は、勉強の前に大掃除にしませんか?」


「え、えぇ分かったわ。まずはその前にお昼ご飯にしような。」


「はい、師匠。」


「アイシャ、お昼食べに行きましょ。」


「はい!師匠!」


そう言って、3人は一階へ降りていった。

再びソフィーに対する視線があったが、


「大丈夫だよ。」


と優しく声をかけて、手を握って励ましてくれた。


「師匠…ありがと。」


その言葉に、アリアは無言で頭を撫でて答えた。


(やっぱり師匠、超優しいな。)


そんな感じで歩いていたら、食堂に着いた。軍務局の中にあるため、利用している人のほとんどが兵士達だ。そのため余計にソフィー達が目立ってしまう。

食堂のシステムは、前世の大学等の学食に似ていて、壁にある厨房と繋がる窓に沿ってカウンターがあり、そこで利用者は食事を受け取っている。3人も他の人と同じ様に並んで、料理を受け取った。献立は、猪肉を焼いたのと、スープとパンだ。


「ここの料理、見た目は質素だけど、味はどこの店にも負けないのよねぇ。」


とアイシャが推してくる。


3人は食事のお盆を持ったままどこに座るか見渡していたが、その時、ソフィーがアリアの服の裾を引っ張った。


「ん?」


「師匠…端っこがいい…」


一瞬迷ったが、意味を理解したのか直ぐに食堂の端の方へ向かった。そして、座って、3人は食事を始めた。


パクッ モグモグ


「あ、美味しい…」


黙々と食べていたらソフィーはあっという間に食べ終わってしまった。


「美味しいでしょー?後で、食堂のおばちゃんにお礼言ってきな。」


「う、うん」


「あ、でも、さっきの事があるし、別に無理して言いに行く必要は無いよ。ソフィー自信が心からお礼を言いたいって気持ちになった時に言いに行けばいい。」


「はい…」


2人が食べているのを眺めながらソフィーは色々考え始める。


(今日の自分は、色々反省だな。人間関係をもっと気をつけないとだ。これじゃあ優しくしようとしてくれる人にも相手にされなくなっちゃうよ。思えば、前世もお礼なんてろくに言ってなかったな…言ったとしても大した気持ちが入ってなかったし。っていうか、心配かけたくなくて、学校も職場も最低限の人間関係しか作らなかったな。)


「はぁ…」


ソフィーは深めにため息をつく。


「どうしたんだ?」


心配してアリアが話しかけてくる。

その言葉にソフィーは首を横に振り、


「いえ、なんでもないです。」


とだけ答えた。


(前世は病気の事もあって、誰かに心配させたくなくて。自分から人間関係を築くのを拒んでしまった。だけど、そのおかげですごい寂しい思いをしてしまった。友達作るなんて論外だった。他の人と話すのが本当に苦手になってしまった。エルフの里も子どもの頃は怖くて外で他のエルフと仲良くすることなんて出来なかった。だけど、私はここでやり直すチャンスが与えられている。だったらそのチャンスを最大限生かさないといけないんだろうな。)


ソフィーが考え込んでいたら、アイシャが気まずいと思ったのか、突然話し始めた。


「ねー師匠、私ソフィーちゃん心配なんで部屋一緒が良いんですけど、上に許可貰ってくれませんか?」


「私は別にいいが、ソフィーはどうだ?」


「えっ…えっと…良いですよ…」


「やったぁ!これからも仲良くしようねソフィーちゃん!」


そう言ってアイシャはソフィーの手を握ってきた。

ソフィーは最初は戸惑ったが、


「うん!!」


と返事をして優しく握り返した。


(これが、友達なんだろうな…なんだかすっごい心が暖かい…私も強くならないとよね。でも、やっぱりまずは…)


「よっと。」


突然ソフィーは、食堂の椅子を降りてどこかに向かって歩いて行った。


「ちょっ、ソフィーどこ行くの?」


アイシャのその言葉に返事をせず歩いていく。

そして、ソフィーは立ち止まる。そこには目の前に食堂のおばさんが居た。ソフィーよりも身長も体格も大きく、威圧的な見た目をしている。


「あ、あのう…」


「ん?どうしたんだい?かわい子ちゃん。」


「え…えっと…」


背中に何人かの視線が集まっているのを気配で感じる。


(頑張れ私!勇気を出せ!)


「お、お昼ご飯美味しかったです!ご馳走様でした!!」


(やっと言えた…)


その言葉に食堂のおばさんはソフィーの頭をポンッと撫でて


「あははっ、ありがとさん。」


そして、ソフィーはくるっと、アリアとアイシャの方を振り返った。

その顔には、子どもらしい無邪気な笑みが綺麗に満開に咲いていた。



To Be Continued


誰しも抱えているトラウマ。自分には出来ないその「乗り越える」という事をソフィーにやって欲しかったのかもしれないな。

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